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【未来経営】戦わずして勝つ〜第1章 戦わずして勝つとは

【第1章】戦わずして勝つとは


1 競争しない

競争社会の仕組み

 今までの経済、市場社会は、過度の競争社会でした。「でした」と過去形で書いていますが、現在も競争が続いています。商品が消耗品となり、短サイクル化されている現在、企業は価格競争でしのぎを削り、利益を出せない状態になっています。パソコン(PC)を始めとする家電商品などが良い例です。

 この状態を生み出しているのが、「デファクトスタンダード戦略」ー「事実上の標準化」と呼ばれるもので、多くの分野で採用されています。

 企業は、自社の技術を独自のものにしてブラックボックス化するよりも、技術をオープンにして市場を大きくさせ、その中でのシェアを高めて販売量を増やす傾向にあります。これが、デファクトスタンダード戦略です。追従する企業側も、開発費を多額に投資して時間とコストを掛けるより、すでにオープンになっている他社の技術を採用して短時間で商品化し、市場に参入する方が得策だと考えています。

 しかし、商品やサービスが均一化することで、商品それぞれの際立った個性が消え、価格のみで勝負すると言う状況が生み出されました。これが、社会が価格競争に陥った原因であり、仕組みなのです。

 大企業をトップとした系列子会社や下請け企業と言う縦の関係は、日本的経営の特徴です。最終的な商品を製造する大企業のメーカーが価格競争に陥ると、大企業に部品を卸している系列子会社や下請け企業などの中小企業も当然、価格のダンピングを要求されます。こうして、連鎖的に価格競争に巻き込まれてしまうのです。

 いったん価格競争に陥ると、当然、利益を出すのは至難の業となります。

価格競争に巻き込まれない

 私は、かつて中小企業の経営者が共に学び合う全国規模の団体に所属していました。そこで、経営者の皆さんが日々、自社の経営に真剣に取り組んでいる姿を目にしています。 

 中小企業の経営者が利益を高める方法がないのか、小が大に勝つ方法はないのか、価格競争に陥らない経営や価格競争を打開する経営戦略はないのだろうか。この試行錯誤を通して私は「価格競争に陥らないためには、競争しなければいい」ことに気付きました。

 競争しなければ、価格競争に巻き込まれることがありません。もちろん、競争しなければ市場から脱退しなければならならないと思われるかもしれないですね。しかし、ここで言う「競争しない」とは、「逃げる」と言うマイナス的な意味ではなく、「独自の価値観や技術などにより新しい市場を作り、そこで付加価値を高めた商品を提供し、利益を上げる仕組み、システムを作り上げること」であり、前向きなプラス思考の考え方なのです。

 そして、この「競争しないで勝つ状態」「戦わずに済むほどの圧倒的に強い状態を作ること」こそ、「戦わずして勝つ」なのです。そのためには、自社の強みを生かした独自化が必要となります。

 どうでしょうか、何となく「戦わずして勝つ」の全貌が見えてきましたでしょうか。

 この考え方のヒントになったのが、孫子の兵法でした。

 孫子の兵法の「諜攻篇」に、「戦わずして人の兵を屈す」と言う一説があります。すなわち、百戦して百勝するのは、最高に優れたことではなく、戦わないで他国の軍を屈服させるのが、最高に優れたことなのだ、と孫子は言っているのです。

 また、私が日本コロンビア株式会社で営業をしていたときの経験もヒントになっています。取引先は、コジマ、ヤマダ、ダイエー(当時)、ジョーシン、八千代無線(当時)などの家電量販店でした。家電量販店担当の営業は、土日祝日には担当する店舗で販売業務の応援をしていました。直に接客して、自社製品を販売するのです。

 営業は全員、胸にメーカー名が書かれたヘルパーバッチをつけています。ヘルパーバッチを見れば、そのスタッフがどのメーカーの営業なのかが、瞬時に分かるようになっています。実はその時の接客の経験から、ブランド化のヒントを得ました。ブランド化に関して第3章で詳しく書くことにします。


2 競争とは他人軸である

競争とは

 競争するとは、どのような状態でしょうか?そこから少し、考えてみましょう。

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