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はらぺこキューピッド(8)

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第8話 熱いアイスクリーム

 蝉の鳴き声があまりにもうるさくて渚は目覚めた。
7月もそろそろ終わりに近づき、暑さも日に日に増しているようだ。
「あー。毎日暑いなぁ。アイス食べたい…。」
渚がポツリと呟くと、
「アイスか。よし、じゃあアレを作るか。」
とおじいちゃんがポンと手を打った。
「アレってなあに?」
暑さと眠気でボーっとしたまま渚は聞いた。
「熱いアイスクリームさ。ちょっと準備がいるから食べるのは明日になるが準備を手伝ってくれるかい?」
 渚はこの暑さで耳がおかしくなってしまったのかと一瞬思った。
 アイスクリームと言えば冷たいものだ。
しかしおじいちゃんは今熱いアイスクリームと言ったはず。
「熱いアイスクリームって何?」
 おそるおそる尋ねる渚に、おじいちゃんは不敵の笑みを浮かべる。
「食べてからのお楽しみだよ。」
 渚はさっぱり分からないままだがそれでもキューピッドは、
「何それ!すごく気になる!食べたい!」
と目を輝かせている。
 「じゃあ、今日は熱いアイスクリームの準備をしようか。」
とおじいちゃんがよいしょと席を立った。
 「よし、材料はそろってるな。さぁ、始めよう。」
 渚はこれから何がはじまるのか見当もつかずおろおろとしたが、目の前にはホットケーキミックスがあらわれた。
「ホットケーキ作るの?」
「そうだ。今からホットケーキを作るんだよ。」
おじいちゃんがふっふっふと笑いながらボウルを取り出した。
 ホットケーキミックスに書いてある分量通りに、卵と牛乳を混ぜ、粉を加える。
それからホットプレートでどんどんホットケーキを焼いていく。
「普通のホットケーキよりもうすーく大きめに焼くのがポイントだよ。」
 台所には甘い香りが広がり、渚は今すぐにでもこのホットケーキを食べてしまいたくなったが、ここはぐっとがまんがまん。
「おじいちゃん、このあとはどうするの?」
「冷ましたホットケーキの上に、アイスクリームをのせて包む。」
「え、包むの?うまくできるかなぁ。」
「確かにちょっとやりにくいが、ぐずぐずしているとアイスが溶けてしまうから手早くするんんだよ。」
おじいちゃんはそう言うと、ラップを広げホットケーキをおいた。
 アイスクリームディッシャーと呼ばれる、アイスクリームをすくうやつで業務用のバニラアイスをすくい取りホットケーキの上にのせた。
そこから手早くホットケーキとラップでアイスを包む。
「できたら、冷凍庫に放り込んで準備完了!」
「おぉ。おじいちゃん職人だ…。」
おじいちゃんの一連の作業に渚は見惚れていた。
が、次は渚の番だ。
 見ているのとやるのは大違いで、包むのはなかなかに難しい。
しかもアイスが溶けないうちに包んでしまわなくてはいけないので、どうしても焦ってしまう。
「こ、これすごく難しいよう。」
「確かに簡単ではないな。ははは。」
とおじいちゃんは笑って次々にアイスクリームを包んでいく。
 渚は苦戦しながらも2人で8個の熱いアイスクリームをやっと仕込み終えた。
「何とかできたね~。疲れたけど面白かったなあ。明日食べるのが楽しみ!」
 渚とキューピッドは明日が楽しみすぎて、2人してなかなか寝付けず夜更かししてしまった。

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

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