AI 泣かせの人になれ ⑧

次の日、アサミーが教室への階段を上がっていくと、究極のニコニコ顔で歩いてくるモリミーを発見。わかり易いヤツと思いながら、
「モリミー、ポスター、どう?」
3ワード日本語は、アサミーの得意技だ。
「へっへ、喜色満面、得意満面さ。」
「性格わるっ、私が漢字苦手なの知ってて。じゃぁ、漢字書けるの?」
「漢検準一級やからね。自画自賛さ。」
「何でもいいから、早く見せて。」
「おぉ~~、やるじゃない!」
とアサミーからのお褒めの言葉、超珍しい。
「じゃあ、三神のところに行きましょう!」
と2人でポスターを見せに、職員室の三神先生のところへ向かった。
「よぅ、早いじゃないか?お二人さん。」
「いけるよ、三神先生、これ見て。」
「おっ、いいじゃないか。俺は好きだぞ、これ。」
と妙に優しい静かな褒め言葉に感じた。
「いいか、森、聞いてくれ。昨日、イベント責任者の若月先生と話したんだが、ポスターは学校外の人が見るものだから、きちんとしたプロの業者に頼んで、きちんとしたプロセスを経て、最終的にきちんと校長先生の承認をもらわないといけないということだ。」
「きちんとって何、キッチンがどうしたの?料理は得意だよ、オレ。それとも、オレはきちんとしてない人間だと?ファブリーズ浴びてでも来いと?オースチン・リードの赤いネクタイでも締めて来いと?“杓子定規“、”前例主義”、”印鑑文化”」
「ちょっと、落ち着いて、モリミー。最後の四字熟語は別として、何なのそれっ、三神先生?」
「だからさ、日本という国では、初めてのことには抵抗圧力がかかるんだよ。君たち、帰国子女にはサプライズだろうけどね。アメリカでは、What’s new? が挨拶代わりだって聞いたことあるし、人がやらないことにチャレンジすることに価値があるらしいからな。」
この時は、アサミーも味方になってくれて結構抵抗したんだけど、結局………。
「それ以来、なんていうか、頑張ろうっていう気が薄れて、日本に馴染んだという言い方もできるけど。やなんだよね、そういう自分がさぁ。これって、期待してた具体例に合ってる?」
「充分伝わったさ。ありがとう、モリミー。」
落ち着いたトーンの声でUヘイが答えた。


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