市内RPG 29野良勇者
ぼくら、レベル9.勇者、戦士、魔法使い、僧侶の高校生パーティー。
エオンショッピングセンターのキンタッケーチキンで、カゲから情報を得た。
『段ボール回収箱段ジョンに魔王』
ハンバーガーの包装紙にメッセージ。
ハンバーガーを急いで食べて、出口Dに進む。
「ここから出ると、段ボール回収箱が近いわ」
僧侶のカナが言った。
段ボール回収箱はすぐに見つかった。
「どこに、段ジョンがあるんだ?」
戦士ヤスが言った。
段ボール回収箱は、入り切れないほどの段ボールが積まれていたからだ。
「きっと、その中と思うけど」
魔法使いヒラが自信なさげに言った。
「段ボールを出さないと、わからないわ」
カナが段ボールを取り出そうとしたとき、
「お前たち、何してる?」
声をかけられた、ガラの悪そうな声で。
振り返ると、サングラスをかけた4人組がポケットに手を突っ込んで、にやにや笑っていた。
「この人たち、野良勇者だよ」
ヒラが小さい声で言った。
野良勇者、、、一度は魔王討伐のために子郡市役所で勇者登録をしたが、更新手続きをせずに、登録抹消になった勇者。目標を諦めたり手続きにだらしがなかったりした人が多いと聞いたことがある。正規勇者を目の敵にして、邪魔するヒマジンもいるらしい。
魔王の手掛かりの前で、運が悪い、、、。
サングラス1が、30cmものさしナイフを2本取り出して、構えた。どうやら、こいつが勇者らしい。
サングラス2も、バトルハンガーを2本取り出して、構えた。こっちは、モンク(拳闘士)らしい。
サングラス3は、松葉ぼうきを重そうに構えた。うーーーーん、魔法使いか。
サングラス4は、ケータイのゲームに夢中らしく、構えることもない。遊び人かな。
「やっちまえ」サングラス1が吠えた。
戦士ヤスが、サングラス3をマモノ干し竿で、強烈に突いた。サングラス3は、重そうな松葉ぼうきを持ったまま、前のめりに倒れた。
サングラス2のモンクが、右フックで殴り掛かる。ぼくは、何とかまな板籠手で、防御した。
「アツッ」ヒラは火の呪文を唱えた。火のかたまりが、サングラス2に命中した。サングラス2は、片膝をついた。
「ビリー!!」サングラス1が雷の呪文を唱えた。雷光がぼくに向かってきたが、ヤスのマモノ干し竿に引き寄せられていった。避雷針の役目を果たしたようだ。
バッチ!!黄色い閃光にヤスが包まれた。
「いてっ」ヤスも膝をつきそうになった。
「ナムー」僧侶カナの回復呪文ですぐに回復できた。
ぼくは、呪文を唱えたあとのサングラス1の右手を、勇者のカッターで切りつけた。サングラス1が素早く避けたところに、体当たりをくらわせた。
サングラス1は膝をついていたサングラス2にぶつかった。
「今だ、ヒラ!」
「ミナツメタ!」
ヒラの水の全体呪文。大きな波が現れて、サングラス1とサングラス2を飲み込み、エオンの外壁に激突させた。水が引くと、二人は倒れていた。
サングラス4は、まだケータイをいじっていた。害はなさそうだったので、ほっとくことにした。
「とりあえず、写メ」
サングラス1~3を写メすると、市役所から返信があった。
「レベルアップ、レベルアップ、レベル10!!」
ぼくらは、2桁レベルのパーティーになった。
前回まではこちら。
おひまならこちらもどうぞ。
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