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舞台 「Free as a Bird」 観劇レビュー 2021/06/05

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【写真引用元】
彩の国さいたま芸術劇場<舞踊>公式Twitter
https://twitter.com/Dance_SAF/status/1371657970686201861


公演タイトル:「Free as a Bird」
劇団:コンドルズ
劇場:彩の国さいたま芸術劇場 <大ホール>
構成・映像・振付:近藤良平
出演:石渕聡、オクダサトシ、勝山康晴、香取直登、鎌倉道彦、黒須育海、古賀剛、小林顕作(声)、ジントク、スズキ拓朗、田中たつろう、橋爪利博、藤田善宏、安田有吾、山本光二郎、近藤良平
公演期間:6/5〜6/6(埼玉)
上演時間:約110分
作品キーワード:コンテンポラリーダンス、舞台美術、プロジェクションマッピング、コント
個人満足度:★★★★★★★☆☆☆


彩の国さいたま芸術劇場の次期芸術監督となった近藤良平さんが率いるコンテンポラリーダンス集団「コンドルズ」の新作公演を観劇。

ダンスを主体とする団体の公演を初めて観劇したが、ダンスありコントあり映像あり人形劇ありのエンタメ要素の詰まった興奮の止まらない舞台で楽しかった。
基本的には洋楽に合わせてダンスパフォーマンスするシーンが何箇所かあり、それ以外の箇所は舞台装置を活かした無言劇だったり、コントだったり、映像が流れたりとレパートリーに飛んだ内容。

最初から最後まで一貫したストーリーがある訳ではないが、タイトルが「Free as a Bird」ということで鳥のように自由に羽ばたけというコンセプトが一貫していて、ダンスパフォーマンスをするコンドルズのメンバー一人一人が自由に飛び回る鳥のように見えてきて、閉塞感のある現代に明るい未来と喜びを届けてくれる作品に感じた。

なんといっても舞台装置と照明演出の迫力が凄まじくて、信号機や自転車、ポストなど街中にある物をペーパークラフトの巨大版みたいな感じで等身大で再現している作り込みであったり、様々な色彩を駆使したカラフルな照明効果によってダンスパフォーマンスと舞台装置がより一層魅力的に映える演出が素晴らしかった。

老若男女みんなにオススメできる最高のエンターテインメント。

スクリーンショット 2021-06-06 5.33.02

【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/431299/1604610


【鑑賞動機】

劇団鹿殺しの丸尾丸一郎さんが演出を手掛けた「山犬」という舞台作品(2019年3月に上演されていた)で、ダンスパフォーマンスシーンにコンドルズが関わっていて団体の存在を知った。そこからいつか当団体の公演を観たいと願っていて、今回ようやく新作公演という形で上演が決定して観劇することになった。
劇団の主宰の近藤良平さんが、彩の国さいたま芸術劇場の次期芸術監督に決定したことも大きい。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

一貫したストーリーというのがある訳ではなく、ダンスパフォーマンスやコント、映像といったコンテンツを含む数々のシーンでそれぞれ区切られているといったスタイル。公演開始から終演まで順番にシーンを解説していく。

田園風景と河川風景(おそらく埼玉県)をドローンで撮影した映像が流れた後、信号機やポスト、自転車、シーソーなど街中に存在する物が白いペーパークラフトのようなもので等身大に形作られた舞台セットが出現する。そこで何やら絵描き(近藤良平)が街中の風景をただ一人で描写している。
そこへ複数人の学ランを着た男たちがやってくるが、絵描きは彼らの存在に気づかず絵を描いている。絵描きが誰かいるかと辺りを見回すと学ランの男たちは街中の信号機の影に隠れる。それをひたすら繰り返してダルマさんが転んだ状態になって見つかってしまう。
夜になり、街中に幽霊(黒須育海)が現れる。幽霊は絵描きが置いていった画板を持ち去る。絵描きは次の日になって画板がなくなっていることを怪訝そうに思って探す。そして夜になって、再び幽霊が現れ絵描きも現れて画板を盗んだのが幽霊の仕業だったことを知る。

絵描きは「近藤良平、次期芸術監督就任」と横書きで書かれた紙を持って登場し、オープニングのパフォーマンスが始まる。マイケル・ジャクソンの「Black or White」に合わせたパフォーマンスと、オーケー・ゴーの「The Writing's on the Wall」(おそらく)に合わせたパフォーマンスを披露する。
2人一組3ペアの合計6人の男たちが、白いTシャツを着て後ろ向きで登場する。一組が前を向くとそこには「米国」とTシャツに書かれた男と「中国」と書かれた男であったことが判明し、2人は対決して「中国」が勝利する。次に一組が前を向くとそこには「開催」と「中止」と書かれていて、「中止」と書かれた男が対決に勝利する。最後の一組が前を向くと「経済」と「人命」と書かれていて、「人命」が即勝利する。白いTシャツの6人は音楽に合わせてシーソーに乗りながらパフォーマンスする。

再びスクリーンが降りて、下手側にギターを持った近藤良平さんが現れてナレーションを始める。そのナレーションに合わせて、スクリーンの向こうでは影絵が始まる。内容は、体の大きさはいっちょ前だけど空を飛べない鳥の話。鳥は頑張って空を飛べるようになるが、焼き鳥にされてしまうというオチで、そこから居酒屋の焼き鳥の話になる。
居酒屋の焼き鳥には、ねぎまと砂肝とレバーがいた。ねぎまは人気者だからすぐに注文が入って何度もお客の前に運ばれるが、人気のない砂肝とレバーはずっと置き去りにされていてねぎまを妬んでいる。
今日も、ねぎまにオーダーが入って焼かれていた。そして、羨ましいことに若い女性に食べられることになった。食べられたねぎまはどうゆうことやら、また居酒屋の調理場に戻ってくる。次に砂肝の注文が入り焼かれる。砂肝はすっかり調子に乗ってレバーを怒らせる。砂肝も若い女性に食べられることになって上機嫌で戻ってきた。そしていよいよレバーにも注文が入ることになる。レバーはようやく注文が来たと大喜びしながら焼かれ、自分も若い女性に食べられるんだと期待したが、食べたのはおっさんだった。
コントが終わると、家で鳥かごに閉じ込められた鳥が脱出して大空へ飛び立つアニメーション映像によってオープニング映像が流れ、キャストが紹介される。

素舞台となった舞台上に、木を模ったペーパークラフトが用意される。そこへ、幽霊が二人登場する。幽霊は上半身裸になってスメタナの「モルダウ」に合わせてダンスパフォーマンスを披露する。その後幽霊が立ち去ると、木を模ったペーパークラフトに映像を投影して、まるでプロジェクションマッピングのようになって色とりどりの花を咲かせる美しい木となる。
地下からステージが上がってくると同時にそのステージにパフォーマーたちが全員スタンバイしていた。ステージが上がり切ると、洋楽に合わせて複数曲のダンスパフォーマンスが始まる。

再び居酒屋のシーン、今度は人間視点での居酒屋のシーン。居酒屋には大将と、6時間飲んだくれている3人の中年男がいた。その横に、飲みすぎて潰れている太ったサラリーマンがいた。
そこへ若い女性が一人で居酒屋に入ってくる。若い女性はねぎまを注文する。そして次に砂肝を注文する。3人の中年男たちは、どうして地球は回っているのかと呟き始める。分かんねえと酔いしれながら言い合っていると、急に潰れていた太ったサラリーマンが起き出して、地球は24時間かけて自転しているから・・・と真面目な回答をし始め、周囲は困惑する。そして完璧な回答を言い終わった後にレバーを注文する。
太ったサラリーマンがレバーを注文して食べ終わると、今度は気持ち悪くなってトイレへ駆け込んだ。そこへ、急にレバーは人の形をして居酒屋に現れた。トイレで吐かれてしまうと、二度と調理場に戻ってこれなくなってしまうという危機感からだった。
周囲はレバーが人の形をして出現したことに驚いていた。そして、そんなマズい光景を見たねぎまも何とか頑張って人の形となってその場に現れた。焼き鳥が人の形となって2つも居酒屋に現れたことに全員が気を取られている間に、大将は砂肝を火にかけたままにしていたことを忘れ、居酒屋は爆発する。埼玉公演恒例の大爆発だそう。

再び信号機や自転車の等身大のペーパークラフトが置かれたステージに戻る。近藤さんが一人でパフォーマンスする、どこからともなく松任谷由実さんの「ひこうき雲」が流れる。それに合わせて一人で踊る。
そして曲が終わり次第、今度は別のもっと明るい曲が流れてパフォーマンスを始める。木を模ったペーパークラフトも降りてきて、更に沢山の羽ばたく鳥を模ったペーパークラフトも沢山降りてきた。そして一人パフォーマンスが終わり、EDの米米CLUBの「浪漫飛行」が流れながら作品終了。

物語が一貫してある訳ではないし、一つ一つピックアップしてみると意味不明なシーンも沢山ある。しかし、そんなことをお構いなしとして舞台美術やパフォーマンスの迫力が素晴らしかった(こちらの詳細は世界観・演出で記載)。
ストーリーでいうとコントの辺りが凄く上手いと思った。前半に焼き鳥を主人公としたストーリーが伏線となって、その展開を後半で人間側に視点を置いてコメディとして成立させた見せ方が素晴らしかった。ねぎまが注文された、砂肝が注文された、そしてレバーは・・・と展開を予想出来つつ且つ確実に面白い方に持っていくので観ていて楽しかった。
それと、今作のコンセプトである「Free as a Bird」が要所要所に登場して、はっきりしたメッセージ性ではないものの、居酒屋のシーンでも出てきた「人はコロナや情報に振り回されているだけ、もっと鳥のように自分らしく自由に」という台詞にもあるように、気持ちを浄化して初心に返って夢を抱くことの重要性を感じられた。
鳥に羽があるように、人間にも見えない羽がついていて、夢に向かって自由に羽ばたくことが出来る、そんな気持ちを忘れてはいけないと思った。
素晴らしいコンセプトだと思った。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/431299/1604611


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

舞台装置といい、照明効果といい、音響といい、映像といい、世界観という意味では物凄くハイクオリティで独特なものだったので、詳細に記載しておくことにする。
舞台装置、照明、音響、映像、その他の演出という順番で見ていく。

まずは今作品で一番最初にあっと目を奪われた舞台装置から。
開演して幕が開いた瞬間その舞台上にあったものは、白いペーパークラフトのようなもので作られた、けど等身大くらいの大きさはありそうな、信号機、自転車、ポスト、シーソー、踏切といった街中に存在するオブジェたち。これらのオブジェがステージ全体に広がっているだけで、最初から興奮が止まなくなる。そこに近藤さんが絵描きとしてポツンんと絵を描いている光景は、もうここから面白いことが始まるに違いないという予感を大きく掻き立ててくれる。素晴らしい舞台装置の仕上がりだった。
この世界観に合わせて、リード紐に繋がれた飼い犬や傘といった小道具までペーパークラフトで作成されていたのが、凄くユニークで面白かった。
また、劇中後半から登場する木を模ったペーパークラフトも凄く良かった。やはりその木のオブジェに投影されるプロジェクションマッピングが素晴らしくて、それによって色とりどりの花を咲かせることができて、素晴らしい演出だったと思った。
さらに終盤で登場する、無数の羽ばたいた鳥たちのペーパークラフトが、本当にこの作品のテーマを表していて、閉塞的な今の社会から脱した明るい未来への願いみたいなものにも感じられて素敵だった。無数にあったので、非常に最後は賑やかな感じで終わるっていうのが良かった。
ペーパークラフト以外では、基本的には焼き鳥居酒屋のコントのシーンでは、どちらかというと演劇的というかストレートプレイのコメディ仕立ての舞台装置で、埼玉の大衆居酒屋を彷彿させる味のあるセットが好きだった。
それと、影絵が素敵だった。ステージ手前側にずーと布を開いて用意して、その背後でペーパークラフトか何かを使って街を影で再現したり、鳥を再現したり、空の飛べないふとっちょ鳥を演じたり、創意工夫が素晴らしかった。そこに近藤さんのナレーションも入って最高だった。

次に照明を見ていく。照明はとにかく派手だった。岡村さん演出の「熱海殺人事件」や柿喰う客の公演みたいに赤や黄色や青の色のどぎつい照明が沢山使われるというのではなく、もう少し淡い感じの照明が多かった。
例えば、序盤の街中をペーパークラフトで再現したシーンでは、夕方のシーンを薄く赤紫にスポットを当てることで、良い感じの少し淡い雰囲気を創り出している感じが素敵だった。ペーパークラフトも相まって物凄くインスタ映えしそうな美しい世界観を創り出していて素晴らしかった。
そしてなんといっても、ダンスパフォーマンスシーンの照明は格好良い。明かりをバンバン変えてエンタメ仕立てに仕上げる感じがワクワクを増強させてくれた。
それと、沢山のスポットが1秒間隔のスピードで代わる代わる点いたり消えたりする、ある意味ストロボ的な目が若干チカチカするような演出も印象に残っている。とにかく照明の工夫箇所の多さにも驚いた。

そして音響、クラシック音楽から洋楽、J-POP、J-ROCKと多岐に渡ったジャンルの曲を多用しながら上手く一つの作品としてまとめ上げている感覚を受けた。
まず客入れでは[Alexandros]やスピッツといった日本の有名アーティストによる楽曲を流してワクワクを高ぶらせ(全て「鳥」に関する楽曲が使われていた)、そしてコンテンポラリーダンスとともにマイケル・ジャクソンの「Black or White」、オーケー・ゴーの「The Writing's on the Wall」を取り入れたパフォーマンスは、非常にエンターテインメントとして完成度の高い、興奮させられっぱなしのショーを体感させてくれた。
特に印象に残ったのは、終盤で近藤さんの一人パフォーマンスシーンで流れた松任谷由実さんの「ひこうき雲」。テーマが自由に羽ばたく鳥ということなので、青空を想起させる「ひこうき雲」のチョイスは素晴らしい。また、明るく激しい曲が多い中の静かで落ち着いた珍しいバラード曲なので、非常に作品全体の中でも良い意味で浮いていて強調されたシーンだった。ある種、こういうシーンがあるからこそ、飽きずに観られるといった印象を受けた。そしてこの「ひこうき雲」は、まるでラジカセから静かに流したかのような感じで聞こえ、おそらく一つのスピーカーからそのように加工して流しているのだと思うが、それがなんとなく懐かしさというか、他のシーンでは感じられなかった心をグッと掴まれたような静かな感動を与えてくれてよかった。ウルっときてしまうくらい心動かされた。
そして、近藤さんのギターによる生演奏も素敵だった。近藤さんのマルチスキルが垣間見えてくる。


映像も力が入っていて素晴らしかった。
まず一番最初のドローンで撮影した埼玉の田園風景がよい。まるで自分が羽を生やして羽ばたいて街中を覗いているかのよう、素敵だった。あの時の「Free as a Bird」というタイトルロゴが、どことなくビートルズを想起させて、というか「Free as a Bird」はビートルズの未発表曲から由来しているそうなのだが、凄くセンスのある映像だった。
アニメーションのオープニング映像は、正直もっと作り込んでも良かったかなと思うが、あえてダサい幼稚っぽいアニメーションに仕上げているのかもしれない。ちょっと真意は分からなかった。
個人的に素晴らしいと思ったのは、映像というかプロジェクションマッピングなのだが、ペーパークラフトの木に対して花が咲き誇るように映像で投影する演出が素晴らしかった。ただの白い何もない木だったのが、プロジェクションマッピングによって、一気に賑やかに映えるオブジェへと変貌する光景が素敵だった。

その他の演出部分について触れると、今回のテーマが「自由」ということもあってか、各キャストが自由に演技をしていた節があったような気がした。ダンスパフォーマンス中にカツラを被っていて、途中でワイヤーでズラを外すとか、いきなり劇中で告知を流すとか、割とやりたい放題だったというのもこのコンセプトから来ているような気がした。
また、全てのシーンが区切られているようで繋がっている箇所があるのが好き。一番特徴的だったのが居酒屋の焼き鳥のコントのシーン。そして幽霊のシーンもそうだった。凄く構成演劇という感じがあって好きだった。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/431299/1604609


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

全てのダンスパフォーマーの方が輝いて見えた。割と中年男性の方が多い印象だったが、凄くイキイキとしていた。
特に印象に残ったパフォーマーに絞って触れていく。

まずは、コンドルズの主宰で今作の構成・振付・映像も担当しており、彩の国さいたま芸術劇場の次期芸術監督にも就任する近藤良平さん。
髪の毛モジャモジャで顎髭を生やしていて、でも非常に人情深くて優しそうな素敵なパフォーマーさん。ダンスももちろん上手いのだが、声も凄く透き通っていてうっとりするくらい良い声だった。学ランと黒い帽子が非常に良く似合っている。
また、非常にマルチな能力をお持ちであることも感じた。振付が出来たり映像が作れたり、またギターが弾けたりとバラエティに富んでいる。非常に素晴らしいパフォーマーだと思った。
個人的には、終盤の「ひこうき雲」が流れるシーンでの一人パフォーマンスが印象的。凄く踊りが繊細できめ細かい点で心を奪われた。

次に、非常におちゃめな役をやっていた印象だった黒須育海さん。特に幽霊役でおちゃめに演技をしていたのが印象的だった。上に羽織っている白い裾の長い上着を捲し上げるようにして自転車に乗る光景や、ガニ股で移動する感じとか客席でも笑いが結構起きていて面白かった。そして幽霊のくせに全く怖くないという。「ヒョロー」という効果音だけいっちょ前に怖い。

非常に華奢な体で頑張っている印象を受けたのは、橋爪利博さん。彼の演技で印象に残ったのは、白いTシャツに「中国」と書かれた姿で演じているシーンと、居酒屋の大将のシーン。どちらも凄く可愛いおじさんといった演技で好みだった。特に居酒屋の大将の砂肝を焦がしちゃった時の慌てようが面白かった。

個人的に凄くインパクトに残っているのは、太っちょな体型をしたオクダサトシさん。丸い体型をしていてもダンスパフォーマンスをしているというのが面白い。そんなにダンス自体もハードなものではないので可能なのだが。
そして、居酒屋のシーンでの酔いつぶれたサラリーマン役が印象的。あんなおっさんそこら辺の居酒屋で居そうだなと思うし、レバーの末路が哀れに思えてしまうのも、このオクダさんが作り出すキャラクターのおかげだと思う。非常に印象に残ったパフォーマー。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/431299/1604612


【舞台の考察】(※ネタバレあり)

私はコンテンポラリーダンス主体の作品を初めて観劇した。普段はストレートプレイやミュージカルが多いので非常に新鮮に感じたが、それでも凄く楽しかったという印象である。
まず、舞台美術好きな人には是非とも観て頂きたいと思えるくらい、センスの塊のような世界観がそこにはあった。コンドルズはYouTubeチャンネルを持っているので、無料で過去作品の雰囲気くらいは垣間見れるのだが、とにかくエンタメ要素の強い興奮させられるような世界観の作品に毎度仕上がっている。
過去作品でいうと、階段のオブジェが用意されていてそこにメンバーが腰掛けていたり、路地裏を模したようなセットでダンスパフォーマンスを行っていたりと、とにかくセンスが素晴らしい。絶対映像を観ただけでも作品を生で観たくなると思う。
コンテンポラリーダンスは、老若男女全ての人にオススメしたい作品ジャンルの一つである。

今回のコンドルズの作品で言えば、世界観や演出はハイクオリティであるが、ストーリーみたいな部分については正直そこまで作り込んでいる印象はなかった。コンドルズの作風としてストーリーではなく世界観とビジュアルで勝負しているといった感じなのだろう。
ただ、タイトルが「Free as a Bird」とあるように、閉塞的な今の世の中から脱して自分らしく自由に生きようというポジティブなメッセージ性は伝わったので、そういう一貫したテーマを感じ取ることは出来た。

そして、劇場で配布されたフライヤーで知ったのだが、私が認知していないだけで多くのダンスパフォーマンスユニットが存在し、今も公演をしているということが分かった。私はなるべく同じジャンルに偏らないように、大劇場から小劇場まで万遍なく観劇してきたつもりだったが、このコンテンポラリーダンスの領域において私が把握していなかった団体が沢山存在することを知った。
例えば、今回のコンドルズに所属しているスズキ拓朗さんが主宰している「CHAiroiPLIN」や、AI×ダンスのSF異色作で時代を切り開こいうとしている北尾亘さんが主宰する「Baobab」など、今まで全く知らなかった面白そうなダンス劇が沢山存在するということを知った。
本当に演劇の世界には沢山のジャンルがあって奥が深い、開拓したようで全然開拓できていない余地がまだまだ残されているということを自覚させられた。
これからは、こういったコンテンポラリーダンスの領域も積極的に開拓して、より演劇業界に対して視野広く捉えられたら良いと思う。
ちなみに、今年8月に梅棒という劇団の「おどんろ」という作品を今日予約した。こちらもダンス×演劇のパフォーマンスグループである。非常に楽しみである。



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