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恋に生きた君は知る

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恋に生きた君は知る【完】

恋に生きた君は知る【完】

 これまでとは違った意味で振り回され始めたユスツィートを余所にエルメリアは終始ご満悦な様子でリストの作成に取り掛かった。
 ちょっとしたことから数日は要しそうなことまで。
 思うままに書き連ねたそれがそのまま今後の楽しみに変わるのだから、まさに我が世の春。

「ユースは? 何をなさりたいですか?」
「んー。買い物、かな。やっぱり」
「ご入用の物でも?」
「まずは一通り君の好みが知りたい」

 エル

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恋に生きた君は知る【38話】

恋に生きた君は知る【38話】

 それから、魔法式の場所と詳細を知られないように諸々を遮断するために発動させていた式を解けば。
 瞬時にコンタクトを取ってきたクレアクリスからうるさいくらいの思考が飛ばされてきた。

(お前お前お前っ! マジで何処にいやがる!? つーか無茶はしてないだろうな!? 急に死にたくなったから今から自殺します、なんて言い始めたらタダじゃおかねーぞ!)
(私をいったい何だと思ってるのよ……)

 死にたい気

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恋に生きた君は知る【37話】

恋に生きた君は知る【37話】

 何百年もの間、恨みと憎しみとを募らせながらも呆気なく泉に還されたティミーの姿を思い出してしまったクレアクリスは余計なことを考え過ぎないよう、エルメリアの居場所に話を戻すことにした。

(ところで今、どこにいるんだよ?)
(ひみつ)

 珍しくも上機嫌な様子でそう返されて思わず顔をしかめてしまう。
 お互いの顔は見えないので分からないはずだが、雰囲気で伝わったのか(失礼ね)と、言葉が続けられた。

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恋に生きた君は知る【36話】

恋に生きた君は知る【36話】

(それで、結局あなたが私に従っている理由って何だったのよ)

 ヨハネスと共に精霊界から戻って来たので、報告しようとエルメリアを探すも姿が見当たらず。
 いつもだったら容易な場所の特定も困難ときて、首を傾げながらも思考を繋げてみれば。

(ティミーがどうなったのかとかティミーとの関係とか、色々ある中で真っ先に気にするところがそこかよ)
(ティミーの話なんて後で聞いても変わらないでしょ)

 第一、

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恋に生きた君は知る【35話】

恋に生きた君は知る【35話】

 対象者の死亡により効力を失っていた契約式が熱を帯びて再契約が果たされたことを知らせる。
 ——エルメリアが生まれ変わったのだ。

 精霊界で過ごす時の定位置となっている枝の上で惰眠を貪っていたクレアクリスは思わず飛び起きた。
 すぐ側にいたティミーに「どうした?」と、尋ねられて素直に答えて良いものか一瞬迷ったものの、ありのままを報告する。

「ああ、あの娘が帰ってきたのか!」
「相手が死んだこと

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恋に生きた君は知る【34話】

恋に生きた君は知る【34話】

 ——50年前。

 世話になっている古代精霊の頼みとあって、渋々ながらもヨハネスの召喚に応じ、エルメリアと契約を結ぶことになったクレアクリスは想像していたよりもはるかに退屈な日々にうんざりしていた。

 望まない侵略戦争の真っ只中なんて私欲を抱いている暇のなさそうな状況で、まともに腹を満たすことができるとは考えてすらいなかったとはいえ。
 右を見ても左を見ても、自らの死、あるいは終戦を願う奴らば

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恋に生きた君は知る【33話】

恋に生きた君は知る【33話】

 笑みを深めたエルメリアの頬に触れる。
 今この瞬間を迎えられたこと以上の報酬もそうはないだろう。

「敵わないだなんて。それは私のセリフです」

 1つ尋ねてもいいか、と言われたので頷けば。
 エルメリアはユスツィートの手に自らの手を重ねながら続けた。

「どうしてキスを?」

 一瞬、いつの話かと首を傾げかけたが転移させられた先でクレアクリスを呼び出した時のことだろう。
 秘術に組み込んだ式の

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恋に生きた君は知る【32話】

恋に生きた君は知る【32話】

 ユスツィートの氷が消失し、解放された人々が膝を突く。
 正気を取り戻した直後の混乱から頭を押さえる者、呆然とする者、反応はそれぞれだったが呪いの影響が残っている様子はない。

「騒ぎの原因となった精霊は預かっていくが構わないか? お前自身の手で処断したいならそのように手配しておくが」

 ヨハネスに声を掛けられたユスツィートは少し考え込む素振りを見せながらも「お任せします」と返した。
 大切なの

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恋に生きた君は知る【31話】

恋に生きた君は知る【31話】

 エルメリアの耳に届いていたら恥ずかしさのあまり手元を狂わせていただろう。
 キッカリ1分でイルゼに施された式を封じた彼女は、しかしユスツィートの発言には反応を示さず、ただ顔色を悪くさせる。

「っ、ティミー! あなた……!」
「ああ。全てが徒労に終わることに気付いたか?」
「ふざけないで!!」

 ティミーに命じても無駄なように。
 イルゼを止めたところで呪いの効果は持続する。
 被害者が増えぬ

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恋に生きた君は知る【30話】

恋に生きた君は知る【30話】

 精霊のティミーが直接手を下せば秘術を用いて止められる可能性がある。
 だから、どんなに回りくどく、虫唾が走るような手法でも必要なことと割り切って、使えそうな人間を利用することにした。
 50年前も。150年前も。
 エルメリアでさえ記憶していないような遥か昔から。

 リブラント家に与えられた資格を絶やすことだけに腐心し、あと一歩のところまで辿り着いたのだ。

「喪失は恨みと憎しみを育て攻撃性を

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恋に生きた君は知る【29話】

恋に生きた君は知る【29話】

「さて、イルゼ嬢。僕が何を確認したかったかはもう分かっていると思うけどあえて尋ねよう。君は精霊と契約したね?」

 ユスツィートが向き直れば、イルゼを案内してきてからそのままこの場に留まっていた神父が「お待ち下さいっ」と声を上げた。
 それを手で制す。
 弁明も助命も今はまだ必要ない。
 ただ、事実を確認しているだけだ。

 ティミーの発言が発言だっただけに、さすがに緊張した面持ちとなったイルゼは

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恋に生きた君は知る【28話】

恋に生きた君は知る【28話】

 けして交わることのない異空間であればこそ入口と出口とを別々に繋げば最短の移動経路となる。
 もっとも、リブラントの人間くらいにしか使えない経路ではあるが——。

 クレアクリスが用意した“道”を抜けたエルメリアは、侯爵家の敷地内ではなく教会の裏手に降ろされたことに気付いて振り返る。
 ただの転移魔法ならともかく精霊界を経由しているところを見られでもしたら厄介なことになるだなんて言わなくても伝わっ

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恋に生きた君は知る【27話】

恋に生きた君は知る【27話】

 ——翌日。
 礼拝と奉仕活動を終えたエルメリアはユスツィートと共に通りの家々を訪ねて回った。
 婚約の儀の前後で姿を見せる時間を作るにあたり事前の告知と挨拶を済ませておくためだ。
 言わば人となりを知ってもらうための口実である。

 多少警戒されるのは致し方ないこととして1件1件丁寧に伺えば、好奇心を抑えられずに集まった人々の視線は次第に柔らかいものへと変わる。
 魔女への不信感が拭いさられたと

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恋に生きた君は知る【26話】

恋に生きた君は知る【26話】

 ユスツィートの愛をエルメリアは否定できなかった。
 愛されている自覚が彼女にはあったし、彼の“愛する者”がエルメリアなら求められる相手もまたエルメリアとなる。
 その指摘に間違いはない。

 当然のように自身を対象から外していた彼女は「そうだけどそうじゃない!」と叫び出したい気持ちでいたが、後に続く言葉を思えば口に出す訳にもいかず、結局両の手で顔を覆って俯くに留まる。
 そうだけどそうじゃないん

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