220920 就学前

クルマが玉砂利をユックリと進み
エンジン音が止まると
母がドアを開け僕を促す
大きな唐破風が、その顎を見せている
本堂に飲み込まれぬように
母のズボンを掴んで脇を進むと
左手に親鸞の像が立っていて
コレも怖かったなぁ
その奥に緩やかな登り坂が有り
足の裏の感触は玉砂利から石畳に変わっていた
鬱蒼たる木々はヒンヤリとした木陰を作り
歩みを進めるとキラキラと
矢の様に目に飛び込む陽光は
僕の目を眩ます
勾配が緩やかにナった頃
門が僕を迎える
中には使い道の判らぬ塊が右に列び
左手には建物が奥まで伸びていた
門を入って左の手前には砂の池が見え
コレは直ぐに何をスる処なのか判別できた

何かを拗らせて皆に後れを取った僕は
集団から外れ
独りで面接をスる事とナった
面接の中味は憶えていないが
この日に受けたのは多分
僕と両親だけだったと想う
後の食卓で母親から
自転車の動作原理を
誇らしげに語ったと聴いた
お喋りは今に始まった事ではナかった様だ

次の記憶は制服に身を包み
同色の帽子、黄色い鞄を下げ
網町の三井倶楽部の門の前で
母と何かを待った記憶
黄色いバスがヤってきて
中から喧騒が聞こえると
途端に帰りたくなった
僕は大泣きしながら抵抗して
搭乗を拒否したが、多勢に無勢
乗せられて流れる涙を
手の甲に塗り付けながら
玉砂利に降りたのを憶えてる
三井倶楽部と謂えば
ガーデンヒルズシリーズの
二カ所目が向かいに建つ様ですね
お金持ちでクルマに乗らない人間だったなら
欲しいと想ったかしらね

次の記憶は昼御飯
ボイラー室から温め直した
クラス全員分の弁当箱を籠に貰って
女の子と歩いて教室まで運ぶ
お弁当委員みたいな御用
クラスを抜け出すのは
この頃から好きだった
休み時間には庭に出て遊ぶ流れで
着いて直ぐに水色のスモックに着替えた
同じくらいの大きさの生き物たちが
庭にイッパイ建物から吐き出された
ご多分に漏れず僕も出て見たら
始めてみる顔に好奇心いっぱいの
スモックたちが寄ってきて
インタビューや遊具へのインビテーション
登ってみた滑り台やジャングルジム
愉しかったのを憶えてる

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