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小説 『長い坂』

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私小説。
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記事一覧

小説 『長い坂』 第九話

 キッチンのガス台に薬罐をかけて湯を沸かした。白いマグカップにインスタントコーヒーの粉を…

森田義貴
1か月前
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小説 『長い坂』 第八話

 平成のヒットソングをイヤホンで聴いていた。宇多田ヒカル、安室奈美恵、Mr.Children、槇原…

森田義貴
2か月前
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小説 『長い坂』 第七話

 35歳になった自分を想像してみる。きっとこんな感じだ…。  目が覚めた。スマートフォンに…

森田義貴
4か月前
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小説 『長い坂』 第六話

 川べりに桜が咲いていた。花粉症で目が痒く、鼻は詰まり、頭がぼおっとしていた。仕事帰りに…

森田義貴
5か月前
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小説 『長い坂』 第五話

 愛とか恋とかそういうものが、人生で一番愛したあの人が、その愛が、受け取られることもなく…

森田義貴
6か月前
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小説 『長い坂』 第四話

 ジェンダー平等なんてクソだ、ぼくを孤独から救ってくれやしない。  ポリティカル・コレク…

森田義貴
6か月前
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小説 『長い坂』 第三話

 日本の戦争についての本を読んだ。ビジネス書や自己啓発本は、30代に入ってから読まなくなっていた。意味がないと気付いたからだ。それらの本は200ページを使ってたった一言、悩んでないで元気を出せ、とそう言っていた。うんざりだった。悩むなというのは、心を消せというのと同じことだった。だからきっとビジネスマンは禅が好きなのだろう。ぼくは馬鹿だから悩んでしまうが、利口で高級取りのビジネスマンは全く自分のやっていることに疑いを持たないのだろう。ぼくの給料は彼らの半分以下で、側にいてくれ

小説 『長い坂』 第二話

「いまよりゃマシだろう」  ザ50回転ズはそう歌った。きっと将来は今よりマシになる、ぼくも…

森田義貴
8か月前
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小説 『長い坂』 第一話

 浪漫革命の音楽が流れる。イヤフォンの中でも思い出は今日も元気だ。額の汗を拭って、駅のホ…

森田義貴
8か月前
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