[詩] 柔らかな堆積
奔放な光の縁に
流れた涙の軌跡を見た。
背中に春風の圧力を感じ
それを頼りに僕は歩く。
会話を飾り立てることが苦手な僕は
俯瞰で眺めることでどうにかその場に留まろうとした。
湧き出た感情の綺麗な部分だけを掬い上げて
彼等の作品と交換した。
醜い残骸は小さな部屋にしまっておいて、たまにこうして見返したりする。
草木が風に煽られてザワザワと身を寄せ合っている
荒々しく響くその音色は
静寂をより確実なものにした。
雨に濡れた枯れ葉は
甘い香りを漂わす
その柔らかな堆積を踏みしめて
螺旋だった頃の記憶を思い出そうとする。
眼の奥の方で
微かに漂っている火薬の匂い
涙に濡れてもなお
消えることは無い
人としての悩みを
自然の中に見出そうとするのは不毛か。
現実の問題を
空想で埋めようとするのは不誠実か。
ならば苦しさを幸せで上書きするのも
認められるものでは無いだろう。
異質であることに価値はあるが
異質であろうとすることに意味は無い。
何者かを気取って
部屋の中で密かに作り上げた堆積は
僕を支えるほど強固ではない。
人から見たらただのゴミ山で
だからこうして隠してあったのだ。
光が屈折する。
その歪みの奥に僕の家がみえる。
もう帰らなくては。
足元の柔らかな堆積から
懐かしくて優しい、あの甘い香りがする。
僕は部屋に鍵をかけ
静かにその場を後にした。
僕は散歩と創作が好きです。そんな想いを詩にしました。
散歩はまだいいのですが,『創作活動が好き』と公言するのは,少しばかり勇気が要ります。
だからこそ,他人の創作物に惹かれるのでしょうね。
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