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【読書】『イラク水滸伝』 高野秀行 2023年 文芸春秋

『謎のソマリランド』に続く、日本人が行かない、いや、日本人だけでなく普通の外国人も行かない国への潜入記である本書はタイトルにある通りイラクを舞台としている。
タイトルにある水滸伝は、中国の小説であるが「水のほとり」という意味で、イラクの湿地帯である「アフワール」に行き、船を漕ぐ、というのがこの本の目的である。
ソマリランドもそうだけどイラクも聞くだけで「テロ」「危険」などの言葉が思い浮かぶ。
冒頭に次のように書かれている。

 「イラク」。なんで禍々しい響きなのだろう。イラクと聞いて思い出されるのは、サダム・フセイン、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、化学兵器によるクルド人虐殺、イラク戦争、内戦、アルカイダ、イスラム国(IS)、自爆テロ、拉致、難民……。

「禍々しい」としか思えない国のさらに奥地に行けるのか?と思うけれど、そこは「誰もいかないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く。」というポリシーの「プロの辺境家」は、いろいろ回り道をしながらたどり着く。
この回り道が楽しいのだ。この本を面白くするネタだ。
この回り道、脱線をたどっていくと単行本で500ページになる。
民俗学的視点、明密な記録もとりあげられており、本来は学術書レベルである考察が高野節によって学術書の内容が民謡となって語られる。

高野の本については多くを書くと面白くない、このあたりでとどめておく、と恰好をつけたいところだが、シュメール時代から続くと言われるイラク(アフワール)5000年の歴史は簡単にまとめることができるわけないのだ。


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