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息子の聴覚過敏とトマティスメソッド②

(①からだいぶ経ちましたが、続きです)

息子がトマティスメソッドの聴覚トレーニングを受けて、いきなり変わったのが話し方だ。

息子は主語がよくわからない話や、時系列がゴチャゴチャな話をすることが多かったのだが、トレーニング開始後すぐに「いつどこで、SがVした」と英文法の教科書に出てきそうな話をするようになったのだ。

また、「あのねー、あれがねー、それでねー」と、バナナマン・日村さんがする幼少期の貴乃花のものまねに似た話し方だったのが、接続語や「てにをは」を明確にした話し方に変わった。

すごい。これはすごいよ。小4ぐらいだった話し方が、やっと中2になった感じだ(それでも実年齢よりは劣るけれど)。

あと、周囲がうるさいときには、意識的に「聞かない」という選択ができるようになったようだった。これまでは「うるさい!」とストレスの原因になっていた音声を、完璧にスルーできるようになった。反対に、先生の話などの大切なことはしっかりと聞けるようになっている。

これについてN先生は、「『聴く』と『聞く』の違いがわかってきたんですね」とおっしゃっていた。大事な話は能動的に耳を傾けて「聴く」。それ以外の雑音は「聞き」流す。この二つのコントロールが、聴覚過敏の緩和におけるポイントなんだそうだ。

さらに、息子の言葉に対する感覚というか感度も変わった。もともと言語能力が低い子なのだけれど、ニュースなどで流れてくる言葉に「これ、どういう意味?」とか「これってこういう意味で言ってるんだよね?」などと聞いてくるようになった。

そして一番変わったのは、表情じゃないかと思う。すべての障害者への失礼を承知で言いますが、息子は障害者特有の「ニヤニヤ顔」をすることが多かった。特に楽しいことがあるわけじゃないけれど、いつもニヤニヤしているというアレです。

正直言って、私は息子のその顔が嫌いだった。でも、トレーニング開始後にはそれが一切なくなった。親バカを承知で言えば、今はわりと凛々しい顔になっていると思う。

このことをN先生に伝えたところ、先生も「あのニヤニヤがなくなったのはよかったですよね」と頷いていた。

「でもね、あのニヤニヤも、彼なりの処世術だったと思うんですよ」

先生が言うには、人の話をうまく聞けなかった息子は、「話はよくわからないけれど、とりあえずニコニコしておけば、その場を凌げるだろう」という感覚を知らず知らずに身につけ、それがニヤニヤ顔になっていたのだろう……とのことだった。

「ニヤニヤ顔がなくなったのは、そんなことをしなくても、ちゃんとコミュニケーションができるようになった証拠です。彼はよくがんばりました。トレーニングだけでなく、トレーニング前の人生においてもね」

先生にこう言われて、うっかり泣きそうになった。そうですね。これまで息子は自分なりによくがんばってきたのだ。それを誰かに認められることはなかったけれど(親である私もなかなか認めてあげられなかったけれど)、自力でここまでやってきたことは立派なことだよな、と。

……と、ここまで長々と書いたのは、お子さんやご自分のあれやこれやで悩んでいる人のために、「一度試してみては?」と堂々と言える方法を一つ、お伝えしたかったからです。

トレーニングが大切なことはもちろんだけど、自分のつらさを「それは確かにつらい。よくがんばった」と言ってもらえることは、人が生きるうえでとても大切なことだと思うので。

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