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北極から南へ、南へ

北極に住んでいるシロクマは、暖かい国を夢見ていた。

「南に行けば、暖かい南国というところがあって・・・。」南から戻ってきたシャチが言った。

シャチの話を聞いて、シロクマの心は昂った。
「南国には、バナナという果物があるらしい。お月様のように曲がっているけれど、とてもとても甘いそうだ。」
「南国には、スイカという野菜があるらしい。丸くて大きくて、中は鮭の切り身のように真っ赤だそうだ。」
「南国には、ビーチというものがあるらしい。やけどするほど熱くて、踏むとさくさく音がするそうだ。」

もう我慢できない。シロクマは南に向かって泳ぎ始めた。
途中、意気投合したペンギンも一緒になった。

二人は、泳いだ、泳いだ。
きつくなったときは
「バナナ、バナナ、バナナ、バナナ、バナナ、バナナ、・・・」
「スイカ、スイカ、スイカ、スイカ、スイカ、スイカ、・・・」
「ビーチ、ビーチ、ビーチ、ビーチ、ビーチ、ビーチ、・・・」

泳いで、泳いで、泳いで、泳いで、休んで、泳いで、泳いで。

とうとう、ふたりは、赤道の近くまでやってきた。
「暑い、暑い、暑い、これが南国か。」
「これが、バナナか。これがスイカか。これがビーチか。」

初めて見る南国に二人は満足した。そして、飽きるのも早かった。

ペンギンが言った。
「もっと南に行くと、どこへ行くのだろう。」
「もっと面白いものが見れるんじゃないかな。もっとおいしいものを食べられるんじゃないかな。」
「行こう。」「行こう。」

さらに、南を目指すシロクマとペンギン。
スイカのボートに乗って。

漕いで、漕いで、漕いで、漕いで、休んで、漕いで、漕いで。

「・・・寒い。ここは何というところだろう。」
「南に行けば、暖かいはずなのに。」
「北極くらい寒い・・・。」


(お礼)momoro66さん、素敵なイラストをありがとうございました。暖かいところに行きたくなりました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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