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アメジストの魚。

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アメジストの魚のまとめです。 宜しければプロローグからどうぞ。
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#恋愛

アメジストの魚。6-2

アメジストの魚。6-2

―恋は盲目。―
茅尋は私が思っているよりもあっさりとその言葉を肯定した。自分から言った言葉なのに、肯定されたことに対して居場所のない不快感が熱を帯びる。

「ねぇ、茅尋。」

駄目、君だけは。
もう狡い私を捉えてしまったんだから、君だけはちゃんと私を見て。視て。お願い。

「一緒に、」
「嫌だよ。」
茅尋が言葉を遮る。
寄せては返す波の音が僅かな沈黙を作った。

「…まだ何も言ってないじゃん。」

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アメジストの魚2-5

アメジストの魚2-5

喫茶店を出て、商店街を抜けた先にある海の見える公園に着く。この街の唯一のシンボルだが、天候の影響のせいか人は少ない。僕らは自販機で飲み物を買ってからベンチに腰掛けた。

「今まで何してたの?」
先に沈黙を破ったのは僕だった。

「彼のところで一緒に暮らしてたよ。茅尋だって知ってるでしょ。」

「街を出てからずっと?」

「うん、つい最近まで一緒に暮らしてたよ。今は1人だけど。」

「なら、その傷だ

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