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[やれたかも委員会]間違い電話
女の子に間違えて電話をかけたんです。
当時、大学2年生でした。
大学デビューした僕は、地味な割には派手なグループともケータイ番号を交換することに成功していました。むろん、あちらからかかって来ることもなく、こちらからかけることもありませんでした。
それで、話は戻るんですけど、そのイケてるグループの女の子に間違い電話をしてしまったんです。
ポケットに入れていた携帯が勝手に彼女の番号を押していたみたいで、彼女から折り返しがかかってきていました。最初、自分からかけた記憶がないので、あっちに用事があると思って電話にでました。
「あ、なんですか?」
「『あ、なんですか』って。そっちからかけてきたんだよー」
彼女は笑っていました。イケてるグループの中でも、美人な部類の彼女を思い出して、途端に緊張した僕は、間違えたと平謝りしてしまいました。
彼女は電話がかかってきた事に喜んでいるようでした。暇だったのかもしれません。それか、誰かそばに他の人がいて、僕を話のネタにして盛り上がるつもりだったのかもしれません。彼女に彼氏がいないことは聞いていました。僕が電話で平謝りをした後、電話はすぐには切れませんでした。
「最近どうしてるの?」
彼女は話を広げようとしていました。その後はことは実はほとんど覚えていません。僕はそこでなんと答えたか。きっと、記憶から消したいレベルのひどい返しだったのだと思います。もう2日くらい「あれはなんて言ったっけなあ~」と思い出そうとしていますが、もう全然思い出せません。
ただ、その時の雰囲気だけはしっかりと覚えています。告白を持っているような間(ま)!これです。付き合う前の、恋人になる前の独特の雰囲気がそこにはありました。「来るならこい!」という女の意気込みを感じました。「男を出せ!」と言われているような……。今、思い出してもドキドキしてきます。
ある時、講義室で彼女から「好きなタイプは?」と聞かれたことがありました。僕はテンパって咄嗟に「髪型がボブの子」と答えていました。「キコウ君て、オタクだからなあ」と笑って一蹴されて、何も言い返すことがができず、ふんすふんす言っていた気がします。彼女も髪型がボブスタイルでした。
結局、その電話では、「そういえば、今度ご飯でもどう?」のセリフが言えず、ただ謝って終わりました。この時、ちゃんと誘えていればやれたんでしょうか?
「オタクだからだ」僕はそう結論付けて、その後の3年間、アニメや漫画を見ることができなくなり、渋いクラシックな映画ばかり観て、ジャズを聴いて過ごしていました。この件がきっかけで、モテたくなったのです。もちろん、その3年間に彼女ができることはありませんでした。
おわり
100円でお題にそったショートショートを書きます。