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ナチュラルパフューマー #8: Mandy Aftel [NEZ 2021年6月2日]

NEZ Magazineに掲載されたNatural Perfume特集を日本語に翻訳しています。

8名のNatural Perfumerの方々へのインタビュー記事です。

最後の8人目は、Mandy Aftel。

Natural Perfumerと聞いてまず一番に名前が挙がるのが彼女であると思います。1948年生まれ、アメリカ デトロイト出身です。

教育にも力を入れていて、Natural PerfumeのWork Bookを発売しています。オンライン講座もありますが、特にそれを受講しなくてもテキストは買えます。

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By Anne-Sophie Hojlo
2021年6月2日 

「ボトルにたくさんの天然成分を混ぜても香水にはならないのです」

アメリカ人の調香師Mandy Aftelは30年間ナチュラルフレグランスを作り続けており、彼女自身のブランドであるAftelier Perfumesを設立しました。彼女は知識をシェアすることを愛する情熱的なパイオニアであり、多くの調香師が参考書として引用しているEssence and Alchemy(2001)など、香水に関するいくつかの本の著者でもあります。彼女は天然調香を教えており、カリフォルニア州バークレーの自宅にミュージアム、Aftel Archive of Curious Scentsを設立しました。このミュージアムには、世界中から集めたヴィンテージの本や原材料のコレクションが収められています。彼女がナチュラルフレグランスをどのように発見したか、どのように扱うか、そして現在のナチュラルの流行についてどう思うかを教えてくれます。

どのような経緯でナチュラルフレグランスに興味を持ったのですか。

30年ほど前に、とても不思議な形で始まりました。小説を書いて主人公を調香師にしたかったので、研究を始めたのです。私は情報源が好きで、香水に関する古い本を集め始めました。100冊以上持っています。本を好きになった後、天然香料を発見し、もっと好きになりました。結局、私は小説を書きませんでした。友人と一緒に香水のラインナップを作りましたが、長くは続かず、次に自分のブランドであるAftelierを設立しました。2001年に"Essence  and Alchemy" を出版し、今や多くの言語に翻訳されています。多くの人が、この本のおかげで天然調香を始めたと言ってくれます。

なぜ天然香料に特別な魅力を感じたのですか。

天然香料は長い間存在していて、物語にはとても魅力があり、私たちの一部でもあるのです。天然香料は、香水がスタートした場所です。とてもゴージャスで複雑で興味深い成分なのです。

どのように学んだのですか。

当時、誰も天然調香を勉強していなかったので、自分で勉強したのです!でもそれは不可能でした。私は天然のエッセンスがどのように機能するのかを理解することから始めました。それ自体が小さな香水のようなものであるため、取り扱いが非常に困難です。天然エッセンスのファセットと、それらを組み合わせる建築的な方法に非常に魅了されました。その後、私は天然エッセンスだけで調香を教える方法を開発しました。私自身もまだ勉強し続けています。新しい天然香料を手に入れるたび、私は勉強しています。学習プロセスに終わりはありません。

ナチュラルフレグランスはシンプルすぎて粗野であまり複雑でないと思っている人々にどう説明しますか。

場合によっては彼らの意見に賛成です。私もいつもそのことについて言っています。つまり、ボトルにたくさんの天然成分を混ぜても香水にはならないのです。良い香水を作るということは芸術です。クリエーションは、素材やファセット、そしてどのように組み合わせるかを理解することから生まれます。そのことに気がつかないと、やっていることがただのナチュラルの寄せ集めになってしまう可能性があります。私はアロマセラピストではなく調香師であり、ナチュラルフレグランスはアロマテラピーのブレンドではありません。アロマテラピーは私にとってはとても薬っぽい香りがします。

天然調香にはたくさんの定義があります。Aftelierでのクリエーションにはどのような天然香料を使っていますか。

私はエッセンシャルオイル、アブソリュート、コンクリート、CO2エクストラクト、天然単離香料を使用しています。バイオテクノロジーで得られる成分は使っていません。それがナチュラルと認められていることは知っていますが、おもしろいと思えません。私のフォーミュラには、植物だけと場合によっては動物に由来する成分が含まれています。自分で購入しますが、調達には非常に厳しいです。自分が最高だと思うものだけを使って売っています。原材料が美しいほど、最終製品と同様にファセットも美しくなります。それが大好きな本当の探求です。ブランドの初期の頃、私はモロッコのバラを使用していましたが、最終的にはより良いと思ったトルコのバラに変えました。これによって、すべての香りを再処方しなければならなくなりました。しかし、私は職人的なスタイルで働いているので、それができる余裕がありました。それはまた、非常に高価な原材料を使用できることを意味します。数年前、私は特定の生産者からガーデニアを購入していたのですが、私は唯一の顧客だったと思います!かなりの金額がかかりました。私の香水の1つに、オレンジブロッサムアブソリュート、アンブレットアブソリュート、アンバーグリスティンキチャー、オスマンサスアブソリュートの4つの成分を中心に作られているものがあります。それぞれの香料が1キロあたり1万ドル以上します。天然単離香料を購入するときも、由来する原材料に細心の注意を払っています。

それはどういう意味でしょうか。

元の原料によって大きく変わってくるのです!最初は、カッシア[Cinnamomum cassia] のクマリンを使っていましたが、トンカビーンのクマリンの方がはるかに優れていることがわかりました。もちろん、それもクマリンであり、似ていますが、常に元の原料の香りを反映しているため、細部に宿るのです。カッシアのものは粗く、シャープですが、トンカのものはより柔らかく、丸みがあり、パウダリーです。したがって、トンカを使用すると、より良い柔らかさが得られます。柔らかさは、クマリンを使用する理由の1つです。天然単離香料の好きなところは、複雑さが少ないときに、他の成分にファセットを追加できることです。これは、従来のフレグランスにおいて合成香料で行うのと同じです。また、多くの消費者にとって問題となっている持続力をナチュラルフレグランスに加えることもできます。オレンジフラワーやブドウのような香りのアントラニル酸メチル、よりきれいなベチバーの香りがするベチベロール、ゲラニオール、シベットのような香りのフェニル酢酸、そして野生のミントから得られ、きれいなキノコのファセットを加えることができるオクタノールなど、たくさん使用しています。私はアンブレットリドが大好きです。ナチュラルパフューマーのパレットに非常に重要なものです。なぜならアンブレットリドは、合成ムスクで多く使用されていて自然界には存在しない、きれいなホワイトムスクを思い起こさせるからです。

どのようにフォーミュラを発展させていくのでしょうか。

常に同じように進めます。それは私が教えている方法でもあります。私の香水はすべて、一般的に全く対照的な2つの香料の間の会話として始まります。私の作品は非常に構造化されており、この関係が私が伝えたい感情、経験を表現するための基礎となっています。それから、私がフォーミュラに香料を追加していくときは、最初はかなりオープンであり、最後には選択肢がほとんど残っていません。それぞれのエッセンスは、フォーミュラ内で何をするかでという点でベストでなければならないし、本当に必要とされなければなりません。つまり、私は好きであるというだけで、または面白いかもしれないという理由で香料を使用することはありません。それが私のやり方、教え方、考え方です。

フレグランスのクリエーションについて、一つの例を教えていただけませんか。


私のお気に入りのフレグランスは常に最新のものです!"Violet Ambrosia" は、ブルームと天然単離香料のアルファイオノンを使い、スミレの香りのノートを中心に置いています。このフレグランスは、日陰ではなく太陽によって暖められたスミレを呼び起こすことを目的としています。 2つの主要な香料のつながりを維持するために、バニラ、クマリン、アンブレットリドなど、バイオレットとトーンを共有する成分を使用しました。これらの香料は、スミレに干渉せずスミレが支配的な状態を保ちます。残りの部分は少しムスクっぽく、甘く、パウダリーです。ミドルノートには昔ながらの蜂蜜のようなブルームのエッセンスがたくさん入っています。私のフォーミュラとミュージアムには、20年か40年前のもので上質なワインのように熟成した、特別なエッセンスがたくさんあります。生産者が珍しい天然エッセンスをストックしていれば、私はそれを買います!また、花のエクストラクトの中で私のお気に入りである、クリーミーでスパイシーでリッチなイランイランコンクリートを使用しました。これはブルームと美しく調和しています。そして最後に、トップノートにクリーミーさとウッディさを加えるサンダルウッドCO2抽出物を見つけることができました。サンダルウッドは、トップノートがないため、ベースで失われる傾向がありますが、CO2抽出により、この効果を実現できます。

本を書き、コースを教え、ミュージアムを開きました。香水業界は非常に隠したがる環境なので、このアプローチは非常に珍しいですか。なぜそれがとても重要なのですか。

共有するのが好きで、隠すものは何もありません。私がミュージアムを開いて以来、世界中から何千人ものお客様が調香師のオルガン、本、古い地図を見に、また香料を体験するために訪れました。みなさんがこの世界に入って幸せであるのを見ると、私は幸せになります。

この分野のパイオニアとして、現在のナチュラルフレグランスの流行についてどう思いますか。

私の本が自分にとってとても大切だという手紙が毎日届きます。計画していなかったので、素敵な驚きです。私は自分が楽しいことをしただけです。最近ナチュラルが流行していますが、私が香水の世界を始めたときは全く違っていました。インターネットのおかげで、今はナチュラルパフューマーになるのがはるかに簡単になりました。私は長い間店舗で販売しておらず、ウェブサイトでのみ販売しているので、顧客との本当の関係を築くことができます。それは私が大好きなことです。顧客が私に手紙を書き、私は注文ごとに少しメモを入れます。このように働けなかったら不幸です。私の香水瓶は小さく、私が教えるクラスは少人数で、すべてが小さいです!毎日学び、楽しんでいます。今日、大企業がナチュラルフレグランスに興味を持っていますが、ナチュラルフレグランスは大手ブランドには適していないと思います。職人技を維持する必要がある製品だからです。

Aftelier Perfumes website: www.aftelier.com
Follow Mandy Aftel on Instagram: www.instagram.com/aftelierperfume/

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原文はこちら
https://mag.bynez.com/en/reports/natural-perfumers/mandy-aftel-mixing-a-bunch-of-natural-ingredients-in-a-bottle-does-not-produce-a-perfume/

(画像:NEZ THE OLFACTORY MAGAZINE)


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