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ライターに勧めたい文章術「以外」の本 7冊

はじめに

文章術に関する本は、たくさんある。それらを読んで実践すれば、文章はうまくなるかもしれない。

だが、たとえばnoteに記事を公開して、Twitterで「書きました」と発信しても、フォロワーが5人しかいなかったら、ほとんど読まれない。公開して20PVで終わったらもったいない。せっかく書いたのなら、「書いて終わり」ではなく、「ひとりでも多くの人に読んでもらえる工夫」についても考えてみてほしい。

そのとき必要なのは、文章術ではなく、むしろマーケティングの考え方ではないだろうか。ぼくは「ライターだから、上手に書ければそれでいい。書くこと以外の知識やスキルは知らなくてもいい」とは決して思わない。様々な知識にふれ、「もしこの考え方をライターの仕事に応用するとしたら?」という観点を持ちながら、仕事をしてきた。そのように総合的に攻めていくことが、「代替不可能なライター」を目指していくうえでも効果的だと思う。

そのとき、ふと思った。

「ライターにおすすめの文章術に関する本」の記事はよく見かけるけど、「ライターにおすすめの文章術以外の本」の記事は見たことがない!

ということで、これまで自分が読んできたなかで、「ライターとしての仕事の進め方や考え方に役立った(かもしれない)」と思われる本を、いくつか紹介したい。

『ドリルを売るには穴を売れ』

ぼくがソフトバンクのビジネスメディアで副編集長をしていた頃、「洋太もマーケティングを学ぶといい。これからの時代の必須スキルだ」と、ぼくをソフトバンクに誘ってくれた元上司が言ってくれた。その方が勧めてくれたのが、この本だった。

「イタリアンレストランの経営で地域のライバル店に勝つには?」という具体的な物語をもとにマーケティングの基礎を学べる、素晴らしい本だった。高校の教科書になればいいのに、と思ったくらい、本当にわかりやすい。

・自分のライターとしての強みや差別化ポイントは何か?
・この記事のターゲットは誰か?
・どのような戦略でこの記事を拡散させるか?

そのような意識が、この本を読んでより高まった。ライターはマーケティング感覚を持つといい。基本を知っているだけで、様々な面で応用が効くようになる。

『ハウ・トゥ・アートシンキング』

「Webライターが単価を高めるためのアドバイス(完全版)」でも紹介した本だ。2019年12月に発売されたこの本を紹介するにあたっては、以下の文章を読んでみてほしい。ぼくが2016年に、当時のブログに書いたものだ。

「地震前と地震後」の反響から学ぶ、マネされない記事の作り方

2014年の話だが、飼っているネコの写真を撮っていた直後に、大きな地震があった。表情が一変して、テーブルの下で怯えるネコ。一瞬の間に起きた変化をTwitterに投稿したところ、数日で2万5000リツイートされる反響となった。
Yahoo! ニュースで取り上げられ、グノシーやハム速など各種メディアでもこぞって紹介され、さらには英語と中国語に翻訳され、うちのネコは海を越えた。100万人以上の目にふれることになったが、何も知らない当事者たちは、せめてものご褒美にあげた少し高い缶詰めを嬉しそうに食べていた。

かなりのメディアの取り上げられたが、きちんと取材をして記事にしたメディアはひとつもなかった。まあ、当たり前のことだが。

でもぼくが言いたいのは、取材しなくても、記事が生まれてしまう、ということだ。それも、ひとつのネタに対して、いくつもの記事が生まれ、100万人以上が知ることになる。これって、少し変じゃないか。

確かに、この話を記事にしたら、ウケるかもしれない。サイトがたくさん閲覧されるかもしれない。でも、取材もしない、現場も訪れない、そんな書き手の代替可能な記事には、創造性のかけらもない。

これがもし、「飼い主の中村さんに伺ってみました」なんて記事を書く人がいたら、アホな人だなと思いつつも、まだ好感が持てる。

ぼくは、こんなしょうもない記事に溢れる時代だからこそ、「実際にやってみる」「現場に足を運ぶ」ことの大切さを、自らの行動を通して伝えていきたい。

取材しても、必ずしも、おもしろい記事にはならないかもしれない。おもしろいかどうかは、書き手の力量にもよるし、そもそもインタビューした相手がおもしろくなかったらどうしようもない。

それでも、「確実にウケるネタ」をコピペするだけの記事よりは、よっぽど崇高なことだし、世の中に何かを生み出している。ぼくは現場に足を運ぶ。実際に人に会って話を聞く。そのとき、たった一言でもいいから、「これだ!」という言葉が本人の口から出たら、ぼくの勝ちだと思っている。取材してよかった、と感じるのである。

おもしろい・おもしろくないよりも、代替不可能な記事を書いていく。アクセス数よりも大切なことは、たったひとりの人間でもいいから、書いたことが、どれだけ深く刺さるか、である。100人が笑うコピペ記事よりも、1人の心の奥底に刺さるオリジナル記事を書く。それが、このサイトの趣旨である。

そんな想いに共感してくれる、針のようなコラムニストを募集している。しかし、誰も現れなくとも、編集長は孤軍奮闘するから大丈夫である。書くのが好きなのだ。(2016年3月9日)

ぼくは会社員の頃から、今と変わらないことを思っていた。「代替不可能なライターになる」ことを意識してきた。だからこそ、のちに『ハウ・トゥ・アートシンキング』を読んだとき、「自分のやってきたことは間違っていなかった」と確信して、嬉しくなった。きっとためになるはずだ。

『影響力の武器』

この分厚い本は読むのに時間はかかるものの、目から鱗の人間心理を数多く学べる名著である。昨年、入院中に病院内のスタバで一生懸命読んでいたのを覚えている。

たとえば、こんなエピソードが紹介されている。

予約したままやって来ない客の問題で悩んでいたあるレストランは、客の予約時に「変更がありましたらご連絡ください」と言っていたのを、「変更がありましたらご連絡いただけますか?」と尋ね、答えを待つようにしただけで、店に現れない予約客の割合が30%→10%に減ったそうだ。相手に「はい」と言わせるだけで、結果が変わる。「コミットメント」の威力を示す好例だった。

本の副題は「なぜ、人は動かされるのか」

「文章で人を動かしたい」と考えているライターなら、読んで損はないだろう。「文章術」とは異なるアプローチで、人の行動を変えられるかもしれない。マーケティングやPRにおいて大いに役立つ知識が得られる。

『サードドア』

「目標を達成するためのリアルで泥臭い過程を描いた本」としては名著だと思うし、たくさんのヒントが詰まっている。

自分の足で動いたことのある人なら、きっと共感できる部分が多いはずだし、他人のエピソードを自分事として捉えられる人にとっては、価値ある一冊になるだろう。しかし誰かがレビューにも書いていたとおり、「サードドアを開けたことのない者にはわからない」 かもしれない。

目標に向かって行動した経験のある人にとっては「尋常ではなくおもしろい本」であり、目立った行動をしてこなかった人にとっては「よく理解できない本」であることが、真っ二つに割れるAmazonのレビュー評価から伺える。自分を試すつもりで読んでみてもいいかも。

しかしいずれにせよ、行動を起こすことの大切さを認識できるはずだ。行動は奇跡を起こす。本当に、ぼくもそう思う。

『日本の「中国人」社会』

今や、高知県の人口よりも多くの中国人が、この日本に住んでいるらしい。

そんな、日本で暮らす中国人たちの社会のリアルを追いかけた本の内容もメチャクチャ面白いのだけど、この内容自体はもちろん「書くこと」とは関係ない。

しかし、ライターなら気付くはずだ。この著者の尋常ではない取材姿勢に。

うまく言えないけれど、著者が実際に会って取材した中国人ひとりひとりの存在が感じられるような気がする本だった。著者の取材活動に密着させてもらってひとりひとりのお話を聞かせていただいているような、そんな視点で読めて、興味深かった。・・・(Amazonレビューより)

うわ、ここまで聞くか。ここまでするか、と思わずにはいられず、ぼくはすっかり中島さんのファンになってしまった。インタビューに携わる人なら、何かしら感化されるのではないかと思う。

『リーダーシップの旅〜見えないものを見る〜』

この本はぼくのバイブルなので、「書くことと本当に関係ないじゃないか!」と言われることも承知であえて紹介する。

リーダーシップ研究の大御所2人の対談。書くことと関係ない。しかし、ぼくの生き方や価値観は、この本に書かれていることに大きな影響を受けていて、結果として文章に反映されている。ぼくの行動力の「源泉」とも言えるかもしれない。

他の人が読んだときに、どんな影響を受けるかはわからない。が、興味があれば試しに読んでみてほしい。ぼくはこれからも何度も読むと思う。

社長になろうと思って社長になった人はいても、リーダーになろうと思ってリーダーになった人はいない。リーダーは自らの行動の中で、結果としてリーダーになる。はじめからフォロワーがいるわけではなく、「結果としてリーダーになる」プロセスにおいて、フォロワーが現れる。リーダーシップは、本を読んで修得するものでも、だれかから教わるものでもない。それは私たち一人一人が、自分の生き方の中に発見するものだ。リーダーシップはだれの前にも広がっている。何かを見たいという気持ちがあれば、可能性は無限に膨らむ。自らが選択し行動することで、人は結果としてリーダーと呼ばれるのだ。(Amazonの概要説明より)

『具体と抽象』

「たとえ話のうまい人とは「具体→抽象→具体という往復運動による翻訳」に長けている人のことをいいます」

具体と抽象を自在に操れるかどうか。ライターにとっては「ひとつのネタを、求められる抽象レベルに応じて書き分けられるか」ということ。単価を上げるうえでは必須の能力だと思う。

また、具体と抽象は「すぐ役に立つもの」と「すぐ役に立たないもの」に置き換えられるかもしれない。具体的なスキルはすぐ役に立つ。でもルールが変わったときに応用が効かない。一方で抽象的な知識には汎用性がある

今まで無意識だったことが言語化される快感を味わえた。人と話が噛み合わないときも、わりかし「抽象と具体」の問題が大きいのかもなと思った。具体と抽象を自在に往復できる人は、多分話もうまいし文章もわかりやすい。書くうえでも、コンサルするうえでも役立ちそう。

終わりに

あくまでぼくが読んできた本の中からの選書なので、他にもっと適した本はたくさんあると思う。逆に、おすすめの本があれば、ぜひ教えていただきたい。

まだ他にも紹介したい本があるような気がするので、思い出したら追加していこう。

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