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映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』がめちゃくちゃ良かったのでぜひ見て欲しい!という気持ちを勢いで文字にした

素晴らしい映画に出会うと、胸いっぱいになる。
エンドロールが終わるまでうれしいため息と一緒に余韻に浸るのだ。

『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』という映画と出会った。
現在、Netflixで配信されている。

ネタバレなどはせずに、だけどこの映画がいかに魅力的だったかを書きたい。
見た方は是非いっしょに楽しんでもらえるとうれしい。
未見の方で、ご興味ももたれた方がいたら是非、是非、是非、ご覧になっていただきたい!

『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』のあらすじ


アメリカの田舎町。成績優秀な主人公エリーは、他の生徒のレポートを代行して小遣い稼ぎをしていた。
ある日、アメフト部のポールからラブレターの代筆を頼まれるが、その相手はエリーも密かに想いを寄せる美少女アスターで……

『片割れ』を巡る話

この映画には文学(プラトンの『饗宴』、カズオイシグロの『日の名残り』、サルトル『出口なし』など)や映画(『カサブランカ』、『街の灯』、『ベルリン、天使の詩』など)の引用が多くある。
だけど、全部を知らなくても物語の中で何を伝えたいかは、演者の身体性を通じてしっかりわかる。

冒頭のアニメーションで本作は自分のもう半分、つまり『片割れ』を巡る話であることが明示される。
『片割れ』とは何なのか?それを考えながら見る映画なのだ。

青春映画であり、バディモノ

人種やセクシャルマイノリティが主軸となる映画はトーンが重たくなる。
コメディ映画で扱うにしてもかなり尖った笑いになることもある。
理解されない怒りや差別されることの哀しみがあるからだ。

しかし、本作にはそのふたつが主軸でありながらも爽やかかつ軽やかな「青春映画」として描ききっていた。
この映画にとってそれは「問題」ではなく、「当たり前のもの」なのだ。

冒頭の電力会社へ電話をかけるシーンからテンポの良いコメディとなっている。
電話するエリー、それを探すポール、その先にいるアスターもさりげなく示している。
そしてポールからの依頼を引き受けるきっかけとして、冒頭からずっとかけていた電話に戻ってくるのだ。

優等生のエリーと明らかにボンクラなアメフト部のポール、2人の凸凹感もたまらない。
この映画は「バディもの」の要素もあるのだ。
ポールはいつもエリーを追いかけている。エリーは自転車を漕ぎ、ポールは走っている。
まるで2人の成熟度を表しているかのようだった。

エリーが代筆を引き受けたところから2人の距離の縮め方。
そして、エリーとポールの足並みが次第に揃い始めることを示す卓球。

ラブレターの文面を考えるために廃墟の窓や駅舎の壁にアスターへの言葉を書く。
エリーの想いが文字の洪水となって溢れているようにも見えた。
エリーは、こんなにもアスターのことが好きなんだ。

そしてエリーとアスターのやりとりは、手紙→メール→ストリートアートと飛躍していく。この飛躍の心地よさよ。

人生はクローズアップで見ると悲劇、ロングショットで見ると?

言葉を駆使して世界を切り開くエリーと対照的な存在が、エリーの父だ。
このどことなく山崎一似の父親は「ある事情」があって家で映画ばかりを見ている。
エリーと父、2人だけの世界、そこに入ってくるポール。
あの新作ドッグを持ってくる時の中腰感や、見よう見まねで肉をこねるぎこちなさが絶妙なおかしみだった。

ポールがアスターに告白するシーン。
ここでのエリーの立ち回りも面白かった。
ちょうどポールとアスターの間の窓越しにエリーがいるのだ。
メールですべてを操ろうとするが、それを飛び越える「バカの力(褒め言葉です)」。
そこからはこの映画はどうなっていくのか、全然予想が出来なかった。

エリーとアスターが温泉に浸かるシーンが大好きだった。
まさか冒頭のアニメーションがここで活きてくるとは。
エリーとアスターの2人には『片割れ』がしっかり映り込んでいるのだ。
2人だけの世界で2人だけの言葉を交わす。
そこで流れているあの曲……。

クライマックスの教会での混沌っぷりも大好きだ。
その少し前のシーンでエリーの父がチャップリンの『街の灯』を見ていた。
まさに「人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見ると喜劇だ」を示す名シーンになっている。
特にアスターの婚約者のアイツ。「お前は本当に見たいものしか見てねぇんだな!」ってなるし、怒りを通り越して呆れてしまった。
(そこがまた笑えるし、ライブシーンでの何もしてなさや勘違いの末放水されるのも良かった)

エリーが住んでいる「駅」という場所は、出発の場所でもあり、帰着の場所でもある。
エリーは最初、学校から駅(家)に帰ってくる。
しかしラストでは駅からどこへ向かうのか。
そして、そこでポールはどうするのか。
まさかエリーがボロクソに言ってたあの映画があんな形で活かされるとは思わなかった。

この外出自粛期間中に見られて本当に良かった。
エリーたちと一緒にあの町の色んな場所に行くことができた。

また行きたいな。行くだろうな。
その時はよろしくね。

🍍🦉🐛


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