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脳がバグる作品に出会った話

経験的に当たり前の物理

現実世界に生きている私たちがみる光景は、例外なくすべて物理法則に従っています。

それは別に物理を勉強したことがあるとかしたことがないとか、そういうことは関係なくて、10年も人間として生きていれば身の回りの物理は経験的に「当たり前」として脳に刻み込まれているはずです。

だからこそ、その当たり前を裏切るファンタジーの映画や小説にはワクワクしますし、現実世界でも起こらないだろうかと心のどこかではちょっと憧れるのだと思います。

十和田市現代美術館で出会ったとある作品

さて、先日私はふらっと飛行機でとんで、青森県は十和田市現代美術館に行ってまいりました。

この美術館は建物がちょっと特徴的な構造をしていて、アート作品ごとに独立した展示室が与えられ、それらがガラスの通路で繋がれているという構造をしています。

これが非常に良くて、ほかの作品の干渉を受けることなく、アート作品ごとに空間まるごと作られた世界観に没入できるのです。

展示されていた作品はどれもとてもとても素敵で多くのインスピレーションをもらったのですが、中でも1つ、特に衝撃を受けた作品がありました。


Location (5)
Hans Op de Beeck


この展示室に広がっていた光景に私の脳内の「当たり前」が思いっきり裏切られ、一瞬でその空間の虜になりました。

まず展示室に入る直前、ガラスの通路越しにちらりと見えたその部屋は10m×10mくらいの広さのようでした。

中に入るとそこは薄暗く、10畳ちょっとの純喫茶かあるいは古いレストランのような空間になっています。

そして窓際にはテーブル席がいくつか並んでおり、その窓越しの景色を見ることができるのですが...

そこには明らかに、50mかもっと先まで続いている "ハイウェイ" が存在しているのです。

どう見ても。

展示室に入る前に外から見た部屋の大きさから考えると絶対にありえない広さの空間が、そこに存在しているのです。

その光景がありえるために考えられる物理を予想しては、窓に張り付いてじっと目を凝らし粗探しをしてみますが、その確証を得ることはできないのです。

この不可思議な空間は、これまで無数の現実世界の光景を見てきた私の脳にとってあまりに新鮮で、外の現実世界に戻りたくないと私の脳すべてが興奮し叫んでいるのではないかと感じるほどに魅力的でした。

別の次元の新しい刺激を求めて

冒頭の話のつづきですが、私たちは物理法則に従った世界で生きていきている以上、やはりこれから出会う光景のほとんども脳にとっては経験的に概ね理解できてしまうものです。

いつどこで見る光景も、遠くのものは手前のものより小さく見えるし、物体の裏側は見えないし、光が当たっている側はより明るく、その反対側には影ができます。そして私たちの脳はそれらを当たり前のこととして知っているのです。
(もちろん細かな専門的な物理については知らないことがたくさんありますが) 

ただ、この十和田市現代美術館で出会った1つの理解を超えた体験を経て私の脳は、"これからの人生のどこかで、また今回のような光景に出会うかもしれない可能性" を探し求め続ける脳になってしまったかもしれないです。

行ったことがない場所に旅行するとか、新しい小説を読むとか、いろいろな脳の刺激のされ方があり、もちろんどれも素敵な体験です。

が、それらとはまたちょっと、別の次元の新しい刺激に出会ってみたい気持ちがもしあれば、ぜひ十和田市現代美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

(恒久的な展示なのでおそらくなくなったりはしないかなと思います)


おしまい。

aso

気になるけど足は運べない…という方へ

▶︎ 動画 (by Studio Hans Op de Beeck)
https://www.youtube.com/watch?v=1627EsSCPCU
▶︎ 写真と仕組みについての解説 (by 十和田市現代美術館)
https://towadaartcenter.com/collection/location-5/

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