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市内RPG 28キンタッケーチキンのカゲ

ぼくら、レベル9の戦士、勇者、魔法使い、僧侶の高校生パーティー。

エオンショッピングセンターで魔王の情報をもつ、子郡市役所環境推進課探索係のカゲを探している。

「なかなか見つからないね」魔法使いヒラが言った。

「どこかにヒントはあるはずなんだが」戦士ヤスも言った。

「早く見つけないと、あいつらに先を越されちゃうわ」僧侶カナも言った。

あいつらというのは、ぼくたちと同じ勇者登録をした同級生4人組、ライト、井上、馬場、ルミのことだ。

さっき、ラクーラクーザの前で、お互いにけん制しあって、別れたのだ。

「絶対にあいつらに負けたくない」
いつもは冷静なヒラも静かな闘志を燃やしている。

そのためには、あいつらよりも先に、カゲに接触しなくては。

カゲはいつもピンクの手掛かりを身に着けていることが多い。
ピンク、ピンク、ピンク、、、、、。

目を皿のようにしてエオンショッピングセンターを歩き回る4人の高校生。

ちょっと変な人に見えるかな。まな板やらバインダーやら、魔法の杖やら持っているし。

「コスプレ、コスプレ」僧侶のカナが、不安そうなぼくを見て、笑顔でささやいた。

コスプレと思えば、まあいいか。


さんざん、歩き回ったが、カゲらしきものは見つからなかった。

「ちょっと休憩しようぜ」戦士ヤスが根を上げた。

「今日、キンタッケーにしない」カナは、最近テレビコマーシャルをまねて言った。

「いいねーーー」魔法使いヒラも乗り気だ。

フードコートにキンタッケーチキンはある。クリスマスにもなると、行列ができる。ぼくの家でも、ここでチキンを予約している。
サーネルカンダースというおじさんがマスコットで、等身大かわからないが、でかい人形がお店の前に置いてある。店員さんはいつも笑顔で「いらっしゃいませ」と声をかけてくる。マニュアル通りの接客だが、とても心地よい。ここでアルバイトするのもいいなとも、考えたことがある。

さて、広いフードコートで食事する席を確保して、カウンターに並ぶ。昼前なだけあって、すぐに順番は回ってきた。

ぼくらは、Cセットを頼んだ。チキンバーガーとポテトとドリンク。ぼくらは、魔物を倒したお金が振り込まれているぼくのケータイから、代金を払った。もちろん、paipaiアプリで、スマート決済。

「これは必要経費だからな」戦士ヤスが言った。

「準備をします。2番の札でお待ちください」店員さんがいつもの笑顔で言った。

そのとき、ヤスがぼくをつついた。
「おい、あれ」

そこには、いつものサーネルカンダースの人形があった。

いつものようにでかい人形。いつものように白い服。いつものように白いひげ。いつものようにピンクの眼鏡、、、、。

「カゲだ」ヒラが周りを見ながら言った。

ピンクはカゲの目印だ。

何かヒントがもらえるはずだ。

しばらく待ったが、何も起こらない。誰も来ない。おかしいな。

「2番札のお客様ーー」

とうとう商品ができたようだ。ヤスとヒラが商品を受け取った。

「しばらく様子を見ましょう」カナが言った。

「とりあえず、食べようぜ」ヤスがハンバーガーを取り出しながら言った。

「おいしそう」ヒラもハンバーガーの包装紙をむいて、かぶりついた。

ぼくも同じように包装紙をむいた。

「あった!ヒントだ!」

ぼくのハンバーガーの包装紙の裏にピンクの文字が書かれていた。

『段ボール回収箱段ジョンにマオウ』

「段ジョン?」

「ダンジョン!」ぼくは、ハンバーガーを落としそうになった。


店員さんを振り返ると、ウインクをして親指を立てていた。


「次は、ダンジョンかーーー」ヤスが声を絞り出すように言った。そして、ぼくらは、ハンバーガーを急いで食べた。


前回まではこちら。


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