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【年齢のうた】トモフスキー●「歌う36歳」から続行中!リアル年齢更新ソング

先日から興味深いことがありまして!

まずは巷で話題の『不適切にもほどがある!』。宮藤官九郎が、時代性(昭和と令和)による価値観のギャップを鋭くツッコむドラマ(TBS系列)ですが、その前回(第5回/2月16日OA)でのこと。

カラオケで唄われる島津ゆたかの「ホテル」に手厳しい指摘がされるシーン。
「手紙も電話もダメって、モラハラですよね」
「モラハラ男とストーカー女の不倫ソングじゃん!」

続いて、沢田研二の「カサブランカダンディ」に対しては、
「パワハラっていうか、DVじゃん!」

このあたりの描写にウケていたのですが、それから4日後! 20日OA、こちらもTBS系の『マツコの知らない世界』はマツコとゲストのJUJUによる昭和歌謡の特集でした。

ここでまたしても登場した島津ゆたかの「ホテル」! そしてまたしても「不倫ソング」と断罪!される事態に!
JUJU「爪たてたいのに、たてないっていう」
マツコ「わかりますよ! そこの奥ゆかしさ」

(再リンク)

その次にまたまた沢田研二の、今度は「勝手にしやがれ」が!
後半、歌の主人公の男によるワンマンショーというくだりに、マツコ「ド変態の歌」。

どちらの番組もこれ以外の歌謡曲も取り上げていたのですが、そんな中でこの両者が重なった事実には非常にそそられました。

そうです、沢田研二に関しては、当【年齢のうた】では昨年のアニバーサリーライヴについて書きました。

今思うと、この前後から、というか、近年の彼の音楽性についての報道のほとんどは昭和歌謡の観点ばかりで、そこに不満があったことも自分で書こうという動機になったものです。とはいえ、今回のクドカンドラマとマツコの指摘は大いに楽しませてもらいましたよ。

そして島津ゆたかの「ホテル」! おかげで今週この歌を人生最大級に聴き返して(と言っても4回ぐらい)みました。どんな歌だったか、全然忘れてた。
うちのカミさんに至っては、ドラマのほうは数日遅れでTVerで観たので、一日の間に島津ホテルの連続攻撃を喰らった模様。

(再々リンク)

まあ昔は、不倫ソングや浮気の歌はしょっちゅう出てて、ヒットしてましたね。それをみんな喜んで聴いたり唄ったりしたものです。

でも今は全然作られないし、まあ書いても採用されないのかな。それこそ(クドカンドラマの)「はい、ダメー!」みたいに、存在そのものがNGと断罪される感じだから。
それでも時にまっとうな道からハミ出してしまう心理や行為にいくばくかでも心を寄せることで救われる魂もあったと思うのですが。時代による人々の心持の、というか、価値観の変化たるや。

しかし島津版「ホテル」のイントロから鳴ってるペペペ~ンという音色、シタールギターだろうか? おかげで曲調のわりにサイケな印象が。

シタールギター、近年では幾何学模様が使ってたね(下記は僕が書いたフジロックのライヴレポ。一昨年の解散は残念)。


クドカンは、以前何かのドラマ(名前失念)で「~させていただきます」という言い方の違和感を面白おかしくストーリーに盛り込んでいたことを聞き、お~自分と同じ見方をしているのかなこの人、と思ったものです。
彼には、グループ魂のインタビューで一度お会いしましたね。僕的にはすごく話しやすい方でした。

JUJUはリアルサウンドで原稿を書いたことがあります。ご本人にインタビューしたことはありませんが、実はその記事が出た直後にソニーミュージックに別件でお邪魔した際、たまたまエレベーターでふたりきりになったことがありまして……。驚!
それも地下から上の階に移動中の彼女を、1階から3階に行こうとする僕が停めた形になり、それでも「ああー、どうぞどうぞ!」と優しく言って、乗せてくださいました。そこでふたりになって、ちょっとドギマギな僕。JUJUさん、どうもありがとうございました(記事を書いたことは伝えられずじまい)。

などと、いちおう音楽ネタっぽいのを続けたところで、今回はトモフスキーです。

36歳時点で作られたアルバム『36』


トモフスキーは、バンドブームの頃はカステラというバンドのヴォーカルだったトモ(大木知之)によるソロ・ユニット。
カステラは当時大人気で、アルバムが全国のセールスチャートの1位になるほどだった。

ちなみに彼の双子の兄弟がTheピーズのはる(大木温之)。ふたりは1965年の12月生まれなので、現在58歳である。
トモとはる、両者の共通点としては、常人では考えつかない角度からの視点で歌を書いて唄うところ。とんでもない双子だと思う。


さて、トモは、カステラが1993年に解散したあとに、ソロ・アーティストとしての名義をトモフスキーと定めて活動を始めている。トモフスキーとしての道のりはもう30年を超えているわけだ。
彼は最初の頃はカセットテープで作品を出したり、CDをメジャー傘下のdohbからリリースしたりしていた。
初期には「うしろむきでOK!」という名曲もあった。

この頃に僕はトモに2回ほどインタビューをしている。その2度目の取材の席で、どういう話の流れだったか忘れたが、彼に「でも俺は青木くんのこと、好きだよ」と言われたのを覚えている(べつに愛の告白ではない)。トモさん、その際はありがとうございました。

もっとも、せっかくそうなったのに、以後の彼とはずっと接点がないまま現在に至っている。僕もいつしかトモフスキーの音楽と離れてしまっていた。

それが……あれは10何年か前の、宮城県でのARABAKI ROCK FEST.でのこと。この年のアラバキでは、先ほどのピーズのはるがトモフスキーのバックを務めることで、ちょっと話題になっていた記憶がある。ふたりがわりと一緒に演奏するようになった時期だったのだ。

そのトモフスキーのステージを見ていて、興味を引かれる場面があった。彼が自分の年齢を歌詞にした曲を唄ったのだ。
それが何年のアラバキだったのかよく覚えてなくて、だから歌にしていた年齢もはっきり思い出せないのだが(申し訳ない)、しかし「歌う●歳」と……おそらく40何歳だと唄っていて、その、あけすけに自分自身のことを曲にしているところが彼らしいと思ったものだ。

それからかなり経った現在、あらためて調べてみたところ、トモはずいぶん前から自分の年齢の歌を作り、唄っていたことがわかった。
そしてその「歌う●歳」という曲は、その時点での彼のリアルな年齢を入れながら唄われ続けていたのである。

流れの最初は、アルバム『36』である。

2002年、もう22年も前に出たこのアルバムは、タイトルが『36』、その1曲目がアルバムタイトルソングの「36」で、7曲目に「歌う36歳」。そして8曲目には「36カウント」という曲がある。また、それらの間には「20years」という曲もある。
36歳になった自分をテーマにしたアルバムと言っていいだろう。そう思うと、ちょっと奥田民生のソロアルバムの初期2作を彷彿とさせる。とはいえ、そこまで36歳という年齢に深く突っ込んでいるわけでもない。

それにしてもトモフスキーのアルバム『36』は全9曲で、わずか21分。アッという間だ。
このアルバムのサウンド面でのローファイ感、コラージュ感、さらにガジェット感は、80年代半ばから90年代に一般化したベッドルーム・レコーディングによるソロ・アーティストたちの流れを汲んでいる気配がある。BECKがその筆頭格だろう。

公式サイトの本人による解説では、これらの曲について触れられている。

「36」
あっとゆう間に かけぬける、超インスト。
ギターのケースを36発なぐった音に、
36種類の音を 右、左、まん中に 散らした。
ちなみに、36は ぼくの歳です。
12月には 37になるけど。

「20years」
ハタチまでの20年は長かったのに、
ハタチからの20年は ほんと あっとゆう間だ!!ってゆう曲。
それで、ブルーになるっちゃなるけど、はて、ぼくらの父や母や、
そのまた父や母たちは、どんなキモチで
このブルーな事実とつきあっていたんだろう・・・と、ふと曲にしたのだ。
前半と後半で曲調がガラリとかわるので、
ドキッと するように!!

「歌う36歳」
もう、タイトルどおりの美しく、せつなく、たのしげな3拍子曲。
サイショは アコギサウンドにこだわってたけど、2、3日したら
どうしても感動エキスが欲しくなって、ストリングスを加えた。
なので、みんなも しみじみ泣くように!!

「36'カウントバージョン」
#1が再び  登場する。デジャヴ効果!
でも今度は、ちゃんと「数」を発声してるのだ。
アルバムのクライマックス近し!


目を引くのは「歌う36歳」での「タイトルどおりの美しく、せつなく、たのしげな3拍子曲」というところ。このへんに彼の36歳観がのぞいている気がする。「せつなく」という言い方は気になるし、毎日がバラ色ってわけじゃないという歌詞のラインにその匂いがある。「20years」のように、加齢に対する意識もあったようだ。
かと言って、「歌う36歳」が特別にセンチな歌だとも思わない。それは全体に、36歳になったことのしんどさとか重みとか自覚とか意識について書かれている節がそこまではないからだ。むしろ36歳という事実をただ唄っているのに近い。
ただ、こうした事実の背景に、加齢していくことの何かが聴く人それぞれに伝わる部分もあるだろう。「トモももうそんな年齢なんだ」とか「まだそんなもんか」みたいに。

僕は前回の爆風スランプで、大人の域になっての年齢ソングは、そうたくさんはないことを書いた。

その意味で、ここでトモが36歳という年齢を唄った曲に、何か画期的なところはないだろうかと期待したのだが、そこまでのことはなかった。
しかし思えば、大人の年齢になったからといって、いちいちシリアスな、ヘヴィなことを唄うのなんて、トモらしくない。こうして実年齢を軽やかな自意識とともに唄う姿勢こそ、シンガーソングライターというか、ソロ・アーティストとしての彼のひとつの流儀であるようにも思う。

歌う36歳、38歳、39歳、41歳、42歳、46歳、49歳、50歳、52歳、53歳、54歳、57歳。そして、ご自由に!


前述の通り、「歌う36歳」はその後、年齢の数字を変えながら、ずっと唄われてきている。僕がアラバキで観たのは、これが40何歳の時だった。

ネット上で、その軌跡を拾えるだけ拾ってみた。以下の通りである。

◆「歌う36歳」(アルバム『36』 2002年12月11日発売)

◆「歌う38歳」(DVD『LIVE 041105』)

◆「歌う39歳」(DVD『不思議な六月の夜』)

◆「歌う41歳」(『LIVE 070622』)

◆「歌う42歳」(ミニアルバム『我に返るスキマを埋めろ』 2008年12月25日発売)

◆「歌う46歳」(大阪でのライヴ)

◆「歌う49歳」(ベストアルバム『BEST3』 2015年9月9日発売)

◆「歌う50歳」(東京でのライヴレポート)

◆「歌う52歳」(ライヴ2018年8月19日)

◆「歌う53歳」(ライヴ 2019年12月10日)

◆「鼻水と54歳」(ライヴ 2020年9月19日)

◆「歌う57歳」(ライヴ 2023年2月26日)

よくもここまで唄い続けているものだと感心する。きっとトモはこのまま60歳、70歳、80歳になっても、この曲を唄っていくのだろう。

また、途中で「52」という曲があることも発見した。そしてこの歌、まさかまさか、52歳になった感慨でも唄ってたりしないだろうな? と思ったものの、やはりそうではなかった。

ご自由に!とのことである。

トモ、恐るべし。


島根の実家から届いた
安来いちご「紅ほっぺ」!
ドジョウすくいのイラストに安来感。
やや酸っぱい、さっぱりめの味わいが
自分好みでした

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青木 優
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