【教育ニュース最前線】教育格差ワーキングチーム発足/なぜ夜間中学が必要なのか/北海道への教育移住
こんにちは!代ゼミ教育総研note、編集チームです。
今週も「教育のイマ」を2日にわたってお届けします☺
:::【教育ニュース最前線! 】:::
日々報じられる教育関連情報から、
教育業界への影響が高いと思われる内容を、
代ゼミ教育総研 研究員が厳選してピックアップ。
それぞれの分析・私見を述べます。
本日は「教育格差とその解消に向けて」がテーマ。
教育・学校・入試について関心がある方々の、
考えるヒントとなりましたら幸いです。
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🔽教育格差、機会格差、体験格差、進学格差、デジタル環境格差・・・
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4 / 24、こどもの貧困対策推進議員連盟は「教育格差について考えるワーキングチーム」を発足しました。今後、2週に1度のペースで会合を開く予定です。
第1回の会合では、困窮家庭の支援団体やこども家庭庁、文部科学省、厚生労働省からヒアリングを行いました。
▼困窮家庭支援のNPO法人が訴える 1か月の教育費が「2000円」の家庭も 議連「教育格差ワーキングチーム」発足 教育格差の二極化解決には「親の格差」の解消を(MBS NEWS・4/25)
支援団体である認定NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長は、データに基づき教育格差の現状を説明しました。
賃金に比べ物価の上昇が大きいことから、困窮家庭はますます経済的な厳しさが増し、教育費を減らさざるを得ません。
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公益社団法人CFC(チャンス・フォー・チルドレン)代表理事の今井悠介氏は『体験格差』(講談社現代新書・4/18発売)を著しました。
全国的な調査と体験格差の当事者からの聴き取りをもとに5つの解決策を提案しています。
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また、格差に課題意識を持った人たちが始めた「子どもの体験格差解消プロジェクト」では、体験創出プログラムをつくるとともに、調査・研究事業を進め、政策提言を目指しています。
▽「子どもの体験格差解消プロジェクト」(2023年2月発足)
日本の相対的貧困率は、2021年に15.4%。
子どもの相対的貧困率は 11.5 %とピークの 2012 年の 16.3 %よりは低下していますが、ひとり親世帯は実に 44.5 %と苦しい状況にあります。
▽相対的貧困率とは 日本15.4%、米英より格差大きく(日本経済新聞・2023年11月19日)
貧困、幼いきょうだいの面倒を見る必要(ヤングケアラー問題)、不登校などが、子どもたちの体験を奪います。
様々な体験は、思いやりや学ぶ意欲、自己肯定感などの非認知能力を高めると言われます。
他方、大学進学における「年内入試」の比率が年々高まっていますが、年内入試における自己アピールの要素にも大きな影響を与えます。
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💡研究員はこう考える
「共産主義国」でない限り、完全な平等はありません。経済状況には必ず差があります。
どこで、どんな家庭に生まれるかは、教育の機会、体験の差を生み出します。
もちろん、環境と成長は必ずしも単純に比例しません。恵まれない状況にあっても、苦境を跳ね除ける努力や運により、幸福や成功を獲得する人も少なくないでしょう。
しかしながら、現在、日本の経済や技術、国際的な地位は全体的に低下しています。その点を踏まえれば、格差という極端に大きな差に対しては手を打つ必要があると思います。
第一に、学校教育により体験の機会を与えることです。
首都圏の私学では、(潤沢な資金の支えもあり)自然・文化体験、多くの出会い、海外への研修旅行等、充実した体験が可能な場合が多いです。
公立でもできるよう、教育への予算の振り分けが必要ではないでしょうか。
第二に、学校外での体験機会の提供です。
子ども自身の意欲と努力があれば受けられるような仕組みを整えてはどうでしょうか。もちろん、こちらの方も、社会の人たちがよりよい未来のために教育投資をどう考えるかにかかっています。
なお、慶應義塾大教授の安宅和人氏は『シン・ニホン』(2020年2月発行)の中で「若い人に投資する国に変わろう」(p312-325)と言っています。
▽『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 』(NewsPicksパブリッシング)
耳を傾け、議論・検討する時ではないでしょうか。
🔽夜間中学は必要か
▼全国初の私立の夜間中学 珊瑚舎スコーレ 沖縄に開校 様々な理由で義務教育を受けられなかった人たちに学びの場を提供(TBS/琉球放送・4/25)
様々な理由から義務教育を終えていない人は全国におよそ 90 万人いるとされています。
文部科学省は、夜間中学が少なくとも各都道府県・指定都市に 1 校は設置されるよう促しています。
また、ICT環境や遠隔教育の活用による教育活動の充実について、各教育委員会へ依頼しています。
▽夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進について(依頼)(令和5年9月14日)
▽夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進について(依頼)(令和6年3月29日)
しかしながら、2024年現在、31 都道府県・指定都市に 53 校の設置に留まっており、十分とはいえません。
沖縄にも公立の夜間中学がありません。
そうした中、「NPO法人珊瑚舎スコーレ /学校法人雙星舎」(代表:星野人史氏)は 20 年にわたり自主夜間中学を運営してきました。
正式な中学卒業認定を得られるよう、全国から 2 万人以上の署名を集めて働きかけ続けた結果、全国初となる私立の夜間中学校として認可されました。
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💡研究員はこう考える
珊瑚舎スコーレのウェブサイトを見ると、学校は、「授業」を通して「自分を創る」ための手助けをする場だと言っています。
▽珊瑚舎スコーレについて
授業の目標は、あらかじめ用意された知識や技術を身につけるのではなく、生徒・教材・教員の三者の交流から生まれる力を育むこと。
「授業をつくろう! 学校をつくろう! 自分をつくろう!」
と呼びかけています。
中学校の学びが欠落し、その喪失感、寂しさ、生きづらさを抱えてきた人たちにとって、なんと勇気の出るメッセージでしょうか。
また、日本では、義務教育はエスカレーター式であり、どんな学びをしていても、自動的に進級、卒業できます。
しかし、人には様々な人生のスピードやリズムがあります。
義務教育の学習内容を十分に習得できなかった人たちが、あるとき、本当に学びたいとスイッチが入ることがあります。
また、海外からの移住など日本語が不得手な子どもたちの学びの環境に課題があることが指摘されています。
こうした多様な人たちに、十分な学びの場を提供できるような国であることが望ましいと思います。
ともあれ、夜間中学が足りないことは明らかです。
国は依頼するだけではなく、各自治体を支援し、夜間中学を増やすべきではないでしょうか。
🔽北海道への教育移住
昨年度開校した北海道の二校が人気を集めています。
北海道・夕張郡長沼町の「まおい学びのさと小学校」は、二年目、17 人の新一年生が入学しました。ちなみに、「入学式」は「入学を祝う会」であり、形式的な式典も、来賓の挨拶もありません。
時間割の多くは、自主性を重視した「プロジェクト」と呼ばれる体験学習です。
全校児童 75 人のうちおよそ半数が道内外からの移住者です。
▼「まおい学びのさと小学校」“春” ユニークな教育の小学校に元気な新入生たちが(HTB・4/29)
この学校は、1986 年に発足した「新しい教育・学校を考える会」のフリースクール運営などの活動が身を結んだものです。
▽まおい学びのさとホームページ
北海道・勇払郡安平町の安平町立早来学園は、義務教育学校として、まおい同様、昨年 4 月開校しました。2023 年の一年間で転入者が転出者を 91 人上回る大幅な社会人口増となっています。
▽安平町ウェブサイト「安平町立早来学園」
▽社会人口増で注目される北海道安平町。「あびらチャンネル」からさらに進むデジタル化の現状と未来[インタビュー](デジタル行政・4/4)
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💡研究員はこう考える
少子化が進み、4 月に人口戦略会議が発表した、2050 年までの「消滅可能性自治体」は 744 あり、全体の 4 割に上ります。
▽“消滅する可能性がある”744自治体 全体の4割に 人口戦略会議(NHK・4/24)
自治体も、学校も、存続の危機を迎えています。
しかし、憂えているよりも、知恵を出し合い、様々な可能性を考えてアクションを起こすべきではないでしょうか。
どうすれば、子どもは増えるのか。
どうすれば、人口減少を止めることができるのか。
教育は未来への投資と言っても、際限なく、あるいは、医療や福祉、インフラなど全てを投げ捨てて子育てにお金を投じることはできません。
しかしながら、危機においては本質を求める意識が高まります。
多くの制限があり、当たり前だった体験が奪われたコロナ禍においても、学校教育とは何か、国が国民に行うべきことは何か、マスクでお互いの表情がわからず、気軽に話し合えない、談笑しながら食事を楽しむことができない中で、人間にとって大事なことは何かが問われました。
私たちにできることは、その問いに対する答えを一つでも実現していくことではないでしょうか。
まおいや早来に人が集まってくる。
それは、オルタナティブな学校教育に対する支持があるからです。
都市から離れている「不便さ」を超える価値観があります。
こうした教育、動きを応援する。
公私問わず、投じることが可能なお金があればそうする。
そうすることで新しい希望がよりはっきりと見えてくるのではないでしょうか。
5/28(火)公開予定!
よろしければ vol.04-2 もご覧ください📓
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