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スターシードと物語

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2021年5月の記事一覧

人の流れ、神の流れ

その山には神がいた。
今は移ったと思われていた。

今もそこにいる。
山の流れは変わらない。

彼らは、言葉を持たず流れの中にいる。
わずかに、そこを感じる者に言葉を求める。

ある女が麓にいた。
彼女は悩みがあり、そこに流れの止まりがあった。

今日、その滞りは晴れた。
山の神と共に在ることを選び、共に生きることを選んだ。

その先にある風景は、まだ見えてはいない。
だが、その先にある流れに

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言葉を紡ぎ、時を見る女

「今回は女だ」

最初の記憶は、この言葉

小さい頃から感じていた、知っていた

学生になる頃には忘れていた。

昨日、また聞こえた。

何を意味しているのだろう
確かに、わたしは女だ
何も不思議ではない

なぜ「今回は」が付くのか

最近、変わった事と言えば
タロットを引くようになった

カードを引くことは
人の人生に触れること

カードを引くことは
人の光に
人の影に
触れること

ある日

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海と生きた女

島に女がいた

波がくれば海に遊び
空が呼べば風と歌う

女にはこだわりがあった

人として
女として
食の作り手として

ある日
旅人が訪れる

この島では珍しくはない

彼女のつくるパンを求めて
本土から訪れた

彼は、パンの味に感嘆し
それ以上に

彼女の心が紡ぐ
言葉を味わう

その心に
自らを
歌を
感じ

その心に
自らの人生を重ねた

旅人は三日の後に
また旅に出ると言う

女は、こ

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星の歌人

星の歌人

優しき娘がいた
人を癒やし
心に寄り添う

多くの薬草や石、動物、水
癒やしの為に知らぬものはなかった

人々は娘の微笑みと
歌声も好きであった

祭りがあると
男達は
彼女と踊るために
花を送る

彼女は誰の花も受け取ることをしない

人々は
彼女が神に身を捧げていると噂する

人々は
彼女が己の運命を嘆く過去を持つと噂する

誰もその心を知ることはなかった

ある夜
村に聞き慣

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風吹く女王の物語

風吹く女王の物語

恋に身を捧げた女王がいた

風が強い夜は
その風を友に

漆黒の星空に
あまたの願いを込め

我が恋に身を捧げ
炎に身を焼く

その冠は
煌く星

美しきベールに星屑が光る

その優しき横顔に
人々はため息をもらす

その潤んだ瞳に
男達は心を奪われる

風を友とし
実りを呼ぶ

人を愛し
森に遊び
空に舞う

ある日
旅人が訪れる

彼は若くはないその面影に
人生の時を映し

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白狐の少年 - 神官との出会い

長年夢見てきた
聖地への旅

僕が育った星は、第14植民星
白狐族が多く住む星だ

母星にある聖地は
多くの民族が住む土地で
誰もが一生に一度は訪れたいと思っている

神殿に入ると
巨体の僧侶が4人
軽い会釈をし、挨拶をする

「こんにちは、僕です」

僧侶たちは愛想よく話かけてくれるのだが
ネギール族の言葉は、僕が聞くと
ネギネギ、ネギ〜、ネギギ
とか、よく聞き取れない
一人が記念のオニギリを渡

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赤き神の再来

雷鳴!
さっきまで晴れていた

この地に顕現する
赤い稲妻が走り
贄となる千年の樹は燃え上がる

赤い炎が樹にまとわりつくように広がり
枝は堕ち
赤いひとつの柱となる

この地の生命にとって千年は長い

我が友が顕現する

赤き神として
この地に1万年
歴史の影となり

人が今の形になった後は食の神として
この土地を治めた時よりは笑いの神として

目前の炎柱は落雷とともにより強く燃え

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サキール神 神託の時間

「サキール様!お時間です!!」

長身の彼女は慌てるように声をかける
彼女の周りには、いつも猫がいる
セカセカと歩き回る周りで
スルリとクルリと足に絡みつく

天界では時間の概念が地上と違う
サキール神と呼ばれる彼女は地上にいるときから
いつも時を気にせずマイペースだ

そんな彼女に付かず離れず
いつもいてくれる長身の友

昨日の夕飯は「ネギうどん」だった
その前の日は「ネギマ」
その前は

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友との語らい

楽園にいた頃は、こうでは無かった

葡萄をひとふさ
口にはこぶ

口元に輝く
草原の緑のように
かおる甘い香り

人ひとり分の荷物を背から下ろすと
長身の彼女はひとごこち
フードをめくり、髪をかきあげる

この土地に降り立ち
多くの友と時を過ごした

時に虹色の髪をもつ少女
時に白き聖獣を従えた男
時に水色の髪を束ねた髪

スパイスを多く使う肉料理を口に運び
旅の話をする
大酒飲みのド

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虹と共に旅する者

「サキール神と風の女王の名において命ずる!嵐と落雷を顕現し我が盾となれ!!」

天上に湧き上がる黒煙
強き風と雷鳴が鳴り響く
次元の狭間から現れようとするその存在を封じるかのごとく大きな力が働きかける

短く切りそろえた髪が風に激しくなびく
多くの輝きを束ねたようなその髪の虹色は
漆黒の闇においても強く輝いている

小柄で戦士とも魔道士ともつかない風体で
その杖はかかげられ
一点に力を向けら

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ネギと葡萄

朗読の時間です。

本日は、
 原作 こそ泥太郎
「文子林人生の選択」第3章

少し曇った冬の日
昨日の雪は溶けかかり、少しひんやりとした風が頬をなでる

長い髪を風に揺らし、八百屋の前に立つ文子林

その黒髪は妖精の祝福
その眼差しは、月の輝き
サキール神に祝福され
ボルテックスを生き延びた彼女

八百屋の店主は、毎日この時間に現れる彼女を待っていた。
その祝福されし姿と
気さくな言葉

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