見出し画像

父は何者だったのか〜リクルートの遺伝子より

日経新聞ではじまった連載がとても気になりました。一般的にも注目度が高そうですが、極めて個人的にも。

「リクルートが2020年の創業60年を前に「老い」との戦いに直面している」というのです。起業家精神にあふれる社風と、実際に「元リク」が社会に与えた影響と現状など、たいへん興味深いのですが、驚いたのが記事中小見出しにもなっている「定年退職した人は創業以来わずか6人」という記述です。

私の父は、創業間もないリクルートに学生バイトから入り、定年までリクルートとグループ企業に勤めていた、はず。記事中の定年退職の定義が定かではありませんが、父はわずか6人にカウントされているのでしょうか? 

本人に確かめようにも、今月1日、父は他界してしまいました。81でした。

リクルート創業者の江副浩正氏は、父より2つ年長でしたが2013年に亡くなられています。創業60年ということは、その頃20代だったメンバーはもれなく80代です。リクルートのDNAともいえる初期遺伝子を持つ者の中に、父は間違いなくいたのだと思います。ただ、その遺伝子ゆえに、皆さん起業や転職をされていったということなのでしょうか。

父は何者だったのか。この文脈でいえば、定年まで勤め上げた父は超マイノリティで、何者でもなかったかもしれません。でもそんな中、何を見て、何を考え、家族を支えてくれていたのでしょうか。いずれにしても、何も知らなかったことを痛感する今日この頃です。

江副氏について調べていたら、ここにも定年退職まで勤めた方がいらっしゃいました。

土屋洋さん。1946年大阪府豊中市生まれ。大阪大学文学部卒業。1970年日本リクルートセンター入社後、採用広告事業、デジタル通信事業、教育研修事業に従事後リクルートスタッフィング監査役、2007年リクルート定年退職。以降、2017年まで株式会社メンバーズ入社後監査役を務める。著書に『採用の実務』(日経新聞社)ほか多数。

父と同時期の、日本リクルートセンターにいらっしゃった方、年齢的には父より8つ下のようです。役員にもなられていて、定年退職されているということは、父と似たケースなのだと思われます。土屋さんのご著書、読まねばなりません。Amazonレビューがすこぶる良いです。

あるいはまず、江副氏の著書が手がかりになるかもしれません。

リクルート事件が起きた頃、私は中学生で、事の本質がまったくわかっていませんでしたし、父と事件の会話をした記憶もありません。
思えば人材紹介サービスに長年従事した父でしたが、私の直面した就職氷河期にまだ現役だった父に、就職の相談をしたこともなかったし、父子関係はずい分と距離が空いてしまっていました。父ががむしゃらに働いて家を空けている間、家と5人の子は母が守り育て、あっという間に大人になってしまいました。

当時の話を聞いてみたいと思うようになった頃には、父はアルツハイマー型認知症を発症して、あんなに働いていた頃の精彩を欠いてしまっていたのです。

今年の3月、元リクルートの藤原和博さんの、子育て関連の講演会に行った際、思い切って父のことを話してみました。自宅のあった杉並区の和田中学校で、民間人校長をなさっていた時期、その活動のことで父から名前を聞いたことがあったのです。
藤原さんは父を覚えてくださっていて、退職後も世話になったというエピソードを一つしてくださいました。どうしているかと問われて介護施設に入院していることを告げ、一緒に写真を撮っていただき、父に見せることができました。

父が何者かを知るのに、だいぶ時間を無駄にしてしまいました。

そういえば、NHKで「ファミリーヒストリー」がはじまるずっと以前、急に先祖のルーツを知りたくなり、父が生まれ育った熊本を、両親と旅行したことがあります。あの時辿った先祖はすぐ途切れてしまったのだけど、その時の記録はどこへやってしまったのか? 父の子どもの頃の記憶も聞いた筈ですが、おぼろげな記憶しかないのが悔やまれます。それがもっとも父と接した最後だったかもしれません。この先は遺品や周辺から、父の遺伝子を探り、生き方を振り返り、学べることは学び、糧にしていきたいと思います。

日経の連載はまだ続きます。

今回#1で、起業アイディアにあがっていた「相続」は、「老い」との親和性が高く、わが家でも直面中なので、期待したい事業です。#5の現社長・峰岸真澄氏が登場する「継承と進化のはざまで」では、時代の変遷を目撃できるのでしょうか。


#COMEMO #NIKKEI #リクルート #江副浩正 #父

最期まで読んでいただけただけでも嬉しいです。スキをいただいたり、サポートいただけたら、すこしでもお役に立てたり、いいこと書けたんだな、と思って、もっと書くモチベーションにつながります。 いつかお仕事であなた様や社会にご恩返しできるように、日々精進いたします。