「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」と「リレーションシップ・アナーキー」はバンド名じゃないけど、パンクロックな気がする。
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「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」と「リレーションシップ・アナーキー」はバンド名じゃないけど、パンクロックな気がする。

小島 雄一郎

ポリアモリーを知ってから色んな価値観がひっくり返された。
でも、ひっくり返った価値観で生活をしてみると「むしろ、こっちが表だったじゃないか」と思うことがよくある。

ロマンティック・ラブ・イデオロギー

リレーションシップ・アナーキー

この「2つの言葉」もそれをよく表している。
今日はそんな話。

ポリアモリーとは、お互い合意の上で複数の人と同時に恋人的な関係を築く恋愛スタイル。対義語はモノアモリー(恋人は一人という価値観)。過去のシリーズはこちら

◾️現代価値観へのアンチテーゼ

僕も最近知ったこの2つの言葉。そこで先日、こんなツイートをしてみた。

ポリアモリーについてのツイートが多い僕のフォロワーの人たちでも、その認知率は2割にも満たない。

この2つの言葉、意味こそ違えど根底には共通の思いがある。それは現代価値観へのアンチテーゼだ。

■ロミオとジュリエットを引きずる社会

「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」と検索すれば、多くの記事が見つかる。それらを僕なりに要約すると、ロマンティック・ラブ・イデオロギーとは「運命の人と出会って、結婚して、その人の子供を育てるのが正しいとする価値観」のこと。

また、イデオロギーとは政治思想や社会思想、もしくは宗教上の信条を示す言葉。つまりロマンティック・ラブ・イデオロギーは個人の価値観ではなく、集団の価値観を指している。

そのルーツは中世ヨーロッパ。貴族と庶民という分断が薄れ、ロミオとジュリエットのように「階級によって引き裂かれることのない恋愛結婚こそが正しい姿」だとする価値観が生まれた。それが庶民にまで普及して社会全体の価値観となったのがロマンティック・ラブ・イデオロギーのはじまりだと言われている。

つまり今、僕たちが正しいとしている価値観は中世ヨーロッパから引き継いだもの。お互い愛し合っているのに結婚できなかったロミオとジュリエットの恋愛結婚に対する強い憧れや、それが許されなかった社会への恨みを引きずっている。

■ロマンティック・ラブ教への入信

運命の人と①恋愛をして②結婚をして③子供を育てる。この3つをセットで捉える点もロマンティック・ラブ・イデオロギーの特徴だ。人類の長い歴史からすれば、この3つがセットとなるのは1つの形でしかないが、その時代に庶民がそれを勝ち取ったという事実によって、中世ヨーロッパでこの3つをセットとする価値観は神格化された。

価値観が神格化されると宗教のようになる。結果的に僕たちは今、そんなロマンティック・ラブ教の価値観を(入信した覚えもないのに)を強いられることになった。

その宗教を(たまたま)すんなり受け入れられた人はまだいい。しかしそんな人たちの悪気のない発言が、人を苦しめることもある。この現状を課題と捉えるのがロマンティック・ラブ・イデオロギーの本質だ。
例によってパワポにするとこうなる。

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■関係性の名前を放棄した無宗教状態

「ロマンティック・ラブ・イデオロギーという課題」に対する回答の1つ、それがリレーションシップ・アナーキーだ。

ポリアモリーの一種ともされるリレーションシップ・アナーキー。オープンリレーションシップとも言われるが、現代価値観へのアンチテーゼという意味ではリレーションシップ・アナーキーのほうがしっくりくる。

直訳すれば「関係性無政府状態」。無政府状態の「政府」とは、実際の政府よりも「他人」や「社会」と言い換えた方が理解しやすい。つまり自分と誰かの関係性を他人や社会に支配させないとする考え方だ。

ロマンティック・ラブ・イデオロギーは自由恋愛に見える一方で、恋愛結婚に対する強い憧れから生まれた故に「恋人とは××なものだ」とか「夫婦とは○○なものだ」など、関係性の理想像を押し付けたがる。

その理想像を目指すことが社会の前提となってしまった今、「恋人」や「夫婦」と言った関係性の名前を採用してしまうと、2人の関係性に目指すべき理想が勝手に設定されてしまう。そこで、社会で使われる関係性の名前を放棄しようと考えたのがリレーションシップ・アナーキーだ。

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実は僕自身もポリアモリーという表現よりも、このリレーションシップ・アナーキーの方がしっくりきている。「恋人が複数いる」というよりも、現代の「恋人」という定義に支配されたくないという方が感覚としては正しい。

僕とAさんの関係は「僕とAさんの(今の)関係」という名前以外では表現できない。「恋人」や「友人」などと表現することで何かが制限されたり、誰かからとやかく言われるくらいだったらそんな名称は必要ない。ロマンティック・ラブ教徒であることを半ば強いられているくらいなら無宗教になった方がマシだ。そんな回答がリレーションシップ・アナーキーの本質だと僕は思う。

■パンクロックが世界を変える

ロマンティック・ラブ・イデオロギーとリレーションシップ・アナーキー、一見最近のバンド名のような2つの言葉。実際はバンド名ではなかったが、現代価値観へのアンチテーゼという意味では音楽ジャンルで言うパンクロックにも近い気がする。

社会を無理に批判する必要はない。しかし社会の「あたりまえ」をそのまま受け入れるのではなく、自らの価値観で判断して、行動すること。そうして世界を変えていくのがパンクロックだと僕は思う。そういった意味では、当時の体制からロマンティック・ラブを勝ち取った中世ヨーロッパの庶民もまたパンクロックだ。

しかしあれから数百年経った今、ロマンティック・ラブもいいけどそろそろ次の価値観が世界を牽引してもいい気がする。


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小島 雄一郎

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小島 雄一郎
モヤモヤしたらパワーポイント。本業は若者研究。著書は「広告のやりかたで就活をやってみた」。プライベートでは人間関係に名前をつけないリレーションシップアナーキーやポリアモリーを。日経COMEMOのオピニオンリーダーをやっていますが、クビになる可能性もあります。自宅の1階は酒屋です。