見出し画像

感傷的ハタチ



気だるい、21歳になる

20歳、ジンセエ振り返ってみて色濃く脳内に染み付いていることを並べ立てた



ねぇ、もちもちのハムスター聞いててよ




高3、医師に鬱病ですと言われる

ウツビョウ?それってシンドイ人がなる病気じゃないの?わたしまだ大丈夫だよ


それから3年経ったがまだ鬱病と一緒にうまく生きていくすべを見つけられていない








いつの間にか疲弊していた心と意図的に傷つけた体


「中卒の18歳です」


嘘をついて働いていた店で支障が出ないように

赤い線は服の下ばかりを埋めた

ハダイロのキャンパスを塗りつぶせと言わんばかりに

肩、上腕部、腹、足首、太腿、腰


カッターを持つ手は動く、ローソンの216円のピンクのカッター消費税8%、今は220エン


人に自分の弱くて柔らかい部分見せるのなんて癪だから

自分の泣きヅラ晒さないようにトイレ、一番人の来ない和式の個室でポーチから中学時代に処方された古い薬を引っ張り出して唾液で飲み込む



家賃5.4の自分の家

じんわり辛い何かを、毎日泣いてる事実をなぁなぁにして

過食で嫌な出来事と記憶を誤魔化して

寝られないのは映画を観ているからだと言い訳する為にブルース・ウィリスをテレビ画面に連れ出した



赤かった線は茶色に白にくすみに変わりその上をまた赤い線でなぞる


大丈夫だよ、トラウマで教室に入れなくても

震えが止まらなくて上下もわからなくて厚着をしても体の芯には氷があるようで

毎時間毎時間教室を抜ける、中学時代みたいだ

大丈夫大丈夫と冷や汗でぐしょぐしょの手で身体を抱えて宥めるノ


保健室で言われた「みんな辛いんだから」

授業中に言われた「甘えてんなぁ」

頭の中を巡り続ける 

でも大丈夫、大丈夫


今日も教室を抜けて誰もいない教室のカーテン裏

その日病院で貰った薬を全部のんだ

カーテン裏でしゃがんだら横になりたくなって、倒れるように横になって天井をみたとき眠りたい、らくになりたいっておもったんだ



いつの間にか救急車



ODってなんですか?からはじまる入院先

ODを知らずにODした




ねぇ、もちもちのハムスター、多分私苦しかったんだ




気だるいなぁ、21歳になる


「あなたが幸せそうだと、僕も辛いよ」

嘘つけ、

前髪の数ミリの変化、マスカラの色を変えただけで、ピアスが新しいだけで気づいてくれたネ

大事にされていたような気はぼんやりとするんだけどな

言っても繋いでくれなかった手は最近自分から繋いでくれるようになったね


地面のシロ、黒、クロ、白、それに灰色マンホール

白を選んでぴょんぴょんあるくフザケた私とあなた、深夜


どうしても遠い次の白線、

お姫様抱っこしてその白線まで運んでくれたね

「あーあ、僕サメにたべられちゃったや」



キスをねだると「グロスが可愛いからキスためらってたの、可愛いのとれちゃうから、」

その後にキスをくれた



私三姉妹の長女だから甘えるの苦手なんだァ

見抜いたのかな、あなたは二人のときこれでも勝手ほど頭をなでて膝において抱っこしてくれて

泣いたら「ほらはなかんで」とティッシュ、

ぐずぐずしてる私はあなたの持つ匙からスープを味見した

甘やかされてるんじゃなくてこれじゃ子供扱い

心地よくて寄り掛かってしまったけど


 

窓の外を見たら煙を上に向かって吐くのが様になってるあなたがいた

つやり、ひやり、ごつい手をポッケにつっこんで 

高い身長は猫背で何故か強調されていて。


「ねぇ、一本ちょうだい」ーyes

「私のこと、すき?」ーだんまり 

「二本目、欲しいな」ーyes

「三本目」ー …体に悪いからだめだよ、冷えるから中に入ろう



私は今日もあなたの好きな銘柄の煙草の煙をくゆらす

煙草は涙が当たってすぐ湿気る

あなた好みのくるくるパーマ、ロング 

お風呂に入って煙と涙を流す


明日はちゃんと目を見て話そう、下まぶたにラメを沢山塗って泣いたふりをしてみちゃうから、ズルいねと言ってヨネ




グッピーラムネについてくるおまけのおもちゃ、出てきたのは青い星のついたプラスチックのちゃちな指輪


ほろ酔いのあなたが少しはみかみながらはめてくれたのは薬指、どっちの手?なんて聞かないでよね

私、その時その瞬間からあなたがすきになっちゃったんだキットね、タブンね。



あなたが起きてる時間にラインするとね、未読無視とか変に不安になっちゃうから、わざと午前3時にラインを送る

いい夢みてぐっすりねてね


私はあなたから既読無視された夢をみて目が覚めて、朝一番にラインをひらいたの


アーア、夢じゃなかったみたい、あーあ


 


夜暖かい布団で一緒に寝て、朝あなたはシナモントーストを焼いてくれた 

これでもかってほどシナモンとはちみつを使うのがコツだよとか言いながら 

私にはラピュタの目玉焼きパンより魅力的なの

手を繋いで、お茶を飲んで、目を覚ましながら口の周りを蜜だらけにして一緒にトーストを食べた


SEXはしなかった

せめてSEXしていたらそう割り切れたのかもしれないのにな


これじゃ只のシアワセだ



今日は布団の中で背中をツンとしてキスをねだった 

手は払いのけられちゃった、さっきは自分からキスしたくせに

いいもん、ぐっすりなあなたを置いて始発で帰っちゃうんだから




枕元にはあなたの好きな銘柄のタバコ、貰ったおもちゃの指輪、カウンセラーに毎日書くように言われた日記には赤文字で「死にたい」


ネエ、線香花火を夏の終わりに一緒にしようって約束、忘れちゃったんでしょ 

そのせいで一生私の夏は終わらないままだよ 

ずっとあの夏に生きている


そんなことを考えながら学校へ向かう

電車が来るたびに足を止めて線路を覗く


いつか、真正面から見たい



ねぇもちもちのハムスター、私

「お前はいいな鬱病で、俺も鬱病になって休みたいよ」って学校で言われたんだ

「就職も進学もできねぇだなんて甘ったれてんな」 だってサ

 

ねぇ、もちもちのハムスター 

好きな人は私に「野垂れ死ね」と言って他の女の子と夜を過ごしたんだ

私が線路の上で大柄な警察官に体当りされて石と砂で体を擦って、地面に押し付けられて拘束されてた時間のハナシ

笑けちゃうね


「確保ォ!」じゃねぇよ、

うるせぇな



いや、うるさいのは頭の中の「野垂れ死ね」の声の方かもナ




毎日使い古しの劣等感に塗れた悪夢をみる、毎日。 

朝起きて、それでもあなたがいるから 

「こんなまいにちが続けばいいのに、幸せだから」

と呟いた

「例えば365 日、今日と全く同じことの繰り返ししかない毎日でもそう思う?」


突拍子もないなァ


「うーん、あなたとならいいかも」



…ここまでが悪夢、これは存在しない会話、あなたはいない


朝起きた私のそばにはもちもちのハムスター


「ねぇもちもちのハムスター、どう思う?」

答えてくれない私の愛しい愛しいもちもちのハムスター


ODや援交したり、キャバクラへ行くときはエサを山盛りにして撫でてからにするんだ

毛づやよく健康に育ってほしいから、1000円で売られていたハムスターに1000円のおやつを与える

野菜よりやっぱりヒマワリの種が好きなのね

 


「なんで毎日泣くの」ってつぶやきから始めたツイッター、たちまち感情の掃き溜めになる





ねぇもちもちのハムスター、私、うまく生られてる気がしないんだよ




 


この記事が参加している募集

スキしてみて

文字に起こすことで精算しているような気持になります