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『自分に正直でいられる踊りをする』NYで活躍する学生ダンサー (前編)

田中 真夏 | Manastu Tanaka

2008~2015年、児童劇団大きな夢やまと子供ミュージカル所属、14公演中8公演で主役、準主役を好演。 2015~2019年、SUNY Fredonia Dance Ensemble で数々の振り付け家の下、計15ものダンス作品で踊る。中にはPaul Taylor Dance Company, Jon Lehrer Dance Company, Bliss Kohlmyer, Jason Olsenbergなどの有名振付家の作品を踊る。 2017年、短編映像作品 “CHOICES”でIMDb取得。 Steps on Broadway Summer Intensiveプログラムの生徒に合格、数々の講師からダンスを学ぶ。 2018年、Mona Haydar新曲“Lifted” ダンサーに抜擢、多数の記事に掲載。 Sidra Bell MODULE 18 Summerプログラムに合格 Brooklyn Opera Works『ヴェニスとアドニス』でダンサーを務める。

渡米して変わった表現に対する考え

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ーー現在の活動内容を教えてください。

ニューヨーク州立大学フレドニア校、ダンス専攻・舞台芸術副専攻の四年生です。学期中はダンスのリハーサルや公演だけでなく、振り付け、芝居、演出助手や舞台監督としても活動しています。3ヶ月の長い夏休みの間はマンハッタンでSteps on Broadway スタジオでインテンシブプログラムに参加しつつ、Sidra Bell Dance New Yorkの夏季プログラムに選抜され、その間にダンサーとしてMona Haydar, The Next Greatest American Novel, Santiago Music, Taragano Theater, Melody English などのアーティストのミュージックビデオの出演、写真撮影、Brooklyn Opera Works や単独公演などの活動もしています。

ーー学生でありながら、いろんな活動をしていますね。ダンスは幼少期から続けてきたんですか?

11歳〜18歳まで日本で「大きな夢児童劇団やまと子どもミュージカル」という劇団に所属して、毎年舞台に出演していたのですが、恥ずかしい話、基礎のバレエはもちろん、ダンスレッスンやクラスは受けたことがありませんでした。それでもダンス指導の先生が『動けるから。できるようになる子だから』と作品の中でダンスが多い役に何回か抜擢してくださったことから、体を動かすことが一番楽しいと思うようになり、見よう見まねで振り付けをダンスを長年やっている子に負けないようにそれっぽく踊っていました。でもただのそれっぽい踊り方ではなくて、基礎の基礎からテクニックのトレーニングをしたいと思い、大学でダンスの勉強をしたいと強く思いました。18歳でダンスを始めるなんてダンサーの中ではかなり遅い方で、恥ずかしい気持ちと根性の葛藤は今でも続いてますね。

ーーそれでニューヨークの大学に行くことを決めたんですね。

ダンスでいうと西海岸と東海岸で大きな特徴の差があって、一概に言うと西はストリートダンスやヒップホップが盛んで熱いのに比べ、東はもっとブロードウェイやクラシックジャズ、バレエ、コンテンポラリーが盛んなので、自分の興味のある東側の大学を探し始め、ニューヨーク州立大学にたどり着きました。休みのたびにマンハッタンに行って本場のプロダンサーと混じってオーディションに何個も何十個もいくうちに少しずつお仕事もいただけるようになりました。

ーー最初にアメリカに来た時の印象はどうでしたか。

日本ではみんなと同じでなければ浮いてしまったり、出る杭は打たれる空気があるけれど、アメリカでは髪型、服装、体型や身長も人それぞれで個性があって自分もここに居場所があるんだとホッとした覚えがあります。中高時代は雑誌から得た情報でこの身長だったらこの体重でなければいけないという考えに拒食症になって体調を崩すくらい縛られていたので。今振り返ると自分の可能性を全て縛って閉じ込めて堅苦しい生き方をしていたなと思います。渡米して環境がガラッと変わって、どんどん友達を作ってダンスや学業に励むうちに知識も増えて、自分の知らなかった考えやコミュニティの存在を知ることによって表現の幅や視野が広がりました。特にLGBTQ、アイデンティティの概念の話題は日本ではタブーに近い感覚だったので、ここなら自分をどう表現するかで遠慮なんてしなくていいんだと思えたのがモチベーションになって、今までの堅苦しい考えから一転しました。

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ーーアメリカは個性を重視しますよね。今までの生き方を見つめ直すきっかけにもなったんですね。

もちろんダンスの世界は簡単ではないですし、いつもは応援し合う仲間でも時には競争心、嫉妬、比べ合いが起こってしまうことは多々あります。「大学の4年間の中でも周りと比べて自分は何を変えたらいいのか?踊り方?テクニック?それとも体型、顔、髪型?何がダメで何を直したらいいのか?」と悩みつづけてまるで落ちこぼれのようだと感じた時期がありました。でもその生の感情をどう受け止めていくかが大事であって、そもそも自分と他人と違うんだから比べようがないんだと思えるようになったんです。6年前の自分にはなかった考えなんですけれど。

インスタグラムに回転技や超越した柔軟性を乗せるダンサーが増えたことで、「若いダンサーの中でも何か技を持っていかなきゃいけない、インスタ映えする踊りをしよう!」って頑張る人は多いです。でも私は万人受けする流行りの踊り方をするよりも見たことがなくてたった一人でもその人に深く印象に残るすごくないけれど何か見てしまう踊りを追求します。

vo.2 へ続く!

<こちらは過去記事です。別の自社メディアで2019年に掲載した記事の転載です。>


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