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2021年4月、中前結花、べっくやちひろ、吉玉サキの3人は「架空の旅」をテーマにしたマガジン『…
人生でいちばん最初の旅行はいつだろう、と記憶をさかのぼると、あるひとつのシーンが浮かんで…
「思ったよりむき出しなんだね」 それが、生まれて初めてパンダを目の当たりにした私の第一声…
年下のひとたちと飲むことになった。 会社を辞めてからは、とんとそういうことがなかったから…
シンガーソングライター 寺尾紗穂さんの歌う『クストフ』という曲がある。 僕らは旅に出たん…
4年ぶりに会った甥は、ずいぶんと高い位置に顔があった。 今の甥が身長185㎝であることは姉か…
<第1話のお話はこちら> <第2話のお話はこちら> 木綿子は自分のくちびるが、ほんの小さく震えているのがわかった。 けれど相手は岡野だ。恐れや焦りのようなものはまるでない。 ただ、少しの緊張と、“岡野が目の前に座っている”ということへのたまらない気持ちで、胸がいっぱいだったのだ。 「というわけでね……、わたしが高知に行って、建ちゃんに食べてもらいたいと思ったものはこれなの」 岡野はふっと細長いまつ毛の隙間から木綿子を覗き込むようにして、 ほんの少しのあいだ戸惑っていたけ
すこし前、銭湯に櫛を忘れた。祖母からもらって20年近く使っていたものだ。父ゆずりの頑固なく…
「東京に戻ったよ」 亜美ちゃん(仮名)からのLINEを受け取ったとき、私は実家の布団の中にい…
<前編のお話はこちら> 高知はよく晴れていて、七分袖のカットソーの中はすでに汗ばんでいた…
夜に出歩くことがめっきり減った。この時期、友達を飲みに誘うのはちょっと気が引けるし、なに…
「おばあちゃん、いいキャラしてるよね」 祖母を知る人は口を揃えて言う。 同居していた母方…
旅エッセイの企画『ソファでわたしは旅をする』で、中前結花が担当する連載小説です。今回は第…
うっすらと目が覚めて、まず聴こえてきたのは波の音だった。ざあーん、ざざああ、ざああ。カモメの声が近づき、また遠ざかっていく。まつげにやわらかい陽の光が降ってくる。洗い立てのシーツの匂いがする。 遠い頭のまま、体をゆっくり起こす。目の前の壁は一面ガラス張りで、その先にどこまでも海が広がっている。薄い雲が一枚かかった空は白く光り、空と海の境界はぼんやりと霞んでいる。 ざざああん、ざあーん。寄せては返す波をしばらく見つめていると、だんだんと目の奥に重力が戻ってきた。そして思う。