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【ショートショート】じゃんけんver2.0

テレビの速報字幕やスマホの緊急通知等あらゆる手段でその発表は世界に衝撃を与えた。
『○月☓日深夜3時より史上初じゃんけんのシステムアップデートを実施』
連日連夜、放送各局はこの話題を取り上げた。
「これまで円滑に決められていた事の長期化が懸念されます。既に株価にも影響が…」
と経済評論家が論ずれば
「そんなん小学生鬼ごっこの鬼決めるだけで夕方5時来てしまいまっせほんまに」
とお笑い芸人は揶揄し
「もう分かるよね?来たるべき宇宙人との交渉の為にアメリカ主導で動きだしたわけ。もう宇宙人の存在を世界が認めたようなもの。信じるか信じないかは…」
と都市伝説を唱える者まで現れた。
「えーここで速報です。新たに…3手増えるもようです!現在のグーチョキパーに続き新たな手が…」
政府は臨時国会を招集し前倒しで決め事の解決を推奨する『駆け込みじゃんけんキャンペーン』の実施を決定し国民に呼びかけた。
一部の民衆が国会前にアップデートの反対を掲げてデモ活動を実施したが特に話題にはならず、
例えば歴史ある遊園地が閉園する際についつい駆けつけてしまう様な人たちが集まり『じゃんけんver1.0お別れ会』なるイベントが開催された。

そしてアップデートが実施された当日。
懸念されていた程の目立った混乱は見受けられず、
新たに参戦した手が出る度に歓声があがる光景が面白おかしく見受けられる程度だった。
やがて初回で決着のつく事が滅多に無い事を揶揄して最初から『あいこでしょ』と掛け声されるようになり
大方の予想通り一向に決着がつかない問題が噴出し、人々のじゃんけん離れが加速した。
そして、
当初のルールで実施する闇じゃんけん、通称『グチパ』が誕生したのも同時期の事である。

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