すいこがくせん

昔、ボート漕ぎ。 超体育会(体育会を超える)と思っているけれど、実は元活字中毒者。 活…

すいこがくせん

昔、ボート漕ぎ。 超体育会(体育会を超える)と思っているけれど、実は元活字中毒者。 活字で強くなったと思っています。 最近は動画ばかり眺めていたので、いかん、と思い、読書と活字リハビリ中。 「すいこがくせん」は「推古岳仙」と書き、亡くなられた書の先生からいただいた名です。

最近の記事

【R.I.P】松岡正剛さんを偲んで

松岡正剛さんが亡くなられた。 松岡さんが携わった「編集工学」に関する本(たぶん「知の編集工学」だと思う)を読んだ際には、世の中すべてのものを編集し尽くしてしまうぞ、という迫力があった。 その昔、イシス編集学校というところ(松岡さんの編集術を学ぶ学校)の無料学校説明会に行った。おそらく、前述の本を読んで感化されやすい僕はフラフラとでかけて行ったはずだ。 師範代と呼ばれる方が学校のことを説明してくれた(はずだ)。何かのことで皆の前で話をするのか、自分の考えを言うことがあって、何

    • 【読書】『藤森照信の現代建築考』 藤森照信 文 下村純一 撮影 鹿島出版会 2023年

      週刊朝日に連載されていた藤森照信の「建築探偵考」は「近代建築」ということばを日本語に持ち込んだそうだ。連載開始は1987年。僕が大学を卒業する前年のことだ。そのころ大学の体育会で年間三百日合宿を敢行していた自分にとって、たまに帰る実家に父親の買ってきた週刊朝日で「現代建築考」を読むのが楽しみだったと覚えている。  藤森は建築史家であり(約四十年前、そういう学問があることすら知らなかった)、現在は四十五才から始めた設計でも大きな評価を受けている。藤森が、「日本のモダニズムに関

      • 【読書】『意味の深みへ』 井筒俊彦 著 岩波文庫 2019年

        ずいぶん前、というより三十年以上前に井筒俊彦先生(なぜ先生なのかは最後で)「意識の本質」を読んだ。当時構造主義ってなんだろう、というところからスタートしてソシュールの言語学でこけて、「意識の本質」にたどり着いた。何度か読んで思ったことは。構造主義や言語学のことではなく、東洋思想(哲学)の諸論を縦横無尽に、かつ、押し寄せる波のようにこれでもか、これでもか、と迫り来る迫力であった。  今回読んだ「意味の深み」は本書の「あとがき」で先生が書かれている通り、「意識の本質」と同じテー

        • 【読書】『掌の中の無限』 マチウ・リカール&チン・スアン・トゥアン 著 菊池昌実 訳 新評論 2003年

          この本は副題が「チベット仏教と現代科学が出会う時」となっていて、パストゥール研究所で分子生物学の国家博士号を取ったあと、チベット仏教の僧侶となったマチウ・リカールとヴェトナムで教育を受けた後フランス留学を希望したが、当時の政治情勢のためアメリカに渡り天体物理学を学び、ヴァージニア大学で天体物理学の教授であるチン・スアン・トゥアンとの対話である。  現代物理学とチベット仏教というより、科学と仏教の対話とした方がいい(本書P30に「なぜ科学と仏教の対話か」)。  結論から書くと

        【R.I.P】松岡正剛さんを偲んで

          【読書】『失踪願望。コロナふらふら格闘編』『続 失踪願望。さらば友よ編』 椎名 誠 著 集英社 2022年 2024年

          椎名誠は元気なんだろうか。 何十年ぶりかで椎名誠の本を読む気になった。 おそらく大学生の時に椎名誠の本を結構読んだと思う。 いっとき、僕は「活字中毒者」であると自認していたが、これは彼の椎名誠の本のそのままだし、何より、いま、これを書いている文体も大きく影響を受けていると言っていい。 大学を卒業してからは、小難しい本を読むようになって、読まなくなって長い月日がたつがが、冒頭のことが気になって最新作を読むことにした。 まず驚いたのは椎名誠が今年80歳だということ。 20年以

          【読書】『失踪願望。コロナふらふら格闘編』『続 失踪願望。さらば友よ編』 椎名 誠 著 集英社 2022年 2024年

          【読書】『悲しき熱帯』 レヴィ=ストロース著 川田順三訳 中央公論社 1977年

          レヴィ=ストロースの著作は一度は読んでおかねばならない、と思いつつ30年以上経過していた。これまで読んできた高野秀行の本にも、石田ゆうすけの本にも名前が出ていた。 30年以上前にロウイングという競技に没頭していた際に、「構造主義」という言葉に触れた。正しい「構造主義」であったとは思えないが、ロウイングという競技に限らず、様々な競技について整理したことがあり、これを構造化と思っていた。レヴィ=ストロースが構造主義の祖であることは知っていたが、著作を読んだことはなかった。 レ

          【読書】『悲しき熱帯』 レヴィ=ストロース著 川田順三訳 中央公論社 1977年

          【読書】『行かずに死ねるか!』『いちばん危険なトイレといちばんの星空』『洗面器でヤギごはん』 石田ゆうすけ著

          一気に読んだ3冊の副題は「世界9万5000km自転車ひとり旅」とある。 副題のとおり、著者が7年半をかけて世界一周の旅をした軌跡と、その中のいいも悪いも合わせた一番をあげ、そして食べたものついて書いたものだ。 著者は帰国後、日本全国のラーメン店巡りをしたりして本にしている。 以前から読んでみたかった本ではあった。 先日、自転車の雑誌を立ち読みでながめていたら、著者が連載している文に気づいた。 そのまま斜め読みをした後に、彼の本を読んでみたくなった。 著者の正直な人柄が出てい

          【読書】『行かずに死ねるか!』『いちばん危険なトイレといちばんの星空』『洗面器でヤギごはん』 石田ゆうすけ著

          【読書】『ピダハン』 D.Lエヴェレット著 屋代通子訳

          この本は、ピダハンというアマゾン奥地の少数民族の言語についての学術書だ。 著者のエヴェレットはキリスト教を布教する宣教師としてピダハンの村に入り、彼らの言語を30年以上に渡って調べ、そのユニークな世界観を知った。 前半は学術書ではなく、冒険物語として読める。 後半はピダハンの言語から、世界観から分かることを言語学者の視点から語るノンフィクションともいえる。 ピダハンはアマゾン奥地に400人を切るほどの極小数民族で、ピダハンの言葉は彼ら以外には使われない。 エヴェレットは19

          【読書】『ピダハン』 D.Lエヴェレット著 屋代通子訳

          【読書】『世界に学ぶ自転車都市のつくりかた』 宮田浩介 編著 南村多津恵・早川洋平 著

          自転車によく乗っている。 サイクリングというより、通勤、図書館行く、買い物に行くなどの目的があって乗っている。 車を使うまでもない、公共交通機関は使えない、歩くには遠い、といったことで移動手段、交通手段である。 日本の交通手段の視点からみた自転車の評価は以下のとおりである。 日本の自転車の交通分担割率(移動の際のメイン交通手段に使われる割合)は、16%でオランダとデンマークの25%に次ぐ世界3位である(本書183ページ)。 日本の自転車利用度、そして利用者層の幅広さは、し

          【読書】『世界に学ぶ自転車都市のつくりかた』 宮田浩介 編著 南村多津恵・早川洋平 著

          【読書】『自転車泥棒』 呉明益(2021)文春文庫

          タイトルからして僕のように自転車好きである人にお勧めする、と書けばすぐに終わってしまう。確かに台湾の古い自転車の自転車史である。しかし、現代の話でありながら日本が台湾を統治していた時代、国民党の時代につながって輻輳している。  最初は、村上春樹とカズオ・イシグロの小説みたいな感じかなと思うが、歴史が入り込んでくると重厚感が強くなる。  台湾は、東日本大震災の際に多大な復興支援をしてくれた国で親日国であると多くの日本人は考える。  1895年から1945年まで日本が統治してい

          【読書】『自転車泥棒』 呉明益(2021)文春文庫

          【読書】『辺境の怪書、歴史の驚書 ハードボイルド読書合戦』 高野秀行×清水克行(2018)集英社インターナショナル

          読書会、本を紹介するための本を読むと困ることは、読んでみたい本がどんどん増えてしまうことだ。本書は、『世界の辺境とハードボイルド室町時代』で対談した二人が互いに紹介したい本を選び、読んだうえで対談するという形で進む。  世界を見て、話し、聞いたうえで民俗学的視点からノンフィクションとして仕上げる高野と歴史家で日本中世史を専門として室町時代ブームの火付け役となった清水の対談である。選書が専門書ばかりで、これを読み込み、気になる点について話を続けていくが、まぁ、よくこれだけキャ

          【読書】『辺境の怪書、歴史の驚書 ハードボイルド読書合戦』 高野秀行×清水克行(2018)集英社インターナショナル

          【読書】『サピエンス全史』『ホモ・ゼウス』 Y・N・ハラリ 2016年、2022年(文庫) 河出書房新社(河出文庫)

          今更という感じであるが、Y・N・ハラリのサピエンスシリーズを読んだ。 著者はイスラエル人の歴史学者である。多層的に折り重なっている歴史からマクロ的な視点で大きな流れをつかみ、そこに遺伝学、考古学での発見を挿入しながら大胆な仮説を唱えている。 『サピエンス全史』では、僕らホモ・サピエンスが他にいたホモ属系の人類たちの中でなぜ残ったかについての理由を延々と書いている。 ホモ・サピエンスは約10万年前に東アフリカから世界に出た。僕らサピエンスが新しい土地に到着すると、先住の人

          【読書】『サピエンス全史』『ホモ・ゼウス』 Y・N・ハラリ 2016年、2022年(文庫) 河出書房新社(河出文庫)

          【読書】『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 高野秀行✖️清水克行

          この二人は面白い人たちなんだろうと思う。 お笑い芸人や漫才師のように笑わせる面白いではなく、その人となりが面白いそうなのだ。 片や世界中に突進していく拡散型で、片や中世日本史に突っ込んでいく集中型で、裏表紙にも書いてあるように「普通は接点を持ち得ない二人」が接点を持ったらどうなるのか、それも「面白い」二人が接点を持つとどうなるのか、面白くないわけがない。 僕は一人の中に拡散型と集中型が同席していると思っていて、だから中途半端なのかな、と思う。 どちらかに寄せるのがいいのだ

          【読書】『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 高野秀行✖️清水克行

          【読書】『僕らが変わればまちが変わり、まちが変われば世界が変わる トランジション・タウンという試み』 榎本英剛 2021年 地湧の杜

          この本はだいぶ前に手に入れて、積読の山の中にあった。 装丁からみて、読みやすい本だろうと何気なく読み始めて一気に読み終わった。 本の帯は推薦者からの推薦でない限り、その本の内容を簡単に伝えてくれる。 この本の帯には次のように書いてあった。 「やりたい人が、やりたいことを、やりたい時に、やりたいだけやる」夢のような活動を実現してきたトランジション藤野の13年 詳細は本書を読んでいただくに限るが、僕はこのような活動があったことを知らなかったし、まさか、このような活動ができる、

          【読書】『僕らが変わればまちが変わり、まちが変われば世界が変わる トランジション・タウンという試み』 榎本英剛 2021年 地湧の杜

          【読書】『イラク水滸伝』 高野秀行 2023年 文芸春秋

          『謎のソマリランド』に続く、日本人が行かない、いや、日本人だけでなく普通の外国人も行かない国への潜入記である本書はタイトルにある通りイラクを舞台としている。 タイトルにある水滸伝は、中国の小説であるが「水のほとり」という意味で、イラクの湿地帯である「アフワール」に行き、船を漕ぐ、というのがこの本の目的である。 ソマリランドもそうだけどイラクも聞くだけで「テロ」「危険」などの言葉が思い浮かぶ。 冒頭に次のように書かれている。  「イラク」。なんで禍々しい響きなのだろう。イラク

          【読書】『イラク水滸伝』 高野秀行 2023年 文芸春秋

          【読書】『謎の独立国家ソマリランド』 高野秀行 集英社文庫(2017)

          高野秀行はノンフィクション作家である、と紹介されているけれど、地球スケールで何でも見てみないと気がすまない記者的(格好良く言えばジャーナリスト)探検家である、と思う。早稲田大学の探検部在籍時に「幻獣ムベンベを追え」デビューして以来世界を股にかけて何でも見に行き、記事を書いている。 この本でも、記者的、民俗学な自分視点からの丁寧にソマリアという国(単に国と呼ぶにはあまりに複雑な事情がある。詳細は本書を読んで)の政治の情勢について整理している。ソマリアという国の印象は、内戦、飢

          【読書】『謎の独立国家ソマリランド』 高野秀行 集英社文庫(2017)