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アスリートへ。喫煙による悪影響

 喫煙には様々なデメリットがあり、日々身体を酷使するアスリートの場合、その悪影響は当然一般の方よりも大きくなります。

 SNSの普及に伴い「喫煙をしているアスリート」がショート動画等で拡散されているのを時折みかけますが、「あの有名選手が吸っているんだから自分も大丈夫」なんて考えに至るのは非常に浅はかです。

 まず率直に結論を述べますと、喫煙は百害あって一利なしです!

 加えて育成年代のアスリートの場合、未成熟でこれから成長しようとしている内臓・神経・筋骨格系は、喫煙による有害物質から成人よりも多大なダメージを受けることになります。

 今回は喫煙のデメリットの中でも、より競技力に直結すると考えられるものをご紹介させて頂きます。

①腱が脆くなる

 様々なメカニズムにより、喫煙をすることで全身の血流が悪くなります。血液は栄養や酸素を運搬するため、組織修復に不可欠です。
 また、腱は筋と比較して血流が少ない組織です。アスリートは日頃から腱を酷使して、常に微細損傷と修復を繰り返していますが、血流が低下して修復が間に合わなくなり徐々に腱が脆くなると、腱炎や肉離れを発症するリスクが高くなります。

※「肉離れ」という言葉を聞くと「筋肉自体が引きち切れる」というイメージを持っているかもしれません。しかし、実際は筋肉が腱へ移り変わる場所で切れます。なので肉離れの発症にも腱の強度というのは深く関わってきます。

②瞬発力の低下

 持久的なパフォーマンスや呼吸機能への悪影響は周知の事実ですが、喫煙により【10秒平均パワー】も低下するとされています。間違いなく筋力や瞬発力に悪影響と言えるでしょう。
筋力やパワーを発揮するにあたり、脳や神経の興奮レベルは大きな要素を占めています。
 ニコチンには脳や神経の興奮作用があり、継続的に喫煙をしていると、ニコチンなしでは神経が興奮しにくい体になるため、筋力やパワーが発揮しにくくなります。

③免疫力の低下

 実は競技レベルの高いアスリートは風邪をひきやすく、上気道炎の発症リスクは隆上長距離の選手で一般人の約5倍と言われています。
 喫煙は気道を直接傷つけたり、全身の血流低下を引き起こすことで免疫力を低下させます。激しい練習を日々行なっているアスリートは、喫煙をしない方が賢明でしょう。

④リカバリーへの悪影響

 激しい競技活動では、筋肉や腱に少なからず微細損傷が起こっています。先ほども述べましたが、喫煙は損傷の修復を遅らせるため、特にシーズン中などは絶対に避けた方がいいでしょう。
 また、抗酸化作用を持つビタミンCがニコチンの代謝に消費されてしまうため、疲労の回復が遅くなります。

⑤キズの治りが遅くなる

 喫煙は急性炎症を慢性炎症へ移行させる危険因子です。リンパ管内の自動収縮を阻害することがその理由で、創傷治癒が遅れるリスクが増すと言われています。
 また、肉離れや捻挫といったケガも、皮膚表面にできる傷と同様に体内で出血が起こっています。当然、これらのケガの治癒も遅くなるでしょう。

 いかがでしょうか。
 アスリートの身体は一般の方以上に繊細で脆くなっています。
 タバコはアスリートもそうでない方も吸うべきではありませんが、どうしても吸いたいのであれば引退後に吸うことをお勧め致します。

文献
・https://www.jascs.jp/scientific_conference/14-2019/doc/yomiDr_20191009.pdf
・改定第2版 間接機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション−下肢

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