ヨクト

たちどまると かなしみと愛 暴力といのりにみちた 加害性の深まる 不条理な世界がみえて…

ヨクト

たちどまると かなしみと愛 暴力といのりにみちた 加害性の深まる 不条理な世界がみえてきます ろうそくを持ち そのひとつひとつの物語ー小さい物語 大きい物語 その緊張ーを 詩というかたちで うけとめ 書きとめていくこととしました (noteは習作手帖です)

最近の記事

『詩と思想』詩作品 2024年3月号

 『詩と思想』2024年3月号(編集:詩と思想編集委員会、発行:土曜美術社出版販売 、2024年3月1日刊行)に、「欠けた太陽が炙りつづける街の中心を覆う黑體に」にて参加させていただきました(ただし、同書規格に応じ変更を加えたバリアントの詩篇として)。  掲載のお誘い、編集・校正、掲載誌ご送付など、あらためて編集委員会等関係者皆様に心より御礼申し上げます。  同書は、以下にてお求めいただけます。 ・土曜美術社出版販売  ご質問やご感想等ありましたら、メールにてお受けいた

    • 棺をひく者がいる、彼は一歩を踏みだす度に

      棺をひく者がいる、彼は一歩を踏みだす度にひとつ の数を聲にだす、その読みあげる数に紐づく悦びは 棺を半歩だけ前へ進め、棺には荷を積む余白が半歩 分増える、彼があらたに積む荷は悦びとなり、円周 率の最後の数を言いあてるまで彼はその旅を続ける なぜ円周率なのか、私たちの人生が繰りかえし同じ 円周をなぞるからではなく、円周率には愛が隠れて いるからと彼はいう、それは残余を切りすてる方形 の世界に曲線を取りもどし、綻ぶ世界を円く縫い直 すだけではなく、内接多角形の剣の切れ味を削ぎ、

      • 『多様性が育む地域文化詩歌集――異質なものとの関係を豊かに言語化する』

         『多様性が育む地域文化詩歌集――異質なものとの関係を豊かに言語化する』(コールサック社 、2023年10月12日刊行)に、「皆伐」にて参加させていただきました。  編集・前校正・著者校正、掲載本ご送付など、あらためて関係者皆様のご支援・ご協力に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。  同書は、以下にてお求めいただけます。 ・コールサック社  なお、当面のあいだ、note公開の原詩は非公開とさせていただきますので、ご理解ください。  ご質問やご意見があり

        • 私を自発的に喪失しようという彼は、すでに

          私を自発的に喪失しようという彼は、すでに何度も 心の密室で破壊した残骸を持ち、遺體安置する、空 を突きぬける階段の一つのひな壇に、何の疵もない 青瘀色して膨らむ私を箱ごとつみ上げ、荒ぶること なく私が輪廻におちていくために、些末な紙幣と交 換に、おき去りにされる私の、閊える頭に蓋をされ 閉塞する世界に、さらにもうひとつの底荷に壓し潰 される私とは裏腹に、共同墓地には眩しい緑、石段 を下る彼らの軽やかな、泡沫の、人形供養の賑わい に、翳る古木に仮現する面相の瞼が僅かに攣縮する

        『詩と思想』詩作品 2024年3月号

          『詩と思想詩人集2023』(詩と思想編集委員会)

           『詩と思想詩人集2023』(詩と思想編集委員会/編、土曜美術社出版販売 、2023年8月31日刊行)に、「車窓に反対風景がかさなり流れていく」にて参加させていただきました。 掲載のお誘い、編集・前校正・著者校正、掲載本ご送付など、あらためて編集委員会等関係者皆様のご支援・ご協力に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。  同書は、以下にてお求めいただけます。 ・土曜美術社出版販売 ・AMAZON  なお、当面のあいだ、note公開の原詩は非公開とさせてい

          『詩と思想詩人集2023』(詩と思想編集委員会)

          私たちは、いやもう一度訂正しよう、私は

          私たちは、いやもう一度訂正しよう、私は原拠なく 生まれるものではないし、亀裂のない目蓋のうちだ とはいえ、弱さゆえに世界が暗いわけではなく、深 海に滲透する星影をすでに肌は感じているし、歩行 の始まりがいつとなるのか身體は記憶しているし、 反復する呼吸に終わりがあるとおり、或日やってく る未来との遭逢が、無垢な幸福であるのか天賦の受 難であるのか、最初に射しいる光焰が私に彫刻し、 その後何度も切り開かれる傷口が生きよと言うその 光景を、私自身が予め知っていることに驚いている

          私たちは、いやもう一度訂正しよう、私は

          翅ばたくたび舞いあがる細氷の輝光

          翅ばたくたび舞いあがる細氷の輝光 咽かえるほど詰めこまれ浮遊する 凍結した漆黑の死臭分子 釘打ちされた黑柩に横たわるものはすでになく その名が最後に呼ばれて久しく 溜めこまれる透明な寒流が 無言のまま凍洞の氷壁を削り続けている 粘りつく暗闇に 翅端に渦巻く鎖を牽連し 叫び聲もなく乱流に縺れる私たち 時おり途切れる飛翔軌道に頽れ 不在となったものの氷結した因果をたどる それは 氷河を遡上することか 砕氷とともに流れくだることか あるいは 氷塊に輪郭もなく刻まれる貌の あの滅

          翅ばたくたび舞いあがる細氷の輝光

          しかし灰は降り続く

          しかし灰は降り続く 睫毛にかかり瞬きするその奥行きのない世界に 差しだす指先の翳むこの閑かな中庭を 埋めていく 私から立ちのぼり 私を空洞にしていくそれらは なに一つ充溢していない焼尽の痕跡であり 幾重にもたなびく帳幕の向こうに あるとは思えないものの、降灰それ自身のうちに 空白となって締めだされる私の 選択肢のない事柄に係わる 希望を 語ってもよいのだろうか 灰はなお降り続く 踏む大地は私を押しかえさず 私の歩みは開傘しない錐揉なのか迷走なのか 立体座標のない中庭の まっす

          しかし灰は降り続く

          そこにはかつて香りたかい死の部屋があった

          そこにはかつて香りたかい死の部屋があった 死の香気とは? いや、かつてそして今も そのような鼻道の悦びに硬直したことは なかったかもしれないのだが あのときは終末に侵されていくひとつの確実な 臨死の倫理的な夢の中にあって 不条理に 死にゆくものたちとの一度きりだが 決して離れることのできない心と心の結びつきを 微粒子に還元される消滅の円環運動の内に 彼らの名前と私の名前が縺れ捻れ 苦痛というほどではない痛みの 香を掌にとり 指にまき 全身を縛り 解ける肉体がつんと 消え、馥り

          そこにはかつて香りたかい死の部屋があった

          殷く融ける空と地に屹立する

          殷く融ける空と地に屹立する 槍の穂先に貫かれ 確かに彼は両眼をひらき 世界とつながったまま息絶えていたが 鋒端から軽く飛びたつ蜻蛉の貌が 彼のものであったことも真実であり その胴の縊れに結ばれた絲の端を握る児の目が 浮きでた六角の多眼であったことは疑いなく 私が彼の名をよぶとき 雫が滴り 月の反照を円く映し 指極星を指さす彼の翅が殷い空を震わせ 彼女の 胸に抱かれる児の結ぶ拳に にぎられる 世界 は 炎舞する千切絵 大地に尖角をみせる墓標に繋鎖される彼の 刻は折畳まれ 飛翔よ

          殷く融ける空と地に屹立する

          鎖鋸が伐る老樹の膝が折れ

          鎖鋸が伐る老樹の膝が折れ 脇を支えるものたちが次次に両掌を突き 嗚咽とともに吐きだす白く細い指 肋骨の浮きでる混凝土の瘦地に散亂し 自身の躯を顎に挟むものたちの黑い列に取りこまれ 迷霧にかすむ垤の鋭利な立體迷宮へ攫われていく 中心を欠く螺管迷路は 不規則に顫動する触角が手繰りよせる渦動 重力を無効化し内壁を旋回し 憶えられない数多の曲角を直進し 時の退く食餌安置の暗房に投棄される 反撃しない私たちの指の異様なしずけさ 横倒しになり時針の停まった振子箱の隅で 廃頽していく意識

          鎖鋸が伐る老樹の膝が折れ

          私を凝視する彼らの視線を反らし

          私を凝視する彼らの視線を反らし 瞬きを忘れ干乾びる角膜に落書された 微小な記号が斜めに浮きあがり 私の椅子の上で吊られて下がる断線した灯球が 苦しげに揺れる地下室 網目となった五壁に嵌められた標本棚に 陳列される陳腐な眼球たちが何度も視線を投擲し 元に名づけられたものは今どこに在るのか 無限につづく左右に半開の扉から流れこむ 浮かぶたび異なる私の貌に 細部を欠く表情に刻まれる存在の傷痍に あげていない偽腕が冷淡な泥漿の空虚をつかみ 二つの廻廊奥部へ引き裂く濁流に 破綻を隠匿

          私を凝視する彼らの視線を反らし

          隅隅まで破壊される世界にのこるあなたは

          隅隅まで破壊される世界にのこるあなたは この都市をツクル 上空を分割する騒騒しいメッシュから ぶら下がる印刷機のノズルから いよいよあなたもこれからツクラレル この潔癖な手術台であなたは印刷さレル あなたが受けついだ脆弱な身體は剥ぎとられ 軽い心はどこかへ飛んでいき 意識はすでに外にも内にもない ここにあるのはバリ取り鋏と修正液 舞踏会用の虚貌は在庫切れらしい あなたが指差した目録の煌びやかな宣材の 一頁しかない設計書を映す大画面が 無菌の猫道を尻尾をたて大鳴きして歩いてくる

          隅隅まで破壊される世界にのこるあなたは

          『詩と思想』詩作品 2023年3月号

           『詩と思想』2023年3月号(編集:詩と思想編集委員会、発行:土曜美術社出版販売 、2023年3月1日刊行)に、「崩れた天井を蓋う黑布の隙間から射す闇の」にて参加させていただきました。  掲載のお誘い、編集・校正、掲載誌ご送付など、あらためて編集委員会等関係者皆様に心より御礼申し上げます。  同書は、以下にてお求めいただけます。 ・土曜美術社出版販売    なお、当面のあいだ、note公開の原詩(「3枚のタブロ」シリーズⅠ~Ⅲ)は非公開とさせていただきますので、ご理解く

          『詩と思想』詩作品 2023年3月号

          車窓に反対風景がかさなり流れていく

          車窓に反対風景がかさなり流れていく 破綻のない創造物としてあらわれる眼前世界の 過ぎさる空の青釉が垂れつたう吊輪を握り あいまいな水脈深部にしずむ玻璃の矢印 退色する景色に反射する隣に立つものたちの 二重写しの暗部が突きだすものは何か 隠蔽される海栗の衝動 触れる前から疼く毒針 矢印に沿い並んでいるのに何かが麻痺し 線路の繼目に横揺れする車体 記憶に残らないわずかな時の境目で ノイズに攪乱されたちまち復元される幻像 この車輛はほんとうに走っているのか 天気雨が遮光窓を叩

          車窓に反対風景がかさなり流れていく

          私が水を遣るとき彼も水を遣る

          私が水を遣るとき彼も水を遣る 彼はいつも同じ姿勢で如雨露を傾ける 砕けた鏡と苦土蛭石の庭園に二色の虹が乱れる ここには何の種が埋められているのだろう 長椅子の両端に座る二人は同じ壁をみている 三枚の摺硝子が交わる立体窓のその先を 動かない半身とぬり潰された眼でみつめる 窓のあの汚れはいつ消えるだろう 隅にあるアクリル張りの艇庫で彼は 不可能瓶に帆船を組みたてる 腕より長い銀嘴をさし入れ天井を貫く帆柱をたて この強い風はどこから吹いてくるのか 帆布もないまま嵐に揉まれ弧島

          私が水を遣るとき彼も水を遣る