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米FRBの金融引き締め加速観測で資産形成どうする?

今週(4月4日~8日)は米FRB(連邦準備理事会)による金融引き締め観測が一段と強まる週となりました。

私たちが考えなければならないのは、資産形成を行う上で、現状および先行きをどう見るかです。その意味で、今週の2つの話題から米国の金融政策動向を押さえておきたいと思います。

1つめは、4月5日のブレイナード理事の発言です。同理事は現在、FRB副議長に指名されており承認待ちの状態です。その彼女が「インフレを引き下げることが最も重要」「一連の利上げと早ければ5月に開始するバランスシートの縮小によって理路整然と金融引き締めを続ける」「バランスシートは前回よりもより急速に縮小するとみる」「利上げとバランスシート縮小の効果で政策姿勢は年後半により中立的な位置に近づくとみる」と述べたことで、米金融政策の引き締めペースが加速するとの見方が強まりました。

It is of paramount importance to get inflation down. Accordingly, the Committee will continue tightening monetary policy methodically through a series of interest rate increases and by starting to reduce the balance sheet at a rapid pace as soon as our May meeting. Given that the recovery has been considerably stronger and faster than in the previous cycle, I expect the balance sheet to shrink considerably more rapidly than in the previous recovery, with significantly larger caps and a much shorter period to phase in the maximum caps compared with 2017–19. The reduction in the balance sheet will contribute to monetary policy tightening over and above the expected increases in the policy rate reflected in market pricing and the Committee's Summary of Economic Projections. I expect the combined effect of rate increases and balance sheet reduction to bring the stance of policy to a more neutral position later this year, with the full extent of additional tightening over time dependent on how the outlook for inflation and employment evolves.

(出所:FRB)

ブレイナード理事の発言が注目された理由はいくつかあり、主なものとしては、①FOMC(連邦公開市場委員会)メンバーの中でハト派(金融緩和派)に属する同理事が金融引き締めの加速に言及したこと、②次期副議長として発言力が高まることが予想されること、③バイデン政権とのパイプが太く政権の意向が反映されている可能性があること、④翌日にFOMC議事要旨の公表が予定されており、議事録がタカ派的であることを示唆したとみられること、などが挙げられます。

これを受けて、S&P500は前日比で1%超下落、米10年国債利回りは2.5%台半ばに上昇、ドル円は123円台後半までドル高円安が進みました。

そして、2つめは4月6日のFOMC議事要旨の公表です。議事要旨によって、3月15-16日に行われたFOMCの会合で、具体的な数字を挙げながら今後の金融引き締めに関する議論が行われていたことが明らかになりました。

内容をざっと挙げると「(バランスシート縮小について)参加者は総じて、米国債で月600億ドル程度、MBS(住宅ローン担保証券)で月350億ドル程度を上限とすることが適切になりそうとの見解で一致」「市場環境が正当化するのであれば上限は3ヵ月あるいはそれよりもやや長い期間をかけて段階的に導入し得る」「早ければ5月の会合の終了後にバランスシートの縮小のプロセスを開始する」「多くの参加者は今回の会合での0.5%の利上げを好んだが、ロシアによるウクライナ侵攻による不透明性に照らして0.25%の利上げが適切と判断した」「多くの参加者は、将来の会合で1回あるいはそれ以上の0.5%の利上げが適切になると指摘」といったことが議論されていました。

Participants generally agreed that monthly caps of about $60 billion for Treasury securities and about $35 billion for agency MBS would likely be appropriate. Participants also generally agreed that the caps could be phased in over a period of three months or modestly longer if market conditions warrant.

Many participants noted that—with inflation well above the Committee's objective, inflationary risks to the upside, and the federal funds rate well below participants' estimates of its longer-run level—they would have preferred a 50 basis point increase in the target range for the federal funds rate at this meeting. A number of these participants indicated, however, that, in light of greater near-term uncertainty associated with Russia's invasion of Ukraine, they judged that a 25 basis point increase would be appropriate at this meeting. Many participants noted that one or more 50 basis point increases in the target range could be appropriate at future meetings, particularly if inflation pressures remained elevated or intensified.

(出所:米FRB)

FOMC議事要旨の影響で、S&P500は続落、米10年国債利回りは2.6%近辺に上昇、ドル円は123円台後半での底堅い展開となりました。その後、週末にかけては、S&P500は持ち直したあと反落、米10年国債利回りは2.7%台まで上昇、ドル円は124円台乗せとなりました。米金利先物市場では年末までに2.25%の利上げを見に行く動きとなっています。

足元では、FRBによる金融引き締めが加速するとの見方で、米株式相場に下押し圧力がかかっています。一方で、利上げとバランスシート縮小の見通しに関して、金融市場はかなりの部分を織り込んだとみられます。今のペースよりも、さらに利上げが大きくなる、ないしはバランスシートの縮小が大幅になるとしたら、インフレ率が一段と上昇する場合でしょう。

そうなのです、もしかすると米国の金融政策という意味では、結構いいところまで市場の織り込みが終わったのかもしれません。だとすると、この先、懸念していたほど物価が上昇せず、金融引き締めを現在の想定ほど強化する必要がなくなれば、金利上昇は落ち着き、株式相場は押し上げられることが予想されます。

一方で、インフレ率の上昇が続き、金融引き締めによって景気が大きく減速することになれば、株式相場には下落圧力がかかるでしょう。今、市場が織り込んでいる金融引き締めがすべて実施されれば、さすがの米国経済も景気後退に陥る可能性が高くなります。金融政策という意味では、市場は相応に織り込んでいても、その結果として起こり得る景気減速については、先行きの展開次第なので織り込めていない面もあるのだと思います。

ここから先は、現在の金融引き締めの織り込み水準を出発点として、インフレが悪化せず引き締め度合いが弱まれば、株価は上昇が期待できそうです。逆に、物価上昇や景気減速が強まれば株価は下落が予想されます。そして、このどちらか一方が起こるのではなく、両方のシナリオの可能性を睨みながら、株式相場が上下する展開も考えられます。そう考えると、中長期の資産形成という観点では、しばらくは大幅な株価上昇を期待せずに、うまく押し目を拾う、あるいは淡々と無理をしない範囲で投資を続ける、つまりマーケットに参加し続けることが大切だと考えます。そうすることで、中長期的に相応のリターンを得ることが可能だとみます。

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