水庭ゆう

本やシナリオを世に出すことが夢。 長く読み継がれるような夢のある作品を描くことが基盤。…

水庭ゆう

本やシナリオを世に出すことが夢。 長く読み継がれるような夢のある作品を描くことが基盤。 作品ごとに違うカラーが出せるようなカメレオン俳優ならぬ、カメレオン作家を目指します。 お仕事のご依頼はお気軽にご相談ください。 創作大賞2024参加しています。

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はらぺこキューピッド(最終話)

↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 最終話 最後の夜 両親と一緒に家に帰った渚は、おじいちゃんとおばあちゃんの家で過ごした1ヶ月ほどのことをゆっくりと思い返していた。  目玉焼きさえ上手に作れなかった自分が今では、おにぎらずやドライカレーなどたくさんの料理を作れるようになっている。  そして、だ。  今夜渚はお父さんとお母さんと一緒に餃子を作ることになっているのだ。 家族みんなで料理をするなんて、1カ月前には誰にも想像できなかったであろう。  料理が嫌いな2人は餃子づくり

    • はらぺこキューピッド(12)

      ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第12話 渚、帰る。 あっという間に8月に入り、気づけばお盆休み近くなっていた。そんなある日、渚の両親が突然おじいちゃんとおばあちゃんの家にやって来た。  渚はびっくりして、 「2人とも急に来てどうしたの?」 と駆け寄った。 「だって渚はぜんぜん連絡くれないし、いつまでたっても帰ってこないからお母さんたちが来たのよ。」 とお母さんが不服そうに言った。日々の忙しさからか、とても疲れた顔をしている。 「でもお父さんもお母さんも仕事は?お盆は

      • はらぺこキューピッド(11)

        ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第11話 ライスグラタン 「渚ちゃん、ぼくそろそろアレが食べたいんだけど。」 キューピットがちょっと不機嫌そうに渚に話しかけてきた。 「あれって何だっけ?」 キューピッドの言っていることがさっぱり分からない渚は首をかしげた。 「アレだよ!グラタン!ライスグラタン!ぼくのいちばん好きな食べ物!」 「あぁ、そうだったね!ごめんごめん、すっかり忘れてたよ。」 「渚ちゃんしっかりしてよね。ぼくすごく楽しみにしてるんだから!」 キューピッドが顔を

        • はらぺこキューピッド(10)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第10話 なぎとなぎさのピクニック いつものようになぎが遊びに来ているが、今日はなんだか元気がない。 「なぎちゃん、なんか元気ないね。どうしたの?」 渚がたずねると、なぎがぷぅっと顔を膨らませて話し始めた。 「ママがね、遊んでばっかりいないで勉強しないさいって怒るの。なぎは遊びたいのに。」 「確かに遊ぶのは楽しいもんね。でもなぎちゃん夏休みの宿題進んでる?」 「うーん。ちょっとは、やってるよ。」 ここはお姉さんぶってみる。 「毎日、宿題

        はらぺこキューピッド(最終話)

          はらぺこキューピッド(9)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第9話 熱いアイスクリームには美味しいコーヒーを 今日は待ちに待った熱いアイスクリームを食べる日だ。  お昼ご飯はこの夏、もう何度目かのおにぎらず。 最初は海苔がうまく包めずに失敗することもあったが、回数を重ねるたびにうまくなった。  今では渚1人でもおにぎらずを作れるようになっていた。  例にもれず遊びに来ているなぎはすっかり家族の一員のように渚は思える。  いよいよまちに待ったおやつの時間だ。 「渚、今日は美味しいコーヒーの淹れ方

          はらぺこキューピッド(9)

          はらぺこキューピッド(8)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第8話 熱いアイスクリーム 蝉の鳴き声があまりにもうるさくて渚は目覚めた。 7月もそろそろ終わりに近づき、暑さも日に日に増しているようだ。 「あー。毎日暑いなぁ。アイス食べたい…。」 渚がポツリと呟くと、 「アイスか。よし、じゃあアレを作るか。」 とおじいちゃんがポンと手を打った。 「アレってなあに?」 暑さと眠気でボーっとしたまま渚は聞いた。 「熱いアイスクリームさ。ちょっと準備がいるから食べるのは明日になるが準備を手伝ってくれるかい

          はらぺこキューピッド(8)

          はらぺこキューピッド(7)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第7話 おじいちゃんのドライカレー 「今日の晩ご飯は何が食べたい?」 とおばあちゃんに聞かれて渚は、 「おじいちゃんのドライカレーが食べたい!」 これを食べに来たのだと言わんばかりに勢いよく答えた。 「いいわねぇ。じゃあおじいちゃんに頼んでみましょうね。」 おばあちゃんがそう言って台所へ向かったので渚もキューピッドもおばあちゃんのあとを追いかけた。  おじいちゃんのドライカレーが食べたいと言うと、おじいちゃんは一瞬ポカンとした表情になっ

          はらぺこキューピッド(7)

          はらぺこキューピッド(6)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第6話 なぎとなぎさ 駅からおじいちゃんの運転する車で15分。 家に着くと、にゃぁとしゃがれた声で1匹の猫が渚の足元にすり寄ってきた。 祖父母の家には2匹の猫がいる。 名前は、やきいもとじゃがいも。 3歳になる猫たちはどちらもオスで茶トラがやきいも、キジトラがじゃがいもという名前なのである。  昔から仲の悪い2匹はほとんど一緒にいるところを渚は見たことがなかった。  今渚の足元にすり寄ってきているのはやきいもで、じゃがいもの姿はやはり見

          はらぺこキューピッド(6)

          はらぺこキューピッド(5)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第5話 渚、旅に出る ガタンゴトン、ガタンゴトンと規則的な揺れが気持ちよくなり、夏休みだというのに早起きした渚は眠くなりつい眠ってしまった。  渚は停車した駅が乗換えの駅だと気づき、あわてて電車を降りる。  おじいちゃんの家は隣の県にあって、電車で2時間半ほどの道のり。 これまでに乗ってきた特急電車から普通電車に乗換えなくてはいけない。  無事に電車を乗換え、あとは目的の駅まで1時間ほど座っていればいい。 渚の隣にはキューピッドが気持ち

          はらぺこキューピッド(5)

          はらぺこキューピッド(4)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第4話 いちばん好きなご飯 明日はがんばって美味しいものを作るからとキューピッドに言った渚だが、あれから数日なぜか失敗し続けていた。  「目玉焼きすらうまく作れないなんて。わたしって本当にだめだめだなぁ」  キューピッドに美味しいご飯を作ってあげるのはやっぱり無理かもしれない。 落ち込む渚にキューピッドが声をかける。 「ねぇ、渚ちゃんのいちばん好きなご飯って何?」  突然の質問に渚は考え込んでしまった。 そう言えば私のいちばん好きなご飯

          はらぺこキューピッド(4)

          はらぺこキューピッド(3)

          ↑ 1話目はこちら(目次リンクあり) 第3話 料理ができない 終業式までの1週間、渚は午前中の授業が終わると急いで家へ帰った。  キューピッドにご飯を作ってあげるためだ。 しかし渚は家の台所に立ったはいいが、どこに何がしまってあるのかさっぱり分からないのである。  扉と言う扉、引き出しと言う引き出しをすべて開け、渚はやっとの思いで卵・プライパン・フライ返しを探し当てた。  とりあえず卵を焼いてみよう。これなら私にだってできるはず。 テフロン加工のフライパンを火にかけ、恐る恐

          はらぺこキューピッド(3)

          はらぺこキューピッド(2)

          ↑ 1話目はこちら 第2話 人間ではないナニカ いつもの曲がり角を曲がってすぐ、目の前に何者かがうつ伏せに倒れているのが見えた。  渚は周囲をきょろきょろと見渡し(助けを求めたかったのか、見られていないかを確認したのかは自分でも分からない)、おそるおそる近づいてみる とそれは、明らかに人間ではないナニカだった。  身長はだいたい40㎝ほどで服を着ている様子はない。 おまけに背中には小さくて可愛らしい真っ白な翼が生えているではないか。            「うぅー」と苦しそ

          はらぺこキューピッド(2)

          はらぺこキューピッド(1)

          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 第1話 渚の憂鬱 「あーあ、今日も給食残しちゃった。」 まるで食べるのを忘れられたかのように、少しずつお皿の端に寄せられた給食を見つめて渚は小さくため息をつく。  今日は1学期の給食最終日。 鶏肉と卵、さやいんげんの三食丼ぶり。 それに具だくさんのお味噌汁にわらびもち、いつもの牛乳(ご飯の日は嫌なんだけどな)という献立で、特に渚の苦手な食材が入っているわけではなかった。  それなのに、だ。 学校でも家でもテーブルの上に並べられた

          はらぺこキューピッド(1)

          ぼくとポップと流れ星

          ぼくの小さな友だちは流れ星にのってやってきた。 なまえは ポップ。 その日は特別に寒い日で、ぼくはベッドから窓の外を眺めていたんだ。 澄んだ空にきらりと光り流れる星が見えた。 「あ、流れ星。」 願いごとをしなくちゃと思っているうちに光は消えてしまった。 しばらくすると窓をノックする音が聞こえた。 何も見えなくてきょろきょろしていたら、 「こっちだよ。」という小さな声が聞こえた。 目の前にはぼくの手のひらぐらいの大きさのポップがいた。 あわてて窓を開けるとポップはぼくの部屋

          ぼくとポップと流れ星