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伊藤潤二×小島秀夫が語る、SFの原点。「安部公房、楳図かずおに衝撃受けて」

共に世界的に高い評価を受けるホラー漫画家の伊藤潤二さんとゲームクリエイターの小島秀夫さん。60歳を迎えた二人が対談した。

小島:僕も伊藤さんも同い年で、昨年60になった。同世代だから、観てきたものもいろいろ共通している部分はありますよね。

伊藤:ええ、漫画、アニメ、特撮、SF、それから映画。1960年代は今も残る作品が一気に花開いた時代でもありますね。

小島:僕は中学生の頃に安部公房を知って衝撃を受けました。特に刺激を受けたのは『砂の女』です。昆虫採集のために砂丘を訪れた男が、穴の底で砂に埋もれかけた民家に閉じ込められて、そこで女と出会う話です。

映画版「砂の女」。若き日の岸田今日子の「乳首」を観ることが出来ます。それがどうした…


伊藤:ええ、私も昔読んだ記憶があります。何と言うか、物語にシュルレアリスム的な味わいがありますよね。

■安部公房の手法に驚き

小島:安部公房が書くSFって、小松左京とか平井和正のようなハードSFとは違って、文芸寄りのSF。外側はSF的な構造を用いているんだけど、本質は人間の業を描いている感じがするんです。そういうメッセージを直接的に書かれていると僕は恥ずかしくなっちゃうんだけど、公房のように時空と環境を捻じ曲げてそこに人間的なものを封じ込める手法は、新鮮な驚きがあって感動しましたね。

伊藤:私は最初に読んだ漫画が、楳図かずお先生のホラー漫画「ミイラ先生」でした。それ以来、もう怪奇漫画ばっかり読むようになりまして。特に高校時代に、朝日ソノラマから出ていた「こわい本シリーズ」は傑作揃いでした。その中でも楳図先生の「蝶の墓」は、起承転結がほとんど完璧と言ってもいいくらいの完成度を誇っていて、衝撃を受けましたね。

楳図さんの「ミイラ先生」。こんな先生、イヤですねえ。ずっと笑ってますし。笑われると余計に怖いですなあ。


小島:やっぱり楳図先生の影響は大きいですか?

伊藤:ええ。ほかにも古賀新一先生や日野日出志先生の作品が大好きで、ほとんど読んでいます。漫画以外だと、中学時代にジュニア向けのSF小説にはまりました。特に秋元文庫から出ていた眉村卓先生の「二十四時間の侵入者」は今でも大好きな作品です。

小島:わかります。挿絵がたくさん入っているのも良かった。

伊藤:そうそう!「二十四時間の侵入者」の挿絵は画家の依光隆さんが描いています。ハヤカワ文庫SFの絵はほとんど依光さんが描かれていて、自分が漫画を描く上で相当影響を受けました。当時は児童書の挿絵は、手塚治虫先生のような漫画的にデフォルメされた絵が多かったのですが、依光さんの絵はすごくリアリスティックで色気がありました。登場する少女も大人っぽくって。

■謎を残したまま終わる

小島:確かに伊藤さんが描く美少女に通じる部分を感じますね。伊藤さんは漫画を描く時に自分でも「怖いなぁ」って思いながら描いているんですか?

伊藤:いえ、自分の漫画を怖いと思ったことはほぼないですね。心霊的な恐ろしさを感じるのは、つのだじろう先生の作品。「恐怖新聞」とか「亡霊学級」とか。

小島:伊藤さんのホラー漫画は文芸寄りというか、スティーブン・キングに似た味わいがあります。最後に謎を残したまま終わっていく。あの余韻は他の漫画にはなかなかありません。

伊藤:私はほとんど行き当たりばったりなので、アイデアをストーリーに落とし込む段階でどうしても無理が生じるんです。その辻褄を合わせたり、別の要素を入れて問題を解決するみたいなことをネチネチやっていると、偶然おもしろい展開が生まれるというのが、いつものパターンです。


伊藤潤二さんの「富江」。可愛い娘が、いぢわるすると、恐怖というより快感が。。。


小島秀夫さんも「OD」で恐怖をいかに楽しめるか、に挑戦している。


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