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気になっていたのは杉浦非水のデザインでした – 「染織図案とあかね會」丸紅ギャラリー

 アートナイトの先行展示を見たりと、六本木には何度か来ています。その時に東京メトロの六本木駅で気になったポスターがありました。総合商社大手の丸紅が新しい東京本社ビルに作った丸紅ギャラリーで着物の柄に使うデザイン画を展示しているということです。7月まで開催しているというので、まだ時間があると思っていたのですが…


 よく見ると前期と後期があって、前期は6月17日土曜日まで。作品のほとんどが入れ替わってしまうかもしれません。あまり時間がありませんでした。


 ということで、平日ではありましたが、早めのお昼の時間に東京メトロ東西線の竹橋駅に降り立ちました。

 皇居の北側、毎日新聞社と国際協力銀行の間に建つ新しい 丸紅東京本社 です。ずっと工事を続けている印象があったのですが、できていたのですね。完成は2021年5月でもう2年も経っていました。内堀通りの歩道側は工事が続いているようですが…

 玄関正面に透明のエレベーターがあり、その手前に展覧会の案内がありました。指示に従って右側にあるエスカレーターで3階へ上ります。


 この背の高い扉が 丸紅ギャラリー の入り口です。中のカウンターで入場料を支払います。現金は取り扱っておらず、クレジットカードや交通系カードが必要です。

 展覧会会場の入り口です。撮影できるのはここまでです。

 丸紅は絵画のほかに着物や帯などの染織物やその図案をコレクションしています。それらの作品をベースに新しい本社社屋に丸紅ギャラリーを作ったということです。
 タイトルにある「あかね會」は京都の丸紅商会が東京進出する際に着物の新しい図案が必要として立ち上げた染織図案研究会のことです。日本画家、洋画家、図案家、彫刻家、漆芸家といった様々なジャンルの芸術家にオリジナルのデザインを発表してもらったといいます。そして展覧会ではその図案の一部を見ることができます。

 4部構成になっていました。最初が着物などとそこに描かれたデザイン原案の組み合わせ3組。次があかね會の活動記録。第3部には図案が約20点展示されていました。その図案の間にディスプレーが設置され、6分間の映像で図案を作る過程を紹介していました。

 映像の会場を出るとそこからは写真撮影できます。床にプロジェクションマッピングで図案が入れ替わり立ち替わり映されています。
 このデザインは杉浦非水ひすいの《無題》でした。淡い桃色と萌木色、それに あずき色と黒も加わり、模様の重なりがわかるようになっています。曲線で描かれたそのデザインはなぜか記憶に残ります。実はポスターにあったこの絵が気になって、非水の作品とは知らずに展覧会にやってきたのです。会期前半の展示作品になっていて、鉛筆で名前と指示が書き加えられた原画が展示されていました。


 朝倉文夫の《五月晴》で、前半の作品です。ポスターにあったもう一つの図案《濱千鳥》も朝倉文夫の作品で、後半に展示されます。7月にもう一度ここへ来ることになりそうです。


 3階は首都高とほぼ同じ高さです。ギャラリーを出てガラス窓から車の流れを眺めていると飽きることはありません(私の場合ですが)。この時は渋滞はなく、スムーズに流れていました。

 3階にはイタリアンレストランもあります。ギャラリーから出てくるとレストランへ直行する人たちも何組かいらっしゃいました。ランチを目当てにギャラリーへ来るのも楽しみ方の一つのようです。残念ながら、私は時間が少なくなってきたので、1階へ戻ります。


 1階に降りると会社の受付があり、隣には天井までの高さを生かした大きなポスターが掲げられていました。きれいに飾られている手前の着物は実際は白で、それをスクリーンにして展示会の紹介ビデオを投影していました。

アクセス

 丸紅ギャラリーは丸紅東京本社の新しいビルにあります。最寄り駅は東京メトロ東西線の竹橋駅です。東側の改札はホームから緩やかに曲がった通路の先にありました。改札を出たらすぐ左に曲がり、さらに左の細い階段を上ってください。国際協力銀行の前に出ますので、隣の新しい丸紅のビルは、すぐそこです。



杉浦非水展

 杉浦非水については昨年2022年5月に九州へ行ったとき、福岡県立美術館で展覧会を見たことがあります。「杉浦非水 時代をひらくデザイン」展です。

 杉浦非水は三越呉服店の図案部 初代主任をつとめ、ポスターやPR誌の表紙などを手掛けました。三越以外でも図案家として活動し図案集も出しています。丸紅ギャラリーに展示されていた図案は1929年に制作されたもの。三越を退社したのが1934年ですので、三越にいながら幅広く活動していた頃の作品のようです。
 杉浦非水の展覧会は福岡県立美術館の後も巡回展として、現在は群馬県立近代美術館で開催されています。が、会期は6月18日日曜日まででした。杉浦非水の故郷、愛媛県松山市にある愛媛県美術館の所蔵品を中心に構成されているということですので、巡回が終わった後に松山へ行けば再び作品に出合えるかもしれません。


福岡県立美術館について

 福岡県立美術館の最寄り駅は福岡市地下鉄の天神駅です。徒歩10分の距離です。私が行ったときには南側の公園が工事中で全体にフェンスがかかっており、風景としてはつまらない道路を歩きました。
 この県立美術館は老朽化のため、移転して建て直すことが決まっています。移転先は大濠公園の福岡市美術館の隣です。福岡市美術館へのアクセスは福岡市地下鉄の大濠公園駅で、こちらも徒歩10分ですが、公園の中には大きな池があり、地元の人たちが遊びにやってくるゆったりとした空間です。同じ10分でも時間を感じません。
 完成予定は6年後の2029年。隈研吾さんが設計を担当するということで、どのような美術館になるのか楽しみです。


福岡市美術館

 実は福岡県立美術館の後に福岡市美術館へも展覧会を見に行きました。大濠公園の池を一周すると、美術館を遠くから眺められる場所がありました。茶色の美術館は周りの木々の緑に囲まれるように建っています。


 この時は日本のファッションブランド、ミナ・ペルホネンの「つづく」展が開催されていました。見終わって美術館を出てくるともう夕方です。地元の人たちは散歩したり、ジョギングしたり、ベンチで夕陽を見ながらくつろいだりしています。6年後、この隣に県の美術館ができれば、展覧会の はしご ができそうだと期待しています。


※ 丸紅ギャラリーは今年2023年6月初め、福岡県立美術館、福岡市美術館は昨年2022年5月に行ってみました。


(2022年6月10日)

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