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作ることと売ること

よつめ染布舎を創業して以来「作ることと売ること」についてずっと悩まされている。
今の方が7年前の創業当初よりもっと悩んでいると思う。
まあ当時は作ることばかり考えていて売ることまで考える余裕がなかったんだろう。

このあまりにも大きな問いについて解き明かせるとは到底思えないが、
思うところは多々あるのでツラツラと綴ってみようと思う。
こういったことに悩み奮闘しながら作っていることが伝われば幸いです。

悩みの本質は双方のバランスにある?

まず作ることと売ることを同じ人物が行うことに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれない。
例えばスタジオジブリの宮崎駿さんと鈴木敏夫さんのお二人がとても印象的なように思う。
宮崎駿さんは映画監督で映画を作る人。
鈴木敏夫さんはプロデューサーで出来た映画をどう売るか考える人。
すべてにおいてきっぱり仕事が分かれているわけではないと思うが大きく分けることができると思う。
ちなみにシン・エヴァンゲリオンの庵野秀明さんは映画監督とプロデューサーを兼任していたらしい。

僕のような小さな工房では人を沢山雇う資金もないので当然作ることも売ることも自分の頭の中で一緒に考えなければならない。一緒に考えることで非常にバランスの取れた思考ができると思うが仕事が増えてこれはこれで結構大変である。


僕にとってこの悩みの本質は作ることとと売ることのバランスにあるのではないかと思っている。
そしてそのバランスをいかに継続させて活動していくか。
言うは易し行うは難しでモノを作って売る人なら皆が抱える問題ではないだろうか。
ただ業種によってバランスの取り方はそれぞれ違うだろう。
もしかすると簡単にやってのける優秀な方もいらっしゃるだろう。
この問題はその人、そのお店、そのメーカーが作っているモノと売り方の関係によってガラガラと変化する問題だと思うので、一様に同じ性格の問題ではないと推測される。
それから「作ることから考える人」と「売ることから考える人」とでも悩みの本質が大きく変わってくるだろう。
どちらも偏り過ぎていては上手くいかない。

低紫陽花のれん2

写真:麻のれん 紫陽花


少し自己紹介

ここで一旦僕が何を作っているか簡単に紹介する。
よつめ染布舎(ヨツメソメヌノシャ)という屋号で活動しており、服やバッグ、手ぬぐい、布小物から暖簾など暮らしに使われる布の製品を作っている。
特徴としては日本の伝統的染色技法である型染(カタゾメ)や筒描き(ツツガキ)を用いてオリジナルデザインの模様が製品にふんだんに使われていること。
オリジナルの模様で布を染め、外部の職人さんに縫製してもらい出来あがった製品を様々な場所で売っている。
どのような販売方法を取っているのかはまたの機会に紹介しようと思う。
その他にもロゴマークやパッケージデザインなどのグラフィックデザインの仕事をしていたり、最近ではアート的な平面の大きな作品も作り始めた。
布の染色の方ではスタッフが育ってある程度染めれるようになってきたので非常に助かっている。
普段の僕は製品のプロダクトやデザインの仕事、あとは諸々の雑務などを行っているので染め場で作業することが稀になってきた。信頼できるスタッフがいるというのは本当に有難い。


僕は作ることがやりたくてやりたくてしょうがないので独立した。
作りたいものが沢山あり過ぎて前の職場では支障をきたしてしまった為に、色々考えた結果独立に踏み切ったのだ。
ちなみに前の職場は広島の実家の家業でお祭りの時に立てられる大幟や神社仏閣に巻かれる大きな幕などを作っている120年続く染物屋である。この仕事も好きだったのだが毎日同じ様式のものを作るのはどうも性に合わず、後は弟に任せて大分県国東市へ移住し新しい工房を立ち上げた。
ドラ息子と言われても仕方がないし実家には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいである。
いつか恩返しがしたいとは思っています。
またこのことも折に触れて綴っていきたい。


プロとアマの違い

話しを戻す。
とにかく作ることは任せてちょうだい。てな感じで「作りたいものを一生作っていたい」というのが僕の夢?これ夢と言っていいのか分からないが僕の人生の譲れないことである。
これを実行しながら家族にメシを食わせれたら言うことナシ!
特別お金持ちにならなくていいし有名にならなくてもいい。
言い換えると「作りたいものを作って一生食べていきたい」というのが正しいのかもしれない。
いわゆるものづくりのプロとして生きていくということだ。
こうなると話しはややこしい。
作るものが端からどんどん売れていくのであれば特に何も問題もないのだが、そう簡単に売れないのが現実というもので。
しかも創業当初から一昨年くらいまでは出来上がりの製品のことを考えず、思いついた模様をまず作る。
それをどう製品にするかは後で考えていた。
これをやってしまうと模様ばかりが増えてしまって製品が追いついてこない。
あとさき考えず頭の中に溜まっていた模様のアイデアを無計画に生産していたのだ。


染色という分野の難しいところ

そう、お気付きの方もいらっしゃるかもしれないが、染色やテキスタイルデザインの分野は布を染めるだけでは受注生産でない限りなかなかお金にならないのである。
しかもこの分野の仕事は製品になるまでの工程がすさまじく多く関わる人や業者の数も多いのでコストもかかる。
例えばよつめ染布舎で綿のバッグを作るとする。
ウチではまず綿の白い布を買うところからスタートであるが綿花の栽培から考えると白い布になった時点でいくつの業者を介して手元にあるのか計り知れない。
その白い布を染める前にバッグのデザインから実際の作りを考えなければならない。
粗方のデザインは僕が考える。
ただそのデザインが何センチの手持ち紐が付いてどう縫い合わせるのかを縫製工場に指示を出すことは僕にはできない。
それはパタンナーさんの仕事でありパタンナーさんは縫製指示書というものを作ってくれる。
バッグのデザインが固まれば白い布をオリジナルの模様で染めていく。
染め上がった布を縫製指示書と一緒に縫製工場に納品する。
縫製工場では裁断に始まり様々なパーツを縫い合わせ検品後製品となって返ってくる。

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写真:型染の服 サルエルパンツ 祈りの葉


製品が納品された時は本当に嬉しい。
作り手として何よりも嬉しい瞬間かもしれない。
いつまでも余韻に浸っていたいが喜んでいる暇などない。
出来上がった製品を検品し値札を付け卸先に発送したり、カメラマンに依頼して製品を撮ってもらったり、製品のプロモーションを考えたり、今度は売るための果てしない努力が待ち構えている。

正直なところ僕はこの「売る」のあれこれが満足に出来ていない。
売ることに注力する時間と体力が残されていないのが現状であり、ここに僕の悩みの種である大きな問題が横たわる。

売ってくれる人を雇えばいいではないか!
その手の専門家に相談してみたら?
全国のバイヤーが集まる展示会に出展するべき!

心の奥から誰の声なのか自分の声なのか色んな声が聞こえて来る。
分かるよ。
すごく分かる。

もうここまで来ると言い訳や御託を長ったらしく吐露しているだけに思えてきた。
そろそろここら辺で締めくくります。


暫定的解答

今のところの僕の答えは3つ。

1.プロダクトとしての品質向上。
これまで布のテキスタイルデザインの方に力を入れ過ぎていて、最終的なモノになった製品のことを満足に考えれていなかった経緯がある。プロダクトとしてもっとブラッシュアップ出来る部分はまだまだあると思うのでそこに挑戦してみる。そうすることで多少営業力がなくとも売れるものを目指す。

2.製造する品種のバランスを考える。
一つ目のプロダクトが完成すればここに注力できるので、これまで作ってきた満足に売れないもの、例えばガマグチなどの小物関係の生産を減らして作っていくものの全体のバランスを変えていく。

3.他分野の仕事とのバランスを考える
僕は自社プロダクトの他にグラフィックデザインの仕事も行っている。
この仕事は非常に根気の要る仕事だと僕は思っていて、案件を沢山抱えてしまうと自社プロダクトの方がどうしても疎かになってしまう。どちらにも支障のないバランスを考えながら遂行する必要があると考えている。

この上記3つをいかにスムーズに遂行できるか。
これはなかなか難しい。
まあ僕の気質として色々やり過ぎなところがあるので、悩みの原因はここなのかもしれない。
グラフィックデザインもやり自社プロダクトもやり最近はアート的な作品も作ったり。
どしっと腰据えて一つのことに集中すればいいのだがそれはちょっと僕には出来ない。
子供の頃から通知簿には注意散漫とばかり書かれてきた。
当時は悪いところだった落ち着きの無さが今ではその多動力?でメシが食えてるのかもしれない。
ただもうちょっと楽になりたいものだがいつになるやら。


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