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生きがいゼロだった私が中学スポーツチーム(ウエイトリフティング)のコーチを始めた時の話

「コーチ」って、なんだか大層な肩書に感じていました。

はじめに話があった時は「自分なんかに務まるとは思えない」と思いながらも、断れる雰囲気ではなかったので、恐る恐るコーチを引き受けました。(田舎の公務員あるある)

しかし、この活動が、当時の私にとって唯一の生きがいへと変わっていくことになりました。

ウエイトリフティング(重量挙げ)とは

「そもそも、ウエイトリフティングって何?」って方も多いですよね。
まずは実際の試合の様子を見てみて下さい↓

選手としてがんばってた頃の私

一見簡単そうなスポーツですが、自らの脳天の上に「本来ヒトが持つべきではない質量のオブジェクト」を挙げるのですから、それなりの危険性を孕むスポーツです。

これを中学生に教えるのって、けっこうビビりますよね??笑

※競技の詳しい説明については本旨ではない為、気になる方は日本ウエイトリフティング協会のHPを見ていただければと思います。(とてもわかりやすく書かれています)

コーチとしての1年半

指導することになった「中1チーム」

私の地元はウエイトリフティング(以下「WL」といいます)がとても盛んで、老若男女のたくさんの人たちが練習場に顔を出すという珍しいまちです。

そのため市WL協会の指導体制としては、子どもたちを年代ごとに区切っており、私とT先輩の二人は中学1年生(3人)を指導することに決まりました

この教え子3人はまるで「ズッコケ三人組」のように個性がある子たちでした。笑

・まじめで、率先して行動できるリーダータイプ
・口数が多い理論派ムードメーカー
・パワータイプなのに冷静かつ繊細な子

この代の子たちは共通して「賢くて頑張り屋」な子たちでした。

私は子どもと接することに苦手意識があったため、当初は「接し方で悩んだりするかも」とか思っていましたが、彼らが私の中学時代と似ている気がしたからか、そういったことで悩むことはほとんどありませんでした。

騒がしいタイプの子たちだったら、もしかすると悩んでいたのかもしれません笑

コーチとしての役割

コーチを任されることになってからの私はというと、案外気合が入ってしまい、指導計画や練習メニューはほとんど私が考えていました。

WLに取り組む姿勢や栄養・休息などの情報を伝えるために、自ら作成したプリントなども配布しました。

また、彼らにはスポーツは「成長を楽しむもの」と考えて欲しいと思い、「3年生になった時(2年後)の全国大会(※)で優勝する自分」をイメージしてもらうような言葉をたくさんかけ、目的を持ってもらうことをモットーとしました。

※マイナー競技であるWLにも、中学生の全国大会があります。

当時作成したプリントは全て残っていましたので、
需要はないかもしれませんが、せっかくなので一部を添付しておきます。


また、子どもたちに教えることに対して大きな責任を感じ、成長期の身体の特性を調べましたし、WLのフォームの勉強もたくさんしました。(自分の選手時代よりも笑)

ただ、勉強したフォームをやってみせることは簡単でも、それぞれの動きや感覚を言語化するのってとても難しかったですね。慣れるまで時間がかかった記憶があります。

成長スピードに感じた、子どもが持つポテンシャル

子育てなどを経験された方ならわかるかもしれませんが、子どもの吸収力には驚かされますよね。

私は、大人にもWLを教えていたことがあったので、子どもと大人の飲み込みの速さの違いを明らかに感じました。

私に言われたことを必死に「自分の頭で考えて試そう」とするため、動きが急激に良くなったり、はたまたオーバーにやり過ぎてしまったりと、"水もの"な彼らの身体の動きをみて、その素直さと健気さに感動すら覚えました。

また、私が高校時代にWLを教わった先生から教えていただいたことの中に「心の器を上向きに」という言葉があります。

これは「器が下向きだと何も入らない」=「オープンに聞き入れる姿勢が大切」というような意味で、当時感銘を受けたため今でも心に残っています。

子どもたちは、この「心の器」は上向きにはなっていますが、器の容量自体は少ないと思います。
そのため、器に入れる側(コーチ)が、器から溢れてしまっている部分を汲み取ってあげることも大切だとも思いました。
(我ながら上手いことを言えた手応えを感じております笑)

そして、私の想いを受け止めてくれた彼らは、面白いほど成長してくれました。

WLの良さは「練習の成果がわかりやすく現れる」ことです。
若輩者ながらそれは断言できます。

そのことに気づいてくると、練習を頑張れる→結果に出る→嬉しい→また頑張れる という良いフローが生まれます。

気づけば彼らは、私たちが止める必要を感じるほど、気合いの入った練習を自ら進んでするようになっていきました。

コーチを辞めるという選択

コーチを始めてから1年ちょっとが経ち、2年生になった彼らは数ヶ月後に控えていた全国大会の出場基準記録を突破し、全国大会出場に向けて、より一層気合が入った練習の日々を過ごしていました。

ですが奇しくもその頃、私は転職することを決めました。

引っ越しを伴う転職でしたので、当然コーチも辞める必要がありました。

もちろん彼らの3年生の全国大会を見届けてから、辞めたいという気持ちはありましたが、未経験業界への転職であったため、若さは重要な要素であり、最終的には自分のキャリアを優先する決断をしました。
※転職についての詳細はこちらの記事をご覧いただければと思います。

彼らには全国大会に向けて集中して欲しかったので、辞めることについては、全国大会が終わってから伝えることにしました。

教え子とコーチの同時全国デビュー

2022年7月。茨城県で行われた全国中学生大会に、私もコーチとして引率し参加しました。

私自身は選手として何度も出場経験のある全国大会にも、コーチとしては初めてだったので、選手としての大会よりも緊張していました。

ふと横にいる彼らに視線を移すと彼らもまた「あ〜緊張する〜」と言い合っており、「普段は大人びていてもやっぱり中学生だな」と微笑ましく思えました。笑

また、「緊張する」と言葉に出せているだけ良い緊張の仕方だなとも思いました。

さて、WLの試合は、体重ごとの階級で分かれて順位を競うため、格闘技のように検量があります。
検量にセコンドとして立ち会うのももちろんコーチの勤めです。

そんなちょっぴり緊張の検量も無事通過し、いよいよ試合の時間が近づいてきました。

WLの試合結果はウォーミングアップで決まると言っても過言では無いほど、ウォーミングアップは重要です。
なぜなら、試合の時間から逆算して、徐々にバーベルの重さを上げて体を温めていく必要があるからです。

そして、そのウォーミングアップ中に失敗(バーベルを落とす)でもしようものなら、かなりの不安感が残ります。
実際に、1人は極度に緊張し、ウォーミングアップ中のミスを繰り返してしまっていました。

そこでいかにメンタルを支えられるかがコーチとしての腕の見せ所です。

私も内心は焦りましたが、それを表に出さないように、選手には成功のイメージを浮かばせるように声かけを行い、「○㎏挙げたら○位になれるよ」などと鼓舞しました。

すると面白いことに、ここでも彼らの「上向きの心の器」が作用します。
明らかにいつもとは違うキレを見せる彼らの動きに、今度は本心から「よし、いけそうだね」と言えました。

そして、結果的には3人中2人が自己記録を超える結果を残し、なんとそのうち一人に至っては2年生ながら3位に入賞してしまいました。

入賞した選手は表彰式に出られます。

私は、3位の表彰台に登った彼の姿を目にした途端、

  • 弱かった初めの頃の彼の姿

  • 表彰台に堂々と立っている目の前の彼の姿

  • そして、コーチとしては最初で最後の全国大会と決まっている事実

これらの情報が一気に私の脳裏をよぎり、写真撮影をしているiPhoneを持つ手を震わせながら、気付けば何年かぶりの涙が流れていました。


こんな素敵な経験ができたのはいい思い出ですし、これらの経験が転職後の今の仕事などにも活きていると思います。

ちなみに、全国大会が終わってから、彼らにコーチを辞めることになった旨を伝えると、案外あっさり「そうなんですね」と返されたので、少し寂しかったです。笑

彼らから学んだこと

弱かった自分だからこそ教えられた

私自身は、選手として全国大会での入賞経験もありませんし、怪我も多く、誇れるほどの成績は残せていません。

けれども、目標としていた「国体代表」に選ばれることができたのは、嬉しかった自分なりの「成績」です。

WLで全国上位の結果を残すには、残酷ですが、体質・骨格等の天賦の才が必要であると身をもって感じました。

私には、残念ながらそれはありませんでしたが、それでも私なりに記録を伸ばせた要因は、戦略力だと思っています。

選手時代の私は、スポーツを計画的に楽しむタイプでした。
記録目標を設定して、②目標から逆算した強化計画を立てて、③練習をして、④計画を修正して‥ というPDCA的なことを自然とやっていました。

例えばゲームでも「最初は弱いところからスタートして、レベルや武器を強くして強くなっていく」過程が楽しいのと同じで、無意識に自らの弱さ楽しめる要因に変えられていた気がします。

そういった経験が、子どもたちに教える際に活きた実感はあります。

目的意識の重要性

私は学生時代を、勉強する目的がわからないまま過ごし、自宅で勉強をした経験がほとんどないまま就職しました。

しかしアラサーになった今となっては、当時の自分からは想像できないのですが、歴史や数学などを学ぶことが楽しくて、自ら勉強しています。

これは、能動的に社会に関心を持ち、物事を他人事ではなく「自分ごと」に考えられることが増えたからだと思っています。

WLに話を戻すと、「全国大会で優勝」という目的があれば、それを達成するための手段(練習)を自ら考えて行うようになるのです。

「人のための活動」がやりがいにつながる

冒頭と少し話が重複しますが、私は最初にコーチの話を受けた際に、「責任感による恐縮」と「メリット(報酬)の無さ」を感じていました。

しかし、これまで書かせていただいたとおり、日頃から彼らの成長のために思考を巡らせ行動することで、人生で最もやりがいを感じた活動を経験できました。

これらの経験も、今抱いている将来の夢や目標を設定する動機になっています。

ちなみに、私は将来、WLに関する事業を起こすことを考えており、現在は副業でウエイトリフティングのインストラクターをやっています。
ご興味を持っていただいた方は私のサイトを見ていただけると嬉しいです。
※未経験でも簡単に始められます!

最後に

この記事を書こうと思ったきっかけは、嶋中 康晴さんという方が書かれた下記の記事を目にしたことです。

こちらの記事のほかにも、スポーツ業界の未来について語られている記事がたくさんあり、私自身の夢とも重なる部分が多く、とてもワクワクさせていただきましたので、皆さんにもぜひご覧いただきたいです。


今後も、私の思いや経験を活かして、誰かと自分のために活動をしていきたいと思いますし、そのうちそれについても記事にしようと思っています。

以上、とても長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。


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