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ゆべ小説

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ゆべしちゃんが書いた小説とかです。 幻想怪奇っぽくなってたらいいなあ。
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#逆噴射小説大賞2019

ジハード・フォー・リゲイン・ラブ

ジハード・フォー・リゲイン・ラブ

 ある日突然ジャネット(注1)のスピリチュアルシスターにしてソウルメイトのアスティがピンクのメッシュ入り金髪をブルネットに染め黒いマニュキアを落とし、ジャネットとお揃いだった神と秩序への反逆の象徴である逆十字架のピアスとチョーカーを外して登校してきた。服はいつもの漆黒のレザーコルセットとサテンのフレアスカート、膝まであるハイヒールブーツ、ではなく、清潔感あるノースリーブの白いシャツに紺色のクロップ

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貪婪の王はかつえる

貪婪の王はかつえる

 貪婪の王の話をしようか。

 俺がいきなりこんなこと言い出して、腫瘍で脳までイカれたと思うだろう、倅や?
 だがこいつはお前だけ、お前だから話すんだ。俺が女共に産ませた子供の中で、お前がいっとう俺に似てるからな。母親が良かったのかも知れねえ、名前は何だったっけ?
 そんな顔するな。自分がひとでなしだってことは嫌って程解ってる。お前が俺を嫌ってるのも知ってる。その上、酷い嵐なのにわざわざ俺の話を聞

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10万光年愛人トーナメント

10万光年愛人トーナメント

 屈強な草色の上半身を持つ、αケンタウリ星系人のイボツヌァが繰り出した4本足の回足蹴りが須臾子の側頭部に炸裂した!
 須臾子の視界は大きく傾き、リング上に大の字に倒れた。
『ダウン!唯一の地球人がここで敗退か!?』
「1!2!3!…」
「須臾子立て!それでも俺を倒した女か!?」
 実況の耳障りな合成音声もレフェリーのカウントも観客席にいるゴリラ…ではなくティタノマキア星人のゴライアスが飛ばす檄も、

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人狼対抗西部戦線

人狼対抗西部戦線

 太陽が照りつける赤く乾いた荒野を鉄道レールが貫く。その傍らに馬に乗った数十人のガンマン達が集っていた。
「奴等が人狼と呼ばれている理由が解る奴はいるか?」 
 左目を黒い眼帯で覆った初老の男、シルバーハウンドは男達に向けそう言った。
「16世紀にスラブ地方で彼らが観測され始めた頃、最も頻繁にとった形態が人狼だからです。慣習的に今でも彼らを人狼と呼びます。」
 遠慮がちに答えたのは余りに場違いな雰

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まなこの魔女

まなこの魔女

 セヴァストポリの野戦病院の片隅で、砲弾の破片を腹に受けたアレクセイは死につつあった。彼が砲弾の音を遠くに聞き、汚らしい天井を眺めながら思い出していたのは、子供の頃に「まなこの魔女」の閨を訪れた秋の日のことだった。

 13歳のアレクセイは、森の中にあるという魔女の閨を求め彷徨っていた。その左目は包帯で覆われている。森は深く、木々に繁る葉は黄や赤に色づき燃えるようだ。見上げれば木漏れ日が白く光り滲

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