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COP26を前に苦悩する英国

第26回気候変動枠組条約締約国会議、所謂COP26が、10月31日(日)~11月12日(金)に英国・グラスゴーで開催される。英国でも、2050年までにCO2排出量を正味ゼロに減らそうという計画を立てている。
しかし、現在、ボリス・ジョンソン首相は苦境に立たされていると言われている。その背景には、欧州と英国の電力市場における電力需給バランスの崩壊があるようだ。

需要の面から見ると、COVID19以降の経済回復によって、世界的にエネルギー需要が増加している。一方で、供給サイドから見ると、パリ協定やCOPが進める世界的な脱炭素の動きのため、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料の利用が憚れるという状況が生まれている。

それで原発を推進するかと言えば、安全性の問題から躊躇することが多い。やはり再生可能エネルギーが切り札だという事で、欧州では太陽光、特に風力が重要視されている。その風力が、問題となっているようで、十分な出力を提供できていないというのである。

つまり、盛んなエネルギー需要に対して、供給が追い付いていない。それではという事で、これまで利用して来た化石燃料に戻ろうかと言っても、石炭は大量のCO2を排出するため嫌われており、排出量の少ない天然ガスに集中する。その結果、天然ガス価格の急騰、それにつれ、石炭価格も上がっているのだとか...そのため、電気料金が数倍から10倍程度まで急騰しているそうだ。

ヨーロッパと言えば、洋上風力の映像を見ることが多い。大きな羽根が回転している姿、それが何十台も並んでいる姿は実に壮観である。その風力発電所がここ数週間、ヨーロッパの大部分において風が十分に吹いていないため、出力を減少させているという。

この風力タービンの出力低下は、大気温度の下がる冬に起きる現象だが、それが、現在発生しているようだ。そもそも、この出力は風速の3乗に比例しており、大気温度が下がれば暑い夏に比べて実風量も下がるための現象なんだろう。太陽光の場合もそうですが、暖を取らねばならない厳冬という季節に、供給上の問題が起きるのは由々しきことかもしれない。

つまり、太陽光や風力エネルギーには、非連続性ということ以外に、基本的な課題があるようだ?英国などでは、石炭は最もCO2を排出するため、発電方式を石炭からガス発電に切り替えることを進めているが、発電事業者は炭素価格を支払わねばならず、それがコストを押し上げ、その結果、電気料金はさらに上昇している。

さて、COP26を開催する英国でこの危機にどのように対処しようとしているのか?どうも、電気やガス公益事業者は不足分を埋めるために、再度石炭に目を向けているようだ。

間もなく、グラスゴーに、COP26のために世界中から関係者が集まり、将来のGHG(温室効果ガス)削減目標とその方策を議論しようという時期に、このエネルギー危機の深刻さはどうであろう。

ヨーロッパが石炭に回帰せざるを得ないという現実は、新興国や途上国に対して、ネットゼロを押し付けようとする英国や欧州の政治家の企てを不可能にする可能性がある。彼らは、ネットゼロ実現のコストや電気料金の増加を発端とした有権者の反発に、先ずは応えなければならない。果たして、ジョンソン首相は、どう切り抜けていくのだろうか?

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