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2017年12月の記事一覧
【掌編小説】ヘスペラス
休みの日の夕方、ひとりで家にいると何だか息が詰まるようで、わたしは玄関の鍵を開けた。梅雨入りしたというのに綺麗に晴れて、太陽が姿を消し去っても空は昼間の青さをとどめている。
わたしの住む借家の道路を挟んだ向かい側には古い社宅のアパートがある。そこの公園をわたしは気に入っていた。日が沈んだ後の公園にはもう子どもの姿はない。ただ、カメを数匹連れた巻き毛の男の子がベンチでギターを弾いている。
もじ
【掌編小説】こどくの飼い方
こどくを飼うことになった。
こどくは暗くて寒い場所を好むらしいので、わたしは冷蔵庫をこどくの住処に選んだ。食事はいつも冷凍食品か外食で済ませてしまうから、部屋の冷蔵庫には時々飲むビールくらいしか入っていない。手のひらにのるサイズのこどくは冷蔵庫の隅でじっとしている。
えさには甘いものを、と聞いて、わたしは百円のプチシュークリームを買ってきてはこどくにやった。けれどこどくはうつろな目でそれを眺
【掌編小説】天井で溺れるナポレオンフィッシュ
天井ではあなたが溺れている。
ソファに沈み込んだまま六畳の部屋から出なくなったわたしに餌を与えるようにあなたは温かなスープと形の悪いおにぎりを差し出して笑う。遮光カーテンを引いたままの部屋に、それでも夕暮れの鋭い西日容赦なく差し込んだ。ああ、今日がまた終わる。ずっと同じ今日だ。
わたしから見えるもの。
洗濯物が散乱した部屋。
つかないテレビ。
テーブルの上の枯れたアイビー。
優しい