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12冊目_日本史上最強に文章が巧い男、三島由紀夫の「新恋愛講座」

“人間の恋愛は動物の恋愛と違って、みな歴史、社会、環境、いろいろなものに制約されているわけです。われわれが一つ恋愛すると、その恋愛の中に全人類の歴史、全人類の文化が反映しているのです。”
“恋愛は人間をほんとうに真正直に、裸にするものですから、自分のほんとうの裸の気持、ほんとうの正直な気持はどういう背景でもって女性を愛するのか、そこにこそこれからの恋愛道徳というものができてくるのであります。”

西洋の恋愛と日本の恋愛の比較文化論的な考察が特に面白かったです。

ギリシアの恋愛観
・キリスト教以前の恋愛
・完全な美しさ、イデアを追求すること
・人間が知性を求めて、正しい本当の真理に達するための過程的なもの
・ベースにあるのはエロスという概念。智恵のあるものと智恵のないものの中間にいるもの。より高いもの、より美しいもの、よりよいもの、そして真理を求めていく
・ギリシアの恋愛は、美しい肉体から美しい精神に、さらに芸術作品とか英雄的事業などに向かっていく
・人間の欲望をまず肯定して、その欲望をだんだん清め、高めていくスタンス


ヨーロッパの恋愛観
・キリスト教の考えた愛には、ギリシアの考えたような欲望は除かれている
・全くの精神的なもので、肉欲は醜いものとして捨てられている精神的な愛
・そこに様々な装飾が加えられていく
・聖母崇拝。宗教にエロチシズムがいくら除いてもこびりついてくる。ヨーロッパ人の恋愛の根底にある。
・騎士道。マリア崇拝からの変形。男たるものは自分の支える貴婦人に対し絶対の奉仕、まさに神に対するごとく、自分の誠を尽くし、命を捧げて恋愛する。
・はじめから動物としての人間を否定し、抹殺するところに動機があるので、動物性は全部悪、全部罪、全部悪魔のしわざというスタンス。


古代日本人の恋愛
・万葉集の恋は、ギリシア、ヨーロッパのような哲学的背景を持った恋愛ではない。
・ただ古い民族のすなおな肉体的欲望が、日本人のやさしい心持とか、繊細な生活感情の中に溶け込んで、そこに美しい別離の情とか、恋人と久しぶりに会った喜びとか、そういうものが素朴にしかし正直に述べられている
・日本人にとって恋愛は、本能プラス感情。その感情は、決して哲学やその他の面には発達しないで、感情の世界だけで発達してきた。
・日本で恋という場合には、男女の、露骨に言えば一緒に寝たいという欲望で、そこにいろいろな日本人の繊細の美学が加わったものが、日本の恋愛である
・平安朝時代では漢文が男の文章であり、恋愛に関係がなかった。男の世界、政治、思想、軍事などこ世界は漢文で用が足りた。そうすると男の世界が恋愛から隔絶され、感情の世界から隔絶され、どうしても男だけの道徳が必要になってくる
・西洋では、男というものは絶対に女を愛するという考えだが、日本では男は恋愛と関係のないもの、恋愛は女、そして感情及び芸術、そういうものに委ねられている
・女を除外した男の道徳が一番完成したのは儒教道徳の影響を受けた、武士の道徳。江戸文化300年の泰平の間に、恋愛哲学を我々は持っていない
・明治維新になって、ヨーロッパの恋愛観念が一度にどっと押し寄せ、日本人の現在の精神状況の中では、恋愛は以上にあげた3つのものが実にめちゃくちゃに入り乱れているのである


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