LASHで変わった中年男性のバスタイム

 LASH(ラッシュ)を初めに知ったのは多分、ショッピングモール内の店舗だったと思う。何やら水の入った大きなボールが置いてあって、その周りで若い男女のカップルが店員と話をしている。何を売っているのかもよくわかっていなかったけれど、自分に縁のないものであることだけはわかった。
 そのうち、LGBTという言葉が使われ出したころ、LGBTフレンドリー企業と大々的に表明し、東京レインボープライドでも名前を聞くようになった。その企業名とショッピングモールの体験が結びついたのは、それから少し後だったと思う。
 東京に住んでからは、新宿に行く機会が増えた。他の駅と比べても構造が複雑な新宿駅だけれども、だからこそ周囲を探検して歩くことも多かった。
 そんな中で、中央東口からすぐのところにあるLASH新宿店に行ってみた。特にその店に行こうと思っていたのではなく、通りすがりに店があって、「LASH」という言葉だけは知っていたから入ってみることにした。なんとなく石けんを売っているイメージだけはあったが、今ひとつ何を扱っているかわかっていなかった。
 ただ「LGBTフレンドリー」の表明が、男女カップルや女性だけではなく、男性一人でも受け入れてもらえるのではないかという気持ちにさせてくれた。結果的には、その感覚は間違っていなかった。
 店舗に入ると、店員さんが声をかけてくれた。新宿店は日本でもトップの品揃えがあり、様々な商品を試すことができる。一つひとつの商品を実際に試しながら、商品の使い方や特徴、香りや成分の違いを教えてくれた。
 説明を聞いているうちにわかったのは、LASHはお風呂時間を彩る商品を中心に、とても多くの種類の商品を扱っているということだった。
 洗顔やフェイスマスク、化粧水といった顔のケアに関わる商品。ボディソープやシャワーオイルといった身体のケアに関わる商品。バスボムやバブルバーといった入浴剤。ヘアトリートメントやシャンプーといった髪のケアに関わる商品。それに香水やスパまである。そのどれもが、新宿店で体験することができる。
 そのうち何点かを購入し家で使ってみると、まさに劇的に生活が変わったのだ。
 試供品でもらったスカルプトリートメント「現実頭皮」は、期待以上の効果をもたらしてくれた。そのネーミングが「現実逃避」にかけられていることに、この文章を書いているときに気がついた。
 乾いた状態の髪と頭皮に塗ったあと、しばらくそのままにしておく。その後に髪を洗う。そうすると、洗い上がりの髪質がとても柔らかく、指通りもいいのだ。そのものも、ほのかに香る柑橘系とペパーミントの香りが気分をあげてくれる。
 シャンプーバー、つまり固形のシャンプーは「紫ショック」「ソークアンドフロート」「ハニーアイウォッシュドマイヘアー」の三種類を使ってみた。
 最初に通販で買ったのが「紫ショック」。アマゾンで検索して出てきたのがこれだった。さっぱりした香りで、気分をすっきりさせることができた。驚いたのが泡立ち。固形のシャンプーを使うのが初めてだったけれど、これまで使ったどの液体シャンプーよりも泡立ちも泡切れもいいので、気持ちよく使うことができた。
 その後に実店舗で選んだのが「ソークアンドフロート」と「ハニーアイウォッシュドマイヘアー」の二つ。「紫ショック」で気に入ったのでシャンプーバーを購入したかったのだが、今度は癒やされるような甘さのある香りにしたかった。散々いろいろな香りを試したあと、選んだのがこの二つだった。
 「ソークアンドフロート」は上品な香りで、風呂場が高級サロンになったかのように感じられる。本当は高級サロンなんて行ったことはないけれど、ラグジュアリーな気分にさせてくれることは確かだ。
 「ハニーアイウォッシュドマイヘアー」は人気商品なのも頷ける安定の癒やし効果。これでもかという深い甘さの蜂蜜の香りが一面に広がる。それが、洗い上がりの香りはほどよく香るほどに収まっている。辛い夜も、起きたくない朝も、この香りなら励ましてくれる気がする。
 シャワースクラブは「マンマ」「ソルティロック」の二つを購入。ボディソープとして使っている。シャワースクラブには細かいソルトが入っていて、肌をつるつるにしてくれる。お店で試しただけでも、はっきりと肌がなめらかになった。
 「マンマ」はバニラとローズウッドの甘い香りが特徴。細かいソルトの感触を楽しみながら、気持ちも癒やされていく。とろけるような香りにずっと包まれていたくなる。クレイも配合されているので、肌触りもなめらかで心地よい。
 「ソルティロック」はさっぱりした香りと少し粗めのシーソルトで、肌を心地よく刺激してくれる。季節の変わりめや少し汗ばむ日、じめじめした天気のときには気持ちを洗い流してくれる。
 その日の気分によって使い分けているのが、シャワージェル。これはボディソープと洗顔として使用。これまでに「ヨッグノッグ」「みつばちマーチ」「ナナ」「収穫祭」を購入。驚くのが、それぞれの個性。使う前は、香りが違うだけだと思っていたけれど、実際にはとろみや触感、肌に乗せた感じも違う。
 「ヨッグノッグ」は冬限定にふさわしく、寒さの中に大人の甘さをもたらしてくれるお気に入りの一品。ほろ苦く焦がしたカラメルソースを思わせる香りは、気分を落ち着かせてくれる。
 「みつばちマーチ」はまさに蜂蜜を身体に塗っているような贅沢な触感。美の化身クレオパトラになったかのような、なめらかな肌を手に入れることができる。
 「ナナ」はまるでプリンを肌に塗っているような香りと触感。自分がスイーツの中につかっているような、至福のひとときがそこにある。ぷにぷにした触感を肌の上で遊ばせながら、少しずつ泡立てていくのが楽しい。
 「収穫祭」はオリーブオイルをたっぷり使用した、さっぱりした使用感のシャワージェル。ほのかに柑橘系の混ざったさわやかな香りとなめらかな使用感で、日常に落ち着きを取り戻してくれる。配合されたオリーブオイルはイスラエルとパレスチナの農民たちが力を合わせて作ったというのも粋。
 髪と身体を洗った後に使うシャワーオイルとして「フェアリーキャンディ」を購入。これは固形なんだけれども、洗い終わった身体の上をすべらせると、すっと溶けて液状になる。そして、そのままローションとして使うことができる。
 朝のシャワー後にボディローションを使おうと思うと、どうしてもベタつきが気になってしまう。けれども、これは使用後にシャワーで洗い流すから、ベタつかない。それなのに、肌がもっちりしてハリが出る。
 さらにこの「フェアリーキャンディ」の魅力は甘さを凝縮したキャンディのような香り。一瞬でお菓子の国に迷いこんだように錯覚してしまう。この香りで辛い朝もいっぺんに目覚めてしまう。
 風呂上がりに使うボディローションは「チャリティポッド」を購入。固形のタイプなんだけれども、これもまた肌の上をすべらせて使う。
 かつて、ホテルに置かれていたボディバーをどう使って良いのかわからず、せっかくの香りを楽しめないまま終えてしまっていた。このボディローションも同じような使い方なんだけれども、まずは手であたためる。すると、表面が溶けてローションとして使うことができる。固形のローションで肌をなでながら使うことで、肌に適度な刺激を与えることができる。
 購入した「チャリティポッド」はカカオバター、オリーブオイル、モリンガオイル、アロエエキスといったスーパーフード満載の健康的な商品。香りもイランイランやローズウッドなどの健康的な香りで、リビングや寝室に置いておくだけでもその香りに癒やされる。またその名の通り、その売り上げの全額がチャリティとして寄付に使われるという。
 LASHの製品はどれも新鮮で、ハンドメイドで作られている。石けんに「新鮮」と使うのも珍しいけれども、新鮮な原材料を使うことをポリシーとしている。まさに食品と同じくらいに鮮度と手作りにこだわっているのだ。店頭でも、数ある固形の商品の中から気に入ったものを選ばせてもらった。一つひとつ個性があって、丁寧に作られていることがわかる。
 LASHの公式HPやインスタグラムで印象的だったのは、様々な人が登場することだ。例えば、大柄で毛深い男性が商品を使う様子がイメージとして掲載されている。このことをとてもすばらしいと思った。よく見ると、いろいろな肌、体型、年齢、性別の人がモデルとして起用されている。
 当然なようだけれども、いい香りや肌にやさしい商品を使いたいのは、痩せ型で若い女性だけではない。オーガニックで自然にも優しい商品は、どのような人にとっても魅力的なものである。けれども、広告モデルが偏っていると、どうしても利用するのに抵抗がある。特に中高年や男性にとってはハードルが高くなってしまいがちだ。
 だからこそ、このさりげない広告への配慮は十分に効果を持つものだと思う。まだまだ多くのスキンケア用品やバス用品の広告はモデルが偏っているように思う。中年独身男性だって潤いたいし、香りに癒やされたい。未だに「男の~」とか「男らしい~」なんてものに限定した商品しか扱えないのは、ちょっと寂しい気がする。
 その他にも、LASHは様々なメッセージを表に裏に持っている。フェアトレードの商品を積極的に扱ったり、化粧品のための動物実験に反対を表明したりもしている。使用した容器を回収する取り組みもしているし、郵送の場合には包装を使わないようになっている。
 これまでも様々な企業の社会的貢献が注目をあびてきた。けれども、それは企業のPRにとどまることが少なくない。そんな中でLASHは、企業理念と社会貢献、商品の魅力がちゃんと結びついている。商品の製作や広告の背後にある思いやりや配慮が、商品の魅力につながっている。
 そんなLASHの魅力によって、僕のバスタイムは激変した。毎日過ごす時間なのに、これまではバスタイムを大事にしてこなかったなと思う。
 もし、なんとなくドラッグストアで見かけた商品を使っている人や、バスタイムにお金をかけるなんてばからしいと思っている人ほど、使ってみてほしいと思う。
 僕だって少し前まではそんな一人だった。けれど、LASHの店員さんに背中を押されて使ってみたら、毎日の生活がずっとうるおったものになった。もし興味があるのなら、店員さんに話しかけてみればいい。もしその勇気がなければ、うろうろしていれば話しかけてくれるだろう。商品を一つ買う過程でも、たくさんの体験をさせてくれるはずだ。
 まだまだ試していない商品はたくさんあるし、試していない香りもたくさんある。ちょっとずつ、新しい扉を開いていきたい。


サポートしていただければ嬉しいです!