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人間の才能 生み出すことと生きること

滋賀県立美術館で会期期間1/22-3/27で行われている展覧会に行ってきました。
アール・ブリュットを扱った展覧会です。
アール・ブリュットはデビュッフェが定義した「美術教育を受けていない芸術作品」のことを指します。この展示はアール・ブリュットと「人がつくること(Making)」を対峙しながらアートとはなんだと問いかけるように起承転結とブースが区切られてまとめられています。

’起’では、アール・ブリュットのブリュットはフランス語の「生(なま)の」という意味です。しかしアール・ブリュットを英語圏ではアウトサイダーアートと紹介され、意味合いの違いを紹介。
またアール・ブリュットをCOMME des GARÇONSがクリエイターとしてアール・ブリュットの雑誌を取り上げていたことを紹介し世間はどのようにとらえてきたかを解説しています。

藤岡祐機:細い紙を一本ずつハサミで極細に紙を切ることで紙がカールさせたもの。

’承’では、日本のアール・ブリュットの作家を紹介。海外の美術館に所蔵された作家から滋賀在住の作家まで、作家の並々たるエネルギーを感じずにはいられない圧力のある展示ブース。評価や依頼されることも関係なしに制作し続ける作家たちは日々生み出して生きていることが窺えます。

鵜飼結一朗:妖怪や恐竜、骸骨などいろんなキャラクターが重なっていっぱい描かれている。
数メートルにも連なる画面の中で所々に同じモチーフが集まっているところはあります。
もしかすると作家はそこを描いているときはそのモチーフのことを強く思っていたのかもしれないと思うと、作家の意識の中がみれたような感じがました。

’転’ではポーランド人作家アルトゥル・ジミェフスキが目の見えない人に絵を描いてもらうプロジェクト映像や、京都亀岡にある知的障害者の入所施設みずのきで行った絵画教室で制作した作品が展示されています。美術教育を受けていない人というアール・ブリュットの定義に収まりきれない創造を紹介しています。

古久保憲満:世界の街をモチーフにして独自の街を創り上げていく。
街の騒音が聞こえてきそうなほどに賑やかな画面になっている。

’結’では人類学者が言う、人にとってつくることとは素材やその場と対話しながらその都度変化し、作っていくことを指していると説明がありました。タイトルにある「人の才能 生み出すことは生きること」とは育てるように生み出していくことが生きることに繋がっているという。独自の手法でそれぞれ生み出されていく創造物は人が生きてきた証を見ることで、生きることの本質に触れた展覧会です。

このキュレーションは館長の#保坂健二朗 さんがされたものです。生きること、生活、社会とアートの関わりあり方を意識し問いかける展覧会はさすがだなと思いました。

出品作家
井村ももか、鵜飼結一朗、岡﨑莉望、小笹逸男、上土橋勇樹、喜舍場盛也、古久保憲満、小松和子、澤井玲衣子、澤田真一、アルトゥル・ジミェフスキ、冨山健二、中原浩大、福村惣太夫、藤岡祐機、山崎孝、吉川敏明

企画展
人間の才能 生みだすことと生きること
会期   2022年1月22日(土)〜3月27日(日)
開館時間 9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日  毎週月曜日。ただし月曜日が祝日の場合は開館し、翌日火曜日が休館。
観覧料  一般   1,300円(1,100円)
     高・大生 900円(700円)
     小・中生 700円(500円) 
                   ※( )内は20名以上の団体料金  
                   ※ 身体障害者手帳等をお持ちの方は無料



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