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総合型選抜・学校推薦型選抜で求められる読解力|大学入試と受験経験が私達にもたらすもの【代ゼミと考える読解力#4】

こんにちは、代ゼミ教育総研note、編集チームです。
読解力の連載、4回目です。
多くの人に読んでいただき、執筆者一同喜んでいます😊

第1回では「読む」について思いを巡らせ、

第2回では「読解力」の現状を知りました。

第3回では、大学入試の「一般選抜」で求められる読解力について、大学入学共通テストを軸に分析しましたが、

今回は、近年受験者数が増えている新しい入試方式、「総合型選抜」「学校推薦型選抜」からも読解力を分析します。

代ゼミ教育情報センターのKさんに、「最新の入試情報」や、「大学合格のその先を見据えた視点」も交えながら詳しく教えてもらいました。



(代ゼミ教育情報センターについてはこちらもご覧ください☟)



入試問題を解くにあたって世間には「読解力が必要!」という話があふれていますが、何をもって必要であると論じられているのでしょうか。

入試制度や大学入試が受験生に求めるものを読み解きながら、人生で必要とされる読解力についても考えていきましょう。

本記事では「受験勉強は何の役に立つの?」そんな疑問に対するひとつの答えもお示しできればと思います。

✎大学入試の制度と実施実態

▶現在の入試制度の3本柱 「過去」「現在」「未来」を評価

大学入学と切っても切り離せないのが入試。現状無試験で入学できる大学は存在しません。入試の内容がどんなものであれ、必ず試験を行って大学で学ぶに相応しい受験生を選抜しています。

2021年度に大学入試改革が行われ、現在は大きく分けて以下の3区分で実施されています。

一般選抜は学力検査が中心の選抜方式です。毎年1月になれば大学入学共通テストの話題で、2月になれば東大の入試などでニュースを賑わせている入試方式です。

国公立大学では共通テストと2次試験(個別学力検査等)
私立大学では個別学力検査等

の点数で合否が決まります。試験当日に今まで学んできたことを出力できるかが要となります。受験生の「現在」を評価する試験といえます。

総合型選抜は大学入試改革が行われる前に「AO入試」と呼ばれていた入試方式です。
AO入試は、学力試験では測れない受験生の能力・適性を評価する選抜方法としてスタートしました。

そんなAO入試の流れを汲んだ総合型選抜では、入学者本人が記載する活動報告書や、大学入学希望理由書等の資料が積極的に活用されています。
各大学のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)と受験生が思い描く大学生活との合致も重要となります。
大学に入ってから何をするかを重視する点で、受験生の「未来」を評価する試験といえます。

学校推薦型選抜は「推薦入試」と呼ばれていた入試方式です。

募集人員が多いものには以下の3種類があります。
公募型:大学が定める出願要件を満たしていれば誰でも出願可能
指定校型:大学が指定した学校の生徒のみが出願可能
附属高校型:(同一学校法人内の)大学の附属高校の生徒のみが出願可能

公募型で募集している大学が割合としては多く
国立では97.2%、公立では89.8%、私立では36.1%となっています。

いずれにしても所属する高校の学校長の推薦が必要となるため、高校入学直後からの入念な準備が必要となります。

学校推薦型選抜では、評定の平均数値を出願要件としている場合がほとんどです。国公立大学の多くは高3生1学期までの評定平均4.0以上を出願要件としています。

出願書類である調査書の内容も重視されるため、勉強だけでなく学校行事や部活動、その他の課外活動にも取り組んだことがアピールポイントとなります。
高校生活をどのように過ごしてきたかを重視する点で、受験生の「過去」を評価する試験といえます。


▶それぞれの選抜方式での入学者割合

では実際に受験生はどの方式で受験し大学に入学していくのでしょうか。
文部科学省は「国公私立大学入学者選抜実施状況」という資料を公表しています。
入学者選抜実施状況:文部科学省 (mext.go.jp)

そちらをまとめたのが以下のグラフです。2021年度入学者から3年分をまとめました。

まず全体の割合に注目すると、2023年度入学者の48.6%が一般選抜で、15.0%が総合型選抜で、36.4%が学校推薦型選抜で入学しています。
一般選抜:総合型&学校推薦型選抜=5:5といったところでしょうか。

これを国公私立別にみると状況は異なります。
一般選抜の割合が、国公立大学では7~8割、私立大学では4割であり、全体の数値からは開きがあります。

全体の傾向からいえることは一般選抜での入学者の割合が減り、総合型・学校推薦型選抜での入学者の割合が徐々に増加しているということです。

学力のみでなく多面的な評価をする選抜での入学者が増加しています。

大学としては早く合格者を確保したいこと、入学者選抜の段階で学習意欲や人間性を見ておくことで入学後のミスマッチを防ぐねらいもあるのでしょう。

入試方式は大学からのメッセージであり、願いです。
こんな学生に入学してほしい、こんな学生なら大学でも活躍してくれるはず…。
そんな思いをこめて設計されたものであり、決して受験生を合格させないために作られた関門ではありません。

どの方式で受験するにせよ、大学が定めるアドミッション・ポリシーを読み解くことで大学が発するメッセージと自分が思い描く大学生活が合致しているのかを再確認することができます。

受験だけにとどまらず大学入学後の学生生活の充実にもつながっていくのです。

アドミッション・ポリシーは各大学が公表する大学案内やHPで確認できます。
複数の大学を比較してみるのも興味深いですよ。


✎総合型・学校推薦型選抜で測られる力

年々入学者数が増えている総合型・学校推薦型選抜ですが、その試験内容は実に多様です。

文部科学省が毎年6月に公表する「大学入学者選抜実施要項」ではどのように受験生を評価するのか、その方法の指針が示されています。

総合型・学校推薦型選抜それぞれについては出願書類だけでなく、「大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力等も適切に評価するため」大学入学共通テスト又はその他の評価方法等のうち少なくともいずれか一つを必ず活用することが明記されています。

ここでいうその他の評価方法等とは「小論文・プレゼンテーション・口頭試問・実技・各教科科目に関わるテスト・資格検定試験の成績等」が例として挙げられています。

▶知識・技能、思考力・判断力・表現力を支えているものとは何か

ここで大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力を支えているものとは何かを考えてみたいと思います。

物事を考える流れとしてこれらを並べてみると

知識・技能の修得

それらをベースに思考・判断

自身の理解・他者へ伝えるための表現

という流れとなり、大学における研究活動はまさにこのプロセスの繰り返しです。

では、大元にあるその知識・技能はどこから来るのか。

そこで肝要となるのが読解力です。

自身の周りにあふれる情報を読み解き、蓄積していくベーシックスキル」が読解力だと考えます。

読解力が十分に備わっていれば、初見の情報を既知の知識と関連付けたり、定義と事例を紐づけたりすることで、新たな知識・技能の領域を広げていくことができます。

読解力が知識・技能、思考力・判断力・表現力を支え、より強固なものとしているのです。

知識・技能の源泉は読解力であり、その源泉がいかに豊かであるかが最終的に表現されるものの多様さにもつながります。

総合型・学校推薦型選抜の出願要件に読解力の必要性が明記されているわけではありませんが、突き詰めていくと読解力が受験勉強をする上でのベースに位置づいてきます。

▶総合型・学校推薦型選抜で求められる読解力

一般入試では、共通テストをはじめ様々な入試問題文のボリュームアップを受け、速読力が必要とされています。

情報を"素早く"読み解き、"素早く"求められていることに答えるスキルは得点力を高めるうえで重要です。時間が限られている試験ですから当然でしょう(情報処理能力と言っても過言ではないかもしれません……)。

一方で、総合型・学校推薦型選抜では出願書類を作成する段階からの入念な準備が必要で、時間をかけて自分と向き合うことがまず要求されます。

これまで自分はどんなことに興味を持ってきたか
自分はどんな人間か
これから大学で何に取り組んでいきたいか
なぜこの大学でなければならないのか

自分と自分の身の回りにある情報を正しく読み解き、得た材料を再構成していくわけですから、読解力が生きてくる場面です。
常日頃接するもの(授業、本、ニュース、学校や家庭での会話.etc…)をじっくりと読み解き、自分なりの意見を練り上げていく力が求められます。

また、試験でプレゼンテーションや面接を行う場合は文字ではなく、自分の言葉で話すことが必要になります。
書類は提出するまで何度も書き直すことができますが、対面のコミュニケーションともなれば、何度も話すことは難しいでしょう。臨機応変さが求められます。

質問内容はもちろんのこと、相手の表情を読み取り、これまで学んだ大学のアドミッション・ポリシーなども加味しながら、返答する力が求められます。

得意・不得意はあったとしても、「相手に魅力的に伝わるように書こう・話そう」とするならば、情報を読み解き、自分なりの考えを形成し、それを他者に伝えるための練習が必要です。それが総合型・学校推薦型選抜における受験勉強となりえます。

速読とは異なる、「時間をかけて同じ素材を多面的に読み込んでいく力」を育てていく必要があります。

✎大学合格のその先に「受験勉強は何の役に立つの?」

自分の身の回りにある情報を正しく読み解く力、書く力、話す力は合格したら磨かなくてもよい力でしょうか。

答えはNOです。これらは大学生になっても、社会に出ても日常的に行うこと。合格でとどまることのない力が総合型・学校推薦型選抜の入試において求められています。

私事ですが、最後に思い出話を少しだけ。
日本史学を専攻したいという熱い思いを持って大学に入学しました。
高校までとの違いに驚きの毎日でした。

~1年生~
書き方を教えてもらったわけでもないのに、来週の講義までにレポートを書いてきてと言われる
(見た目を整えようとし図をたくさん入れた結果、内容が薄くなる。読み返すと今でも恥ずかしい…)

~2年生~
高校の授業とは格段にレベルが違う専門科目の講義を受ける
(はじめは崩し字が全く読めず、夜遅くまで授業準備なんてことも)

~3年生~
たくさんの分厚い専門書を読んで調べ物をする
(パソコンに専門書を落としてキーボードが壊れた友人もいました…笑)

~4年生~
自分でテーマを決めて論文執筆に取り組む
(史料調査・学会参加のために様々な地域へ。帰り道は史料でカバンがいっぱい。重い…)
研究テーマについて、先生・ゼミ生の前で発表する
(先生・ゼミ生から質問攻めに…)

いろいろな想定外がありつつも楽しかった大学生活でした。様々な困難を乗り越えることができたのは、大学受験という経験のなかで培われてきたスキルのおかげだと心から思います。

課題でレポートを書く
論文として研究成果をまとめる
それを人に伝える
そのためには、豊富な知識が前提となります。

その知識を自分のものとして蓄えるには、自身の周りにある情報を読み解くベーシックスキルである「読解力」が必要です。
入試のために行ってきた様々な対策のなかで鍛えられた読解力が生かされてきます。

大学を卒業して社会人になったいま、教育情報センターでは多くの情報を収集し分析・発信する仕事をしています。
Webサイトでの発信、印刷物の作成、講演会など、様々な発信があります。

国や大学が公表する多くの情報をただ集めて横流しにするだけでは、お世辞にも分析したとはいえません。誰が見てもわかりやすい状態にまとめ発信していくことが求められます。

「読解力」に裏打ちされた "質の高い情報収集" の上に正確な分析と発信が成り立つのです。この力なくしては正しく情報を読み解き他者に伝えていくことはできません。

受験生の時には意識していなかった思わぬ副産物を大学受験がもたらしてくれました。ありがたや、ありがたや…。

入学後の未来に向かって受験期を過ごしていること
入試はその到達度を中間評価するものでしかないこと

を今一度意識し、前向きに進んでほしいと心から願います。


いかがでしたか。

受験勉強を頑張れば頑張るほど、ついつい目先の結果に捉われがちですが、「受験勉強のその先」にあるものを、先生も生徒も保護者も意識の隅におきながら励んでいきたいものですね。

では、実際に大学入試をくぐり抜け合格した生徒たちが、大学に合格した後どうなっているのか?読解力をどう鍛えているのか?次回の記事にてご紹介します。


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