私の愛する街、博多ぶらぶら 第1回目
私は四国の松山市で生まれ育ちました。
それから紆余曲折ありながら、現在は福岡で暮らしています。
移住当初、私は手持ちカバン一つと財布には僅かの現金しかありませんでした。福岡はそんなでたらめな私を優しく迎い入れてくれました。
それは今より十数年前のことでした。
移住して間もなく、福岡に来て一番はじめにした行動は自転車を購入することでした。当時住んでいた近所の自転車屋さんでリサイクルの自転車を8000円で購入して、すべてがはじまりました。
私は自転車を購入したその日に当初から予定していた計画を実行に移しました。それは博多のラーメンを食べ歩くという計画でした。
実は私は大のラーメン好きです。
待ちに待ったこの計画、思いめぐらせるだけでワクワクし、口の中に豚骨の風味が広がるようでした。
私はいてもたってもいられずさっそく「空海」とそう名付けた自転車で走りだしました。(お大師さまのお名前をおかりするという、なんとも罰当たりな当時の私でした。)
***
私は先月末よりのGWを利用し、当時のことを懐かしみながら再び街を散歩してみました。本日読んでくださった皆様が共に街を歩いているような気分になっていただけたら嬉しく思います。
それでは早速ご案内しましょう、私の住む素晴らしい街、福岡へようこそ!
博多とんこつラーメンめぐり
まず私が目指したのは長浜ラーメン発祥のお店でした。
私が生まれ故郷で一番馴染み深かった豚骨ラーメンが長浜ラーメン系のお店でした。
福岡のラーメン店を調べているとどうやらそのルーツとなるお店が、長浜という地にあるということがわかり、私ははじめにそのお店を目指して自転車を漕ぎだしたのです。
はじめての地に迷いながらも相棒の空海は無事に目的地へと私を運んでくれました。
「元祖長浜屋」です。
その日は平日の午前中でしたが外にある食券機の前には行列ができていました。私の生まれ故郷ではそもそもラーメン屋さんに行列ができることはないのでこの時点で私の興奮は高まりました。
入店後、その独特の雰囲気に私は気圧されます。
「麵の硬さわ!?」
独特のイントネーション、博多のラーメン店に不慣れであった当時の私、
「ふ、ふ、ふつう、で、お願いしますっ」
そんな感じでカミカミながらもその意思を伝えることができました。
(2分後)
「どうぞ」(早い)
私はその提供のあまりの速さに衝撃を受けます。
それもその筈、オープンキッチン式の厨房内をよく観察してみると、お客さんが座るころにはすでに麺を茹ではじめているのです。
そもそもラーメンしかメニューのない食券式のお店なので、あとは麺の硬さだけが選択肢であり、そうなるのは当然でした。
そんなに広いとは言えない店内は物凄い早さでお客さんが入れ替わっていきます。博多ラーメンのデビューに衝撃を受ける私、こんな経験は正直はじめてでした。
いえ、実際には一度だけ経験がありました、これははじめて吉野家の牛丼店に入った時の感覚でした。そんな風に稀有な体験に感銘を受けながら、私は次のチャンジをしなければいけませんでした。
それは本場の替え玉を注文することでした。
というもの、そもそものこの替え玉というシステムが生まれたのがこのお店だからです。
もう少し正確に言うともともとの「長浜屋」創業のオーナーが、すぐ近くの鮮魚市場のすぐ脇で屋台をはじめたのが最初なのだそうです。
当時はお客さんのそのほとんどが鮮魚市場関係者であり慌ただしい合間にすぐに食べられる屋台の形が愛されていたようなのです。
ある日、あるお客さんがこう言ったそうです。
「大将、麺だけくれんね?」
そう言われた大将は、
「よかばい」
そう言いながらさっと茹でた麺をそのお客さんの器へと直接入れてあげたそうです。これが今に伝わる、博多の替え玉のルーツなのだそうです。
私は気忙しく働く店員さんにその意思を伝えるためにキョロキョロしました。他のお客さんは慣れた感じで次々替え玉を注文しているのですが、私はその波に乗ることができず、あきらめかけた時、たまたま目が合った店員さんがこう言ってくださいました。
「替え玉ね?」
私は嬉しくてつい前のめりに意気込んでしまい。
「カッた麺をおねがいしますっ」(嗚呼、また噛んでしまった!)
そんな風にタドタドしく替え玉をお願いしました。
はじめての替え玉、スムーズにオーダーできず少し失敗してしまったのに心は晴れやかでした。
そんな気持ちを嚙み締める間もなく一分ほどで替え玉が器に入れられました。(早い)
入店時間はどのくらいだったでしょうか、15分くらいだったように思います。
これが私の博多ラーメンめぐりの第一日目でした。
一風堂と一蘭と
博多ラーメンは今や世界へとその翼を大きく広げています。
その代表的なお店といえば一風堂や一蘭が有名ではないでしょうか。
私も当時はその名前だけは聞き及んでいたもののあまり詳しくはわかっていませんでした。ここからがそんな博多ラーメンニワカの私にとっての博多ラーメンめぐりの第二日目です。
まず私は当時住んでいた場所の目と鼻の先に「一蘭」の創業のお店があることに驚きました。お店のことを調べてそのことに気づいたとき、すでに私は財布だけ持って家を出ていました。
15分後、お店に到着、そもそも一蘭のあの独特のシステムさえもはじめてだった私。当時は創業店のみの創業時のままの一蘭ラーメンが提供されていたためそちらを注文し、ソワソワしながら待ちました。
「元祖長浜屋」で衝撃の博多ラーメンデビューを飾っていた私。
はじめは慣れない一蘭スタイルに緊張しましたがその落ち着いた雰囲気に次第に心地よくなりました。
そしていざ提供されたラーメンを頂くと、その上品な味に素直に舌鼓を打つことができました。濃厚な豚骨の風味を準備していた私の口内は少し残念そうでしたが普通に美味しかったです。
博多ラーメンの代名詞を体験し気分を良くした私、次の日には次の目的のお店「一風堂」を訪れていました。
一風堂は近隣に沢山お店があります、そんな中で私が訪れたのは博多一風堂総本店(当時の旧名)でした。
こちらのお店がその名の通り、記念すべき創業第一号店です。
私はラーメン屋さんを訪れる際は必ずピークタイムを外します。
重ねて小雨が降っていたこの日、それでもお店の前には備え付けの長椅子に座って入店を待つお客さんが幾人かいました。
私はその最後の列に並ぼうとしたその刹那、運命の出会いをしました。
中から店員さんが小雨の中外まで出てきて、気持ちの良い応対をしてくださいました。私はラーメン屋さんでこれほど高レベルの接客を受けたのは正直はじめてでした。
私は若い時分、高級な部類に入る旅館で最高レベルの接客応対を常としている仲居さんたちと共に働いた経験を持ちます。
その仲居さんたちとなんら遜色のない接客を提供している店員さんがこちらのお店には当時いらっしゃったのです。
その後私は博多一風堂総本店の常連となりました。
当時の博多の一風堂はスタンプカード制を採用しており、来店すると少しずつスタンプが貯まっていきました。
そちらのスタンプは貯まると様々な特典が受けられ、次のスタンプカードは色が変わってアップグレードしていく仕組みでした。
そして最後はスタンプカードではなくブラックカードになります。
正直ブラックカードまで行くには相当の来店数がないと到達しません。
私は二度、ブラックカードに達するまでこちらのお店にお世話になりました。
当時の大名本店では、創業当時のままの白丸を食べることができ、その店内の心地よさに虜になった私は足繫く通うこととなったのでした。
これが私の博多ラーメンめぐりの第二日目と第三日目でした。
グルメの街で有名でも意外なソウルフード
ここまで幾つか博多ラーメンのお話を書きました。
もうすっかり舌は豚骨風味になったことと思います、その上でそれらをぶち壊すことをこれから書かねばなりません。
それは福岡に住んでの一番の驚きは、美味しいものが盛りだくさんであるこの街のソウルフードは実はうどんであったことです。
私は四国出身であることからも、讃岐系のコシのあるうどんが基本であり、一定の歯ごたえのある麵が普通だと思っていました。でもその常識は福岡のうどんを食べたことによってひっくり返ります。
ある日のことです、博多ラーメンを一通り堪能した私が、何気なく入ったうどんのチェーン店、そこで柔らかーい麺のうどんをいただきました。
はじめわたしはチェーン店のうどん(ウ〇ストうどん)だから仕方ないと、そんなとても失礼な感想を抱きつつ、何やらえも言われぬシンパシーをそのうどんから感じたのです。
その後、福岡のうどんは基本的に二度湯で方式であったりで、麺は柔らかーいのがふつうであることを知りました。
そうして私はいつしか福岡のトゥルントゥルンのやわ麺のうどんが大好きになってしまい、当時住んでいた歩いて5分の近所のウエ〇トうどんさんには150回くらいお世話になりました。
すっかり博多のうどんに馴染んだ私、自宅で乾麵から茹でる際も一旦茹で上がった後、今一度茹でなおし、麵をさらに柔らかくしてから食べるといった手間を惜しまなくなった程です。
ここまで散々ラーメンの口内にしておいて!とお怒りになるのも無理はありません。でもこれは揺るぎない事実なのです。
もし読んでおられる方が福岡を訪れる際には一度福岡のうどんを体験してみてください。
あとがき
私の現在暮らしている街、愛すべき博多のお話はいかがだったでしょうか。
今回は主にラーメンの話でしたが、私の博多の街ぶらり旅はこれからも続きます。
ぜひ次のお話もご覧いただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
GW中に公開予定が、こんなにも公開が遅れてしまいました・・。
執筆後記
この度こちらの記事が、note公式マガジン「#ご当地グルメ 記事まとめ」へと参加する幸運をえました。
たくさんの皆様のご愛読のおかげです、本当にありがとうございます。
「博多ぶらぶら」は全部で4回となります。
是非そちらも覗いてみてください。
著者プロフィール
私、ナスノの簡単な自己紹介となります。
惹かれたら是非ご覧ください。
いつも本当にありがとう。 これからも書くね。