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文系・理系両方に入試枠を設けることで生まれる、多様性に満ちたデータサイエンスの新しい学びの場

文系からも、理系からも、受け入れる

データサイエンスの対象領域は、活用できるデータ群が存在するのであれば、自然科学、社会科学、人文科学といったカテゴリーを問わないことは
前回ご説明いたしました。

このような背景から、データサイエンス学部の入試科目は、文系・理系両方の受験生が受験できるような入試科目の設定にしているケースが多くなっています

文系・理系両方の受験生を受け入れる、というわけです。

2018年に設置された横浜市立大学(神奈川県)のデータサイエンス学部では、一般選抜前期日程において、1次試験である共通テストの地歴公民と理科の選択科目、および2次試験(個別学力検査)の数学の範囲は、文系・理系どちらの受験生も受験できるように設定されています。

共通テストは、文系型の地歴公民2科目選択、もしくは理系型の理科2科目選択、どちらの選択パターンでも受験できます。また、2次試験の数学は、受験者全員必須のⅠⅡABに加え、「ⅠⅡAB 」・「Ⅲ」・「確率分布と統計的な推測」から1題選択という設定になっていて、選択問題では、文系受験者、理系受験者、それぞれが支障なく受験できるよう配慮がなされています。

一橋大は理系受験生を受入れ

2023年新設の一橋大学のソーシャル・データサイエンス学部の入試も見てみましょう。

募集人員が一番多い一般選抜の前期日程を見ると、共通テストでは、地歴公民から1科目および理科の専門科目を2科目する受験パターン、つまり、従来の文系受験者用の科目選択型に加え、理系受験者用の科目選択型も設けているのです。

これは、既存の商・経済・法・社会学部には無いパターンであり、ソーシャル・データサイエンス学部には、積極的に理系の学生を受け入れようとする姿勢が見て取れます。

私立大にも、文・理両方に門戸を開く例が

私立大学の入試についても見てみましょう。

私学ではいち早くデータサイエンス学部を設置した武蔵野大学(東京都)では、メインとなる一般選抜のA日程において、英語、国語、および地歴公民などから1科目選択する文系型と、英語、数学、理科もしくは情報から1科目選択する理系型を設けています。

つまり、文系・理系いずれの受験生も受け入れる方式になっています。

立正大学(東京都)のデータサイエンス学部の2月前期入試は、地歴公民受験(英語、国語、地歴公民から1科目)、理科受験(英語、国語・数学から1科目、理科から1科目)、数学受験(英語、国語、数学)の3つのパターンを用意し、こちらも文系・理系両方の受験生への間口を設けています。

このように、データサイエンス学部の入試では、国公立大、私立大を問わず、文系・理系両方から幅広く受験生を受けられるようにしている大学が多く見られます。

過去を思い返すと、このように、文系・理系に対して両開きの入試を導入した事例は、あまり見られません。

もちろん、文系の範疇となる経済学部の一部には、経済学を履修する上で必要とされる数学を入試で課す例は見られますが、データサイエンス学部のように、ここまで大胆に文系・理系の垣根を越えて受験枠を設定するといった事例は、無かったといってよいでしょう

多様性に富んだ学びの場

このように、文・理の壁を越えて、様々な得意分野を持ち、バラエティに富んだ学生たちが一堂に会し、データサイエンスを学ぶ—―いろいろな特性をもった学生が集まることで生まれる、多様性に富んだ学びの場になることが想像できますね。

もちろん、個々の学生が備えておくべき共通のリテラシーが不揃いになるのでは、という懸念も生じますが、しかし、それ以上に、多様性がもたらす活発でエキサイティングな雰囲気や、イノベーション誕生の可能性には大いに期待したいところです。

実は、現在、国内の大学全体に関する課題として、こうした文・理の垣根を越えた「文理横断」や「文理融合」が求められる、という話が、にわかにクローズアップされているのです。

次回は、政府の動きも見ながら、どうして「文・理分け」に
問題があるのかなど、今後の展望を考えてみたいと思います。

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