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料理男子はこう育つーー⑩実はボク、料理男子を隠してるんだ
ボクは料理が好きな小学2年生。こないだ学校の運動会があったんだけど、午前中だけだったから、帰ってきてからおやつにプリンを作って、夕ごはんには前にも書いたスパイシーハンバーグとサフランライスを作ったよ。運動会の日に、自分でおやつと夕ごはんを作る小学生なんて、ほかにいるかな? ボクはそれくらい料理がだーいすきなんだ!
だけどね、ボクは学校では「料理が好き」ってことを隠してるんだ。なぜって、それはボクは食べてもらって「おいしーい!!」ってビックリしてもらって、喜んでもらうことが好きだから。ボクが作ったものを食べてもらっていないのに「すごいねー」って言われるのは、イヤなんだよね。ちゃんと食べてから、「すごいね」、「料理が上手なんだね」って褒めてもらいたいんだ。
だから、毎週の週末に出る宿題の日記にも、料理のことはぜったいに書かない! 宿題の日記には、スピードスケートの練習とか大会のことばっかり書いてるよ。担任の先生は、授業のスケート教室でボクの滑りを見てくれたことがあるから、スケートのことを日記に書くと、「スケートは体を使うだけじゃなくて頭で考えることも大事なんだね」とか、「どんどん強くなるね」って感想を書いてくれて、それがとってもうれしいんだ。
それで、ボクは料理が好きなことは担任の先生にも秘密にしているんだけど、こないだ困ったことがあって……。
夏休みに、「読書感想文」に挑戦したんだ。ボクは、大好きな「おばけのアッチ」の本について書くことは決めていた。それで、アッチの中でもどの本を選ぶかにとても悩んだ。1冊に決められなかったから、「エビフライをおいかけろ」と「アッチとドララちゃんのカレーライス」と「おもっちでおめでとう」の3冊も書いちゃった。
読書感想文を書くのに必要なことは、先生が「自分が体験したことをまぜて書くといいよ」と教えてくれていたんだけど、ボクは自分が料理が好きなこととか、ときどき料理をしていることはぜったいに書きたくないから、どうやって感想文を書いていいのか、とってもとっても悩んだ。
そしてまず、ボクがアッチを尊敬しているところを書こうと思った。
「エビフライをおいかけろ」のお話では、アッチはコックさんのなかでも「きらきらコックさん」になるためのむずかしい試験を受けるんだ。それでボクがスゴイと思ったのは、アッチが「コックさんになったからには、きらきらコックさんになるぞ」って、気持ちを決めるところ。その気持ちがとぎれないことが大事なんだってわかった。
ボクも、スピードスケートをやっているからには、「オリンピックに出るぞ」って決めている。その気持ちがとぎれちゃって、「今日は自主練に行きたくなーい」って言っちゃうときもある。そうすると、お母さんが「なおちゃんやみほちゃん(小平奈緒選手と高木美帆選手ね)は、練習したくないからって、そうやって一日中、ごろごろマンガを読んでいるのかな?」って言ってくる。うるさいお母さんだなぁーって思っちゃうけど、「あ! そうだった」ってボクは反省する。気持ちを決めることは、大切だよね!
次に選んだ「アッチとドララちゃんのカレーライス」のお話では、アッチが働いているレストランヒバリに、友達のドララちゃんが来るんだけど、ヒバリのメニューを全部注文しちゃうんだ。
アッチはなんでも作れる。おいしいものを作りたいって気持ちがあるから、たくさん研究をしているんだって。ほねほねフライとか、モヒカン・サラダとか、宝さがしグラタンとか。おばけだからちょっと変わった料理なんだけど、そういうものも、ドララちゃんは全部注文して、食べちゃうの。ボクもアッチの料理を早く食べてみたい!って思っているし、「アッチは天才だ!」って尊敬しているから、アッチみたいにたくさんの料理が作れるようになりたいんだけど、そのことは作文には書かなかった。だって、料理を作っていることは内緒だから。秘密にするってなかなか大変だ……。
最後に選んだ本は「おもっちでおめでとう!」っていうお話なんだけど、ボクが料理をするってことを隠しながら、感想を書くにはどうしたらいいのか、またまたすごく悩んで、3日くらいかかっちゃった。
アッチのお話は、どの本でも、アッチがいつも歌を歌いながら料理をしている。この本でも、おもちをつきながら「もうすぐ おしょうがつ! おいしい おしょうがつ!」って歌いながらぺったんぺったんやっている。そういうところがボクは大好き。それで、「アッチはなんで歌うんだろう?」って、ボクは考えてみた。それで「あ!」っと気がついた。
おいしさは、歌から出てくるんだ!
このひらめきを読書感想文に入れて、ようやく夏休みの宿題が完成したんだ。そうしたら、こないだ、先生から賞状をもらったよ。「自分の考えたこと 感じたことを豊かに表現しました」ってね。本当のことを隠しながら書くのは、とーっても大変だった! とりあえず、料理男子ってことがバレなかったみたいで、よかったよかった。
学校の授業で料理をするのは何年生からなんだろう? それまでボクは料理男子を隠し続けなくっちゃ(笑) これも、気持ちを決めたことだからね!
(参考文献)
角野栄子「エビフライをおいかけろ」ポプラ社
角野栄子「アッチとドララちゃんのカレーライス」ポプラ社
角野栄子「おばけのアッチ おもっちでおめでとう」ポプラ社
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