父と ハーゲンダッツを食べない

これを読む前に、『父と アイスクリームを作る』を読んでいただきたい。

ある年の正月。

父は、ぼくらに言った。
「アイスクリーム、食べるか。」
もちろん、嫌な予感しかしない。

父は、おもむろに立ち上がって、台所に行った。
しばらくして、ハーゲンダッツを4個持って来た。

弟と目配せをした。「ヤバいやつだ、きっと。」

「ほら、食べるか?」「・・・・・・」
答えない。いや、目すら合わせない。

父は、ハーゲンダッツのゆる〜いフタを開けた。一度開けられて、閉め直されたフタ。

やっぱりだ。危険だ。

母が来て言った。
「やめておきなさい。それは、お父さんが作ったやつだから。おなかこわすよ。」

ハーゲンダッツのカップに、牛乳を入れ、砂糖を加えて凍らせたアイスクリーム。

ぼくと弟は、危機を回避した。

父は無言で食べていた。
恐るべし。

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