片言日記

駅に着いて改札口を通る。小さな郊外の駅。多くの人は左の方に進む。左に行くとバスのロータリー、タクシー乗り場があって駅前の唯一のコンビニがある。


右に行くと駐輪場があってたくさんの自転車が置いてある。もう日が暮れてはっきりとどんな自転車が置いてあるのかは見えない。小さな無数の緑色のライトが光っている。朝には見えなくなってしまうような光り方だ。


あたりは暗い。通り過ぎる人の顔がちょうど見えないくらいの暗さになっている。こちらにもバス停があるのだけど本数は少ない。時刻表を見ると3分前に出ていったばかりのようだ。その小さなバス停にさっきまで待っていたはずの乗客達の気配も残っていなかった。


仕方なく歩いて帰ることにする。歩きながらさっきまで乗っていた電車の乗客を思い出す。僕の目の前に座っていたのは50代の女性だった。顔はよく見ていなかったけど、紫色のズボンに紫色の靴を履いていたのは覚えてる。そのせいなのか髪の色まで紫色だったように感じる。でも正確なところは覚えていない。


家の近くの最後のコンビニの前を通り過ぎる。そういえば昼間通った時はパトカーが止まっていた。さすがにもういない。踏切が前にあって赤く点滅している。電車が通り過ぎる。


1人の乗客が扉に寄りかかっているのが見えた。もしかしたら僕のことも向こうから見えていたかもしれない。その人は僕を見ながら今日の夕飯を何にしようとか考えていたのかもしれない。そのことについても僕は正確には知らない。

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