ヨウ

学生。見たり聴いたり話したり読んだり書いたり描いたり欠いたり。 ヨルシカがすきです

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最近の記事

高校生活の、あとがき

3月某日。 卒業式から1週間が経ち、むずむずする鼻に桜の気配を感じる頃、クラスのなんとなく仲のいいメンバーで行ったのはカラオケボックスだった。 狭苦しい一部屋に団子のように6人詰め込まれて、ちびちびと歌い始めた。隣の隣、私と人1人挟んだ向こう側にいる彼は、カラオケが苦手と言っていたが私たちの必死の説得に根負けして来てくれた。ちらりと見るが、間に座る友達が前のめりに歌っていて彼の顔は見えなかった。 4月から遠くに行ってしまう彼。 私の行きたかった町、私の通いたかった大学で、彼

    • いつかの冬

      冬が来た、と思った。 朝、ベッドからそろそろと出した足先がフローリングに触れた温度の冷たさから。 あるいは、玄関を開けた瞬間なだれ込む澄んだ空気と漏れた白い嘆息から。 あるいは、教室、ストーブの熱で滲む冷えた指先のむず痒さから。 「わかるー。私は朝練のときの体育館の空気で思ったかな。」 1人挟んだ先の友達の言葉に、あーそれもあったかと頷く。 空がすっかり闇という名前を冠した午後六時半。さっき食べたファミチキの温度はもうすでに凍てついた空気の中に溶けてしまっていた。 冬の

      • 9月、秋月 日記

        9月某日。 月の見えるベランダに腰掛け、この文を書いている。 今日は中秋の名月らしい。 確かに、今日の月は丸く、その薄く黄味がかったまっすぐな光を頭上から煌々と照らしている。 手持ち無沙汰にTwitterをいじると、タイムラインでは満月の写真と共に「月が綺麗ですね」なんて言葉がちらほら見える。 それを私はなんだかつまらないような顔で眺めていた。 今私が腰掛けているこのベランダは、私のお気に入りの場所だ。家の角にあるため、遮蔽物のない空をぼんやりと眺めるのには丁度いい。

        • 七夕、フラッシュバック

          今日のこと。 夕方、6時過ぎ。 いつも通りの帰り道を自転車で走っていた。 左手側に保育園が見えた。いつもは気にせず通り過ぎるが、今日はやたら目を引かれた。 沢山の七夕飾りが見えたからだ。 住宅街の中にある、あまり広くはないがのんびりとした雰囲気の保育園。その園庭を色とりどりの七夕飾り達が紐に吊るされまるで屋根のように覆っていた。門に添えられた笹の葉にはこれまた沢山の色の短冊が思い思いにつる下げられている。 ふと、本当にふっ と、私の頭の中にある情景が浮かんだ。 それはど

        高校生活の、あとがき

          雨の日の話

          雨が降った。 すごく強く、長く。 ベットのすぐ近くの窓を全開にして外を眺めた。不規則な雫の音が続く。ずっと。ずっと。 外から吹いた風は薄いレースのカーテンをたなびかせ、部屋になだれ込み、最後に私の前髪を掠めた。 雨の匂いだ。 しばらく天井を眺めていた。やわく光る豆電球が天井に大きな円の模様を作っていることに気づく。 永遠はつづく。 ふと。 窓の外が一斉に光って、瞬間的にそちらを向く。 次に、大きな音が空気や地面をじんわり揺らす。 終わりかけた永遠に、ワクワクしながら

          雨の日の話

          とある朝と雨と深海の話

          雨の音が聞こえる。 サアサア、カツカツ、トントン 目覚める。 天井。 灰色。 …長い間寝ていたようだ、ムクリと起き上がる。 リビングのソファーの上。背中が痛い。 サアサアと雨の音がする。部屋は薄暗く灰色、小さな窓から流れ込む透明がそこに差し込んている。 サアサアと雨の音がする。する。する。 …これだけ。 音は遮断され、くぐもった雨の音だけが続いている。閉ざされている。深海のなかみたい、または鯨のお腹のなかみたい。 …入ったことないけど。 ここは安全で、静かな

          とある朝と雨と深海の話

          日曜日の話

          図書館に行くのがすきだ。 日曜の午後、天気がよかったり、少し暖かったりすると私の冒険心がウズウズと布団から顔を出し、私を着替えさせ、ほんのりメイクをさせ、外に出してくれる。 私の家は徒歩5分くらいのところに図書館があり、足繁くというほどではないがたまにお世話になっていた。 日曜でも静かな図書館。中に入るだけで閑散とした住宅街に響くささやかな車の音や人の声までもが消える。 図書館に行くときはいつも底の厚いスニーカーか、少しヒールのある革靴を履いていた。その靴で木製の床を進むと、

          日曜日の話

          今年のはじまり、Twitterを作りました。プロフィール欄にあるので、よしなに〜

          今年のはじまり、Twitterを作りました。プロフィール欄にあるので、よしなに〜

          退屈の話

          退屈だ。 天気の良い日。教室。4時間目。 前を見ると、地理の先生が農耕文化やらの話をしていた。 退屈だ。 高校1年生の2月。入学して約1年が経つ頃、私はいい加減授業に退屈さを感じるようになっていた。 先生の話を聞き流し、板書もそこそこに窓の外を眺めて時間をやり過ごしている。 前回の席替えで1番窓際の席になったのは幸運だった。多少ぼーっとしていたり、本を隠れて読んだりしても怒られないし、何より窓の外の風景が見られるのが、暇つぶしに最適だった。 見慣れた校庭。遥かに見

          退屈の話

          洗濯の話

          洗濯をしよう。 ある秋の朝、窓の外を見てそう思った。 今は繁忙期で、毎日遅くまで残業し帰ってくる頃には体はへとへと、晩ご飯に昨日の残り物を食べて、ネットサーフィンしているうちにソファーで寝落ちする日々だ。最近は朝に慌ててシャワーを浴びることも少なくない。当然家のことをする気力もなく、脱衣所には洗濯物が山積みになっている。 久しぶりの休日、今日やることはこれで決まりだ。 部屋着の袖をまくり、髪を軽く結わえて脱衣所にうずたかく積み上がった洗濯物たちを睨みつける。頭の中では

          洗濯の話

          ひとりごとの話

          ひとりごとはすきだ。 それは口からひとりでに溢れ出して、空気の中へ溶けてゆく。 口から魂が抜けるように。冬の夜空に白い息が上っていくように。美しいものを見た時の嘆息のように。 私はよくひとりごとのことを鼻唄と表現するが、まさしくそうだと思う。誰にも伝わらず、伝えることを目的にせず、私が私のために吐いた言葉。無意識のうちに湧き出て、ぽろりぽろりと口を伝いながらやがて飽和していく。誰の見返りも求めず緩やかに消えていくその姿に、ほんのりとした喜びがある。 自分のためだけの言葉。

          ひとりごとの話

          窓の外の話

          私は窓の外を眺めている。 秋晴れで、清々しい日だった。開け放った窓からはうっすらと冷えた空気が吹き込んでくる。その窓辺で、私は外をじっと眺めていた。 正確には、その向こうの何かを。 窓の外の空は、水色の絵の具でべったりと塗った画用紙に白い雲型のスタンプを連ねた様な、模範的な空だった。子ども部屋の壁紙に、掛け布団のシーツに、あるいは少女のスケッチブックに、何千何百回も描かれてきたであろう空。 冒険が始まりそうな。 幼い頃に読んでいた、竜の話を思い出す。勇気ある少年が竜を助

          窓の外の話

          目の端にきらめきを

          目の端にきらめきを